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俺の妹がこんなに可愛いわけがない レビュー

俺の妹がこんなに可愛いわけがない (電撃文庫)

伏見 つかさ / アスキーメディアワークス


俺の妹がこんなに可愛いわけがない〈2〉 (電撃文庫)

伏見 つかさ / アスキーメディアワークス


 本日ご紹介する「俺の妹がこんなに可愛いわけがない」は、茶髪でピアスな今時の女子中学生だと思っていた妹の秘密を偶然にも知ってしまった主人公が、それをきっかけに今まで疎遠だった妹との距離を少しづつ縮めていくという物語です。

 さて、本策最大の特徴はといえば、何をおいても一人称で繰り広げられる主人公の語りの面白さ、にあるでしょう。一人称視点で語りが面白い、というのは要するに心理描写が上手い、ということですね。


 ところで、「他の媒体に比べて、小説は心理描写がやりやすい」って意見、よくあるじゃないですか? こういった意見を目にするたび、個人的に思っていた事柄があるんですよね。


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 僕は小説って言うのは、基本的に書かれた文章を触媒に脳内で映像を作り上げていく媒体だと考えているので、やはり最終究極的には漫画アニメ映画その他の媒体群と対して変わりがないと思うんですよ。
 絵という形式を取ろうが、映像という形式を取ろうが、文章という形式を取ろうが、最終的に脳内で組み上げる情報が同じなのだから、その媒体でつまらんと感じるようなシーンは、やはり他の媒体に置き換えてもつまらなく感じるだろうと、考えているわけです。

 ではなぜ、冒頭のごとき意見が存在するのかと問われれば、そりゃまあ、偉大なる先人たちが書き綴ってきた小説作品の中に、優れた心理描写を誇るものがあり、それを多くの人が読んできたからでしょう。

 小説……ていうほど文学作品読んだ経験は無いんで(笑)、ラノベも小説の括りでよくね? と、いらん中置きを入れつつ、ラノベ限定で話を進めますが、小説における「惹きつけられる」心理状態の表現技法は、二つに大別できると思います。

 ふたつの内、ひとつ目は、そのキャラが何を考えてるのか、あえて直接的には書かず、キャラクターの行動を通じて読者に伝えるという方法。主に三人称で使われている印象かな。
 例)背後から響き渡る爆発音。山田は不満げな音を洩らす腹を片手で押さえつけながら、半眼で背後へと振り返った。
 これは、漫画やアニメなんかと同じベクトルの技法ですね。読者の中で組み立てられる映像を元に、意味を汲み取ってねというやり方。

 もうひとつが、文章そのものを面白くして、本来ならば動きの少なく、単調になりがちな心理描写を盛り上げてしまうという方法。主に一人称で使われている印象です。
 例)背後から強烈な爆発音がしたので、俺はまためんどうなことになったなぁ、とか、そういや昼飯も食っていないなぁとか色々な思いを巡らせつつも振り返ることにしたのである。
 要するに、退屈になりがちな心理描写の渦中、装飾的な言葉を多量に織り交ぜるなどし、無理矢理にでも盛り上げていくという、力技です。
 これは確かに小説独自の技法であり、例えば西尾維新先生なんかはこれを用いて話を面白くする大家なわけですが、これを指して「他の媒体に比べて、小説は心理描写がやりやすい」というのは大違い。あくまで手段として存在するだけで、難易度はクソ高いと思うよ。人を魅了する語りが簡単に出来るのならば、人はいつでも落語家になれる。


 で、「俺の妹がこんなに可愛いわけがない」は、そんな高難易度を乗り越え、後者の方法で主人公の内面を描いていくわけですが、これがもう、本当にテンポが良く、ページをめくる手が一時も休まりません。
 彼の語りにおける最大の特徴は、とにかく自分が妹のことを何とも思ってなく、何とも思ってなく、何とも思ってなく、向こうだってこちらを路傍の石くらいにしか思っていないことを、あらゆる語彙を尽くしてユーモアに表現していることですね。にも関わらず、実際に取っている行動は妹を助けるもののみなわけで、神視点である僕たちはそれを読みながら「素直じゃないなあ」とニヤニヤしてしまうわけです。

 ところで、「ユーモアに表現している」と書きましたが、これは非常に重要な点ですね。何せ、「俺は妹のことを良く思ってないですよ~」という意を込めた文章であるわけで、平直に書けば単なるイヤな奴に終わってしまう可能性が大です。あくまでも、読者には主人公のことを好いてもらいながら、意味合いだけを汲んでもらわなければならないのです。
 そして、作者である伏見先生は、それを行うのが抜群に上手い。本当は割とドライなことを言ってるはずの主人公が、先生の巧みな文筆捌きによって、途端にウェットで受け入れやすい表現へと生まれ変わっている。これはもう、技術が優れているというより、感性が優れていると表現すべきでしょうね。ジョークの技術で優れているのではなく、ユーモアな感性で突出している。

 技術は後付け感性は先付けという僕の持論からすれば、この作品から感じ取れる暖かみは伏見先生オンリーワンな代物なわけで、是非とも皆さんにも、この面白さを共有して頂ければなーと思う次第です。



 ※この作品のレビューをするならば、「妹の秘密=オタク趣味」についても触れるべきかもしれないが、そういった枝葉末端の要素よりも、もっと貴重なものがこの作品には存在すると思うんだ。

 ※でも、このレビューではんなもん伝え切れてないと思うんだ。嘆くべきは我が身の未熟さよ。

 ※素人のブログだからギリギリ限界これでもありだと思うけど、レビュー的には切腹もんだな。

 ※でも、言い訳は欠かさない見苦しい管理人23歳冬のことである。

 ※実は今回、戯言レビューのリターンマッチであったりする。結果は大敗北。
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by ejison2005 | 2009-01-19 01:11 | ノベル | Comments(13)
戯言シリーズ挑戦中
クビキリサイクル―青色サヴァンと戯言遣い (講談社文庫 に 32-1 西尾維新文庫)
西尾 維新 / / 講談社
ISBN : 4062754304





この一週間、更新をサボりながら何をしていたかというと、西尾維新先生の戯言シリーズに挑戦していました。今は4作目「サイコロジカル・上」で主人公と害悪細菌さんが初対面するシーン。

で、ここまでこのシリーズを読んでて思ったことは、非常に文章の上手い小説だということ。この場合、ミーニングとしては「絵が上手い漫画」とかと同じ。

まあ、つまり、何がいいたいかというと、話の筋書きそのものはあまり面白くない、ということなんだけどね。

「話の内容はつまらないけど絵が奇麗だから読める」という漫画感想は、皆さんも主に大暮先生の作品とかで抱いたことがあると思ったんですけど、それの小説版ですね。言葉の使い方がすっごく上手くて、それだけである種の商品価値を生み出している。

(僕が読んだ中で)その集大成とでも呼ぶべきは三作目の「クビツリハイスクール」でして、恐るべきことにこのお話、「なんとなくバトるのであった・完」で粗筋が終わってしまいます。
ひとつだけどんでん返しがあるにはあるけど、これに関しては西尾先生自身があえて予想つくようにイベント組んでるんで、役割は果たしていない。
そんな簡潔な筋書きで(ラノベとしては)膨大なボリュームの作品を作り上げても、何故だか項をめくる手は止まらない。不思議!

筋書きの簡素さに加えて特徴的なのは、登場人物の徹底した記号化で、この作品シリーズは「私は天才です」「私もこういう分野の天才です」「私は殺人鬼です」といった才人奇人変人がゴロゴロ登場するんですけども、それは「設定」として存在するだけで、「描写」はされてないんですよね。
具体的にいうと、彼らが常人からかけ離れた能力を実際に行使するシーンというのが、ほとんど存在しない。殺人鬼が人殺しをするシーンが存在しないとか、予想の斜め下の展開でしたよ。
それでもそこそこ印象深いキャラが多いのは、一風変わった漢字での命名と、各々に独自の語調を持たせているのが大きいでしょう。
これは多かれ少なかれ、どんな小説でもやってることではあるのですけど、ここまで徹底している作品は類を見ないでしょうね。立派な個性だと思う。


そういったわけで、最初に書いた通り、「文章が上手い」という一点に集約される作品ですね。小説が文字媒体であることを、最大限に活かしているともいえるかもしれない。


そんなわけで今日の結論としては、ジャンプで西尾先生×小畑先生のコラボ読み切りが載ったことがあって(当時の感想)、これがもう箸にも棒にもかからない様な出来栄えだったんだけど、うん、まあ、当然だな、ということでした。
文章が売りというか、文章しか売りが無い作家から文字を奪ってるわけですし。


※結構、辛辣な書き方になってる気もするけど、好きか嫌いかでいったら間違いなくこの作品シリーズは好きですよ。突き抜けた部分で、きちんと商品価値が感じられますし。


※ところで、読み始めたのは文庫化が契機だったんですけど、これ隔月に一冊しか発売しないんですよね。待ってられないんで、文庫化済みの「クビシメロマンチスト」までは文庫で購入し、他は既存のタイプで買い揃えました。
何でこんなに刊行ペースが遅いんだろうね?

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by ejison2005 | 2008-07-13 02:05 | ノベル | Comments(8)