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仁義なきキリスト教史 感想

仁義なきキリスト教史

架神 恭介 / 筑摩書房


 まがりなりにも、著者のサイトと相互リンクしているこのブログで感想書くのも、どうなんかな~? と思っていたのですが、ネットで検索しても自分のそれと合致している感想がないのだから仕方がない。そもそも、感想とか書くためにこのブログを作ったわけであるし。


 さて、僕がキリスト教に対して抱いているイメージといえば、「日常に潜むUMA」である。
 僕も平均的日本人の一人として、ホーム・アローンやダイ・ハードを肴に酒と料理をむさぼり、イイ感じに出来上がり次第就寝するキリスト教の一大イベント、クリスマスは毎年かかさず堪能しているし、米国大統領が就任する時に聖書へ手を置いてると聞いて「なんだか知らないけど大仰だなー」という感想を抱いたりしている。
 上京してからは、ごく稀に街中をキリスト教の宣伝カー(?)が選挙演説よろしく神の救いがどうのこうのと講釈たれてるのを見ており、総じて「確かに日常のどこかへ存在しているのだが、なんだか得体の知れない存在」という印象である。

 そしてもうひとつ、僕がやくざに対して抱いているイメージといえば、これもやはり「日常に潜むUMA」である。
 こちらに関しては、ひとつ笑い話があって、僕が学生時代にバイトしていたレンタルビデオ店に、毎週かかさず幼い孫を連れて来ては他愛ないアニメーション作品を借りていく温厚そうなお爺さんがいた。
 その日も、ニコニコ顔の孫を連れている彼の会計を済まそうとしていたその時である。
 突如として、白い特攻服(?)を着た坊主頭のにーちゃんが店内に突入し、
「おやっさん! $%$%#&#%|$&%!(大声でがなりたてているため何言ってるのかよく聞き取れなかった)」
 などと、そのお爺さんに向けて叫び、一礼して見せたのである。よくよく見ると、その服の胸元にはなんだか赤い模様がついている。
 引きつる僕、引きつるお爺さん、やはり引きつる周囲の一同、よく分っていない感じで会計後に小さい子供へあげる飴を待ちわびているお孫さん。
 坊主頭のにーちゃんとお孫さんを除き、その場にいる全員は『空気読めよ……』と思っていたことであろう。
 ちなみに、そのやくざかはたまた類似する暴力組織の偉い人だったらしいお爺さんは、その後も変わらず孫と来店してはアニメーション作品を借りていた。なんとなくなかったことにするつもりのようなので、僕としてもそのように対応した。
 そんなわけで、やくざに対して抱いている印象もまた、「確かに日常のどこかへ存在しているのだが、なんだか得体の知れない存在」というものなのである。


 そんな二つの日常偏在型UMAを悪魔合体させた著者の手腕は見事なもので、両者の持つ暴力的因子を上手く融合させ、キリスト教の勃興史であり、また、やくざの暗闘でもある物語を軽妙な語り口で描いて見せている。

 特に面白いのは「第4章 パウロ――極道の伝道師たち」のくだりで、純真無垢ではた迷惑な侠気を持つ男パウロの向背と、組織の宿命として金を求めずにはいられないキリスト組の現実、そして陰謀とがないまざりとなり、見事な極道キリストストーリーを形成している。
 現実のやくざにおいても、厄介な性格をしているが集金能力に長けたやくざがおだてあげられ、使いつぶされ見放されるというのはいかにもありそうな話だ。僕はこここそが、キリスト教とやくざとを最も上手く結合させ、昇華させたパートであると思っている。

 そして残念ながら、その後のパートはちょっと尻すぼみというか、キリスト教とやくざとがいまいち上手く噛み合っていない感じがしてしまうのが、本書における欠点なのである。


 その理由は単純明快で、「第5章 ローマ帝国に忍び寄るやくざの影」から先は、キリスト教がローマの国教となってからの歴史に触れている。
 要するに、話が大きくなりすぎてしまったのだ。

 なるほど、確かにキリスト教もやくざも日常に偏在するUMAであることに違いはない。しかし、両者のUMA性には決定的な隔たりがあって、単純に規模が違いすぎるのである。
 キリスト教が時に世界中を巻き込むワールドワイドUMAであるのに対し、やくざの方は地域密着型というか、都市型のUMAだ。
 この規模の違いが何を引き起こしたかというと、作中におけるキリスト組やくざの行動が、あんまりやくざっぽくなくなってしまったのである。

 第5章以降のストーリーを簡単にまとめると、「ローマ帝国を巻き込んだキリスト組内部抗争」「叙任権をめぐる国王とやくざの政治闘争」「金欠やくざたちの都市略奪」「ルターによる国家規模のキリスト組内部抗争」と、このような形になる。

 いずれも国家規模の動きを描いており、それがどうも、都市生息型UMAであるやくざのイメージにそぐわっていないと僕は感じてしまったのだ。

 実際、これらの章はキャラクターの喋りは広島弁であるし、キリスト教における役職をがんばって極道のそれに当てはめてはいる。そして実際に面白い。だが、この面白さはどうも、任侠ものとしてのそれではなく、キリスト教史のトリビア紹介的な面白さであると感じられてしまう。

 特にその性格が強いのは、「第7章 第四回十字軍」のくだりで、これなどはもうほとんど単なる「十字軍の中にはこういう面白い境遇を辿った人たちもいるんですよ」というトリビアパートである。そこに、任侠ものとしての面白さが付加されているかと問われれば、小首をかしげる。

 ここは、著者の生真面目な面が出てしまいすぎたというところか。実際、あとがきで著者は「留意点として、本書は小説作品であることを明記しておく」「本書を読まれて、もしもキリスト教に興味が湧いたという人がいるならば、続けて諸学者のテキストを読まれるとよろしかろう」「読者諸兄をそこまで導けたなら、ゲートウェイとしての本書の役割は全うできたと言えるだろう」などと述べている。気にしていない風にしていているのに、はたからは気にしている感出まくりな地獄のミサワの如き態度である。

 僕個人としては、ここはもうひとつエンタメ作品として一歩踏み出て、例えば「ヨーロッパ町に根を張るキリスト組というやくざが、同じくここを根城とするイスラム組と抗争に明け暮れており~」という具合に、やくざデフォルメを加えてもよかったのではないか、と思う。

 なるほど、4章までの、キリスト教が一新興宗教に過ぎなかった時代を描くぶんには、そのままやくざへ当てはめるだけでよかった。
 しかしながら、その先、キリスト教の規模が一気に膨れ上がる時代を描くには、やくざという型枠は少しサイズが小さく、それに合わせての加工が必要だったのではなかろうか。


 そのため、どうにも竜頭蛇尾というか、終盤へ進むにつれて本書独自の面白みが減じられて感じるというのが、やや残念なところだと思えてしまった。


 ↑僕に書ける精一杯の「書評っぽい文章」。

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by ejison2005 | 2014-04-14 19:32 | ノベル
艦隊これくしょん -艦これ- 鶴翼の絆 感想

艦隊これくしょん -艦これ- 鶴翼の絆 (ファンタジア文庫)

内田 弘樹 / KADOKAWA/富士見書房


 前二つのノベライズがアレな出来だったこともあり、どうせ今回もファントムがルージュする感じのノベライズなんでしょ~? と全く期待せずに読んだのですが、意外や意外、普通に面白い作品に仕上がっていました。

 まず、何より大きいのが、

 艦これでやる意味のある作品

 という点ですね。

 前二つが、「これ別に他のモチーフでもやれるよね?」「これプレイ日記で書いた方がよくね?」という代物だったのに対し、本作は「軍艦の擬人化」という点に着目し、そこを大きくクローズアップしている。

 これは艦これというゲームでも非常に大きな一要素であるわけで、そこを前面に推し出した小説作品というのは、やる意味がある……というか、やる意義があるわけです。

 お話の筋書きそのものは、新米がなんやかんやあって成長して勝利に貢献するという、それだけだとありきたりに思えるものなんだけど、前述の通りそれら全ての要素に「軍艦の擬人化」という設定が関わっているため、それがオリジナリティの色つけをしてくれている。ひとつの作品として、読む価値のあるものに仕上がっています。

 また、艦これ世界の描写としても、鎮守府と海だけで成り立っていた他二つのノベライズと比べ、少ないながらも市井の人々との関わりを描いたりしているのも嬉しいところ。それによって、少なくともこの世界内で艦娘はどういう扱いなのかが分かるようになっていますからね。

 あと、これは超個人的な感想なのですが、ちゃんと鎮守府から戦闘海域までの間に距離の概念があり、待機用の母船を用意する橋頭保の概念が存在するのもよかった。
 ……いや、よかったというか、これはできていて当たり前レベルの話なんですけどね。なんで俺、こんなことに喜びを感じちゃってるんだろうか。本当に他ノベライズ二つは(ry


 難点に感じた点としては、やはり第一章における加賀さんですかね。艦これ内における台詞があるし、本人のキャラクターもあるからこうなるか……な? という感じ。宴会で瑞鶴を挑発するシーンは、もうちょっとさらっとしてた方がよかったかもしれない。まあ、これはあの台詞を用意したゲーム側の責任だな。

 もうひとつ、これは絶対に受け入れられない難点としては……オリジナル提督だなあ。まあね。うまいことやってるんじゃないですか? そこらの学生みたいなメンタリティだった一航戦小説と比べりゃ、軍人らしいし。
 でもなあ、これ理屈じゃないよなあ。生理的にすげえやだもん。は? 何てめえごときがうちの艦娘相手にラッキースケベ働いてるんだ? 憲兵詰所行くか? お? こんなもん。
 やっぱなー。大神さんとかと違って、ゲーム内で名を持つ主人公として描写されてるわけでもないんだし、基本的には出てこない方がいいんじゃないかなあ。提督はいることはいるけど紙面には登場させず、艦娘を統括する立場として鳳翔さん辺りがちかいことやればいいと思うよ。

鳳翔「では、トラブ……じゃなかった艦娘の皆さんに、コン……じゃなくって慈母のごとき父なる提督様のお言葉を伝えます」
「「「はい! ウルトラヴァイオ……じゃなかった、鳳翔様!」」」

 あかん……。

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by ejison2005 | 2014-03-30 18:45 | ノベル
一航戦、出ます! 感想

艦隊これくしょん ‐艦これ‐ 一航戦、出ます! (角川スニーカー文庫)

鷹見 一幸 / KADOKAWA/角川書店


 さて、本作の感想を端的に述べるなら、こういうことになるでしょうか。

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 もうね、なんなんだろうね。艦これのノベライズはファントムルージュしなきゃいけない決まりでもあるのだろうか?
 買ってある以上、読まないのもアレなんだが瑞鶴主役のやつは大丈夫なのかなあ……?

 ちょっと話が逸れましたが、とにかく、この作品を支配してるのは圧倒的な「無」です。「『何も無い』が、そこにある」という田舎暮らしの宣伝文句みたいな作風です。

 その原因は明らかで、登場人物が誰一人として精神的成長をしていないのですね。
 もちろん、オリ設定等でキャラクターをsageまくり、その上でプラマイゼロに戻すことで成長を演出するなどは論外ではありますが、だからといって、ここまで精神の動きがまったくのゼロだと、それはそれで困る。何しろ、物語であるというのに何も「物語って」いないのだから。

 例えば、冒頭部の彩雲入手エピソードなどは分りやすい例で、この作品のように「艦隊の索敵能力が低くて困ってる → 開発で彩雲きましたわーいわーい」では話になってないのです。
 それをやりたいというのなら、「索敵能力が低いことの問題を知らない艦娘が、その重要性に気づき成長する話」としなければならないのです。
 そこで問題となるのがキャラsage問題なわけですが、赤城さんなどは史実が史実なので、そこを絡めることでどうとでもできるでしょう。というか、やらないなら艦これ小説の意味ないじゃん。


 また、本作はなかなかのタイトル詐欺っぷりを発揮しており、表紙と合わせて一航戦コンビが主役と見せかけ、実質の主人公はオリキャラである提督となっているわけですが……。

 際立って無能というキャラクターではないのですが、だからといって特段、有能に感じられるわけでもなく、性格設定も「提督」というより「そこらの学生」という感じであり、「悪い意味で無個性なラノベ男主人公」そのもの、といった感じです。
 やたら大量に登場させ描写が薄い艦娘の代わりに、結構な尺を使ってじっくりねっぷりと描写されるオリキャラ提督の心理描写には、DSのトレーニングソフトで培った速読技術を駆使するのもやむなし、といったところでしょうか。
 一点、思わず笑っちゃったのが最終盤における『一人でもいい、帰って来てくれ……』という脳内台詞で、このようなことを考えるのは「犠牲覚悟で夜戦に踏み切った場合」であり、「敵の作戦がある種のハッタリであると判断し夜戦を決意した」今回のシチュエーションにはそぐわないでしょう。この場合、脳裏に思い描くべきは自分の判断が間違っていたのか否か、です。
 Hey! 提督ぅ! わずか5ページ前の心理描写くらい頼むからきちんと踏襲させてほしいネー!

 あと、金剛ちゃんはんなデスデス言わねえし島風の一人称も「私」だよん、と。


 設定関連ですが、これまた薄っぺらい代物でして、「自分で認めるくらい経験の足りない提督を補佐してやる人間は誰もつけないの?」とか、「そもそも提督はどのような組織に所属していて誰から命令を受けてるの?」とか、「命令を受けてるからには各種任務のGOサイン出すのって上層部であって提督じゃなくね?」とか、一見しただけでも思い浮かぶ疑問の数々に何らのアンサーも出されていません。下手すっと、考えてすらいなさそうなレベル。
 つっこみ所のなさが面白さにつながるわけでもありませんが、少なくとも、こんなパッと見で思い浮かぶくらいのことには先回りして答えを用意すべきなんじゃねーかなーと思わされます。


 軍事描写ですが……艦娘が曳航してこれるレベル(まさか数百個引きづってるわけでもあるまい)のドラム缶で補給が足りる陸軍は化け物か!? とか、わたし、しろうとだけど、ひがえりきぶんでいってこられるほどサーモン(ソロモン)かいってちかくないとおもう(小並感)とか。
 日帰りで行けるほど近いなら議論の余地なく殲滅の一手であるし、そうでないなら描写外で舞空術でも使ったのであろう。サラマンダーより、ずっとはやい!!


 そんなわけでまとめると、心が折れるかと思いました。

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by ejison2005 | 2014-03-15 18:11 | ノベル
戦闘破壊学園ダンゲロス ファントムルー
 ある日、かがみさんがおこなっていたダンゲロスの新企画ラジオで意見を述べた僕は、

「頭おかしいんじゃねえのかこいつ」(←誇張表現)
「変態すぎる」(←誇張表現)
「何言っちゃってんのこの人wwwwww」(←これはマジに言われた)

 と、にべもなくその意見を却下されたのであった。

 そんなわけで、「ふええ……変態じゃないよお……」となった僕はそのことを証明するべく、筆を取ったのである。

戦闘破壊学園ダンゲロス ファントムルー

 まったく、そもそも艦これの二次創作を読んでくれた人なら知っての通り、僕はそういうの書くタイプじゃないのである。あれだね。変態的表現でウケを狙おうなんてのは邪道だね。物を書くという行為そのものへの冒涜。

 あ、18禁描写あるので注意してください。それと、原作小説戦闘破壊学園ダンゲロスの重大なネタバレを含んでいるので、それも注意してください。

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by ejison2005 | 2013-12-17 21:47 | ノベル
艦隊これくしょん -艦これ- 陽炎、抜錨します!  レビュー

艦隊これくしょん -艦これ- 陽炎、抜錨します! (ファミ通文庫)

築地俊彦 / エンターブレイン


 なのではじめて「艦これ」ノベライズの話をいただいたときには、即座に「駆逐艦の成長物語で船団護衛」を書こうと決意しました。

(中略)

 当初は第六駆逐隊と吹雪をメインに据えようとしていたのですが、既に他で同様の企画があったので、代わりに「陽炎型か睦月型はどうでしょう」との提案をいただきました。

(再び中略)

 唯一の不安はゲーム内での陽炎はキャラがそれほど立っていないことでした。出現するたびに解体か近代化改修の素材になっている模様。


 ――以上、あとがきより抜粋。


 なるほど、成長物語を書くというのは完璧な作戦っスねーーーっ ! これじゃ成長物語じゃなく、マイナスからプラマイゼロに戻してるだけだという点に目をつぶればよぉ~!

 とまあ、そんなわけで、ぶっちゃけてしまうとあんまり出来は良くないです。あんまり、というのはものすご~くオブラートに包んだいい方で、読み終えた直後はあまりのアレっぷりに総統動画を作ろうかと思い、でもやっぱり面倒臭いから那珂ちゃんのファンを辞めるに留めたレベル。


 そりゃさ、確かにキャラの成長を描くにはある程度へこんだ面を描かないといけないものではあるんですよ。でも、このへこみ方は違うだろう、と。

 本作における艦娘たちは、ひとことで述べてしまえば「かなり性格の悪い女の子」として描かれています。どのくらい性格が悪く描かれているかといえば、名前の出てこないモブ艦娘として描写されている面々が口々に陽炎たちの悪口や陰口を叩き合うレベル。
 いうまでもなく、艦これというのは艦娘たちに萌え萌え感情移入しながら遊ぶゲームであるわけで、いかに名前が出てこないとはいえこのような描かれ方をされて良い気分になる提督というのは少ないでしょう。というか、この作者の脳内では艦娘って悪意むき出しで悪口陰口を叩き合う子たちなの??


 そんなわけで、キャラクター売りゲームのノベライズなのに全力で各キャラをsageにくるという謎の方針で書かれた本作ですが、では、その他の面はどうなのかといえばこれも……う~ん……。


 まず、初の公式ノベライズということで期待されてる仕事のひとつに「世界観の描写」というものが挙げられるのですが、本作で掲げた設定は「身体検査して各々にあった装備を製作し受領させる」といった代物でした。
 ……描かれたのは本当にそれくらいで、深海棲艦の出現で世界がどのようになっているのか? とか、そもそも現実と地続きの世界なのか? とか、そういった重要な情報はまったく描かれていません。
 何より呆れさせられるのが、「艦娘と第二次世界大戦時の艦艇との繋がり」について一切言及していない点で、驚くべきことにこの作品、なぜ艦娘たちが第二次世界大戦時代の艦艇と同じ名を名乗っているのか? という点にひと言も言及せず、なんの理由づけもおこなっていないのです。作中における艦娘の扱いというのは、既存作品で例えるとISみたいな感じ。

 駆逐艦や巡洋艦などの旧日本海軍等の艦艇を擬人化した女の娘たちが主役、というのは艦これを構成する大きなファクターというかむしろそれが全てというくらいのものなわけで、そこに一切目をつけないノベライズとは……こんなに俺と作者さんとで意識の差があるとは思わなかった……!


 戦闘描写や軍事考証に関しても首をかしげざるを得ないもので、横須賀鎮守府から戦闘海域まで近所の公園へ出かけるかの如き気軽さ迅速さで到達したりという有様。これには、「たたたたっくん! オルフェノクが!」のひと言で瞬間移動を行っていた仮面ライダー555も苦笑いすることでしょう。
 聞いたこともないような専門用語が飛び出たりする辺り、それなりの知識を身につけての執筆なのだろうと推察はされるのですが、もうちょっと他に気にするべきことはなかったのでしょうか。

 曙のキャラ立てとして序盤に描かれたあるイベントなどは、その理由付け共々に、

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 と、思わされること請け合いです。



 そんなわけで、総合すると世界観の描写がおざなりであり、戦闘描写や軍事考証に関しても首をかしげさせられる代物で、キャラ売りの原作を扱っておきながら各キャラを全力で貶め、そもそもあとがきから推察するに主人公として抜擢された陽炎への愛着も感じられないというノベライズ第一弾!

 ……続刊も予定されてるようだが、本当に勘弁してくれorz

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by ejison2005 | 2013-12-01 21:26 | ノベル
俺の妹がこんなに可愛いわけがない 12巻(最終巻) 感想

俺の妹がこんなに可愛いわけがない (12) (電撃文庫)

伏見つかさ / アスキー・メディアワークス


 読んだよー。せっかくなので感想を。ネタバレあり。

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by ejison2005 | 2013-06-20 23:03 | ノベル
長い腕 レビュー

長い腕 (角川文庫)

川崎 草志 / 角川書店


 本作は、第21回(2001年) 横溝正史ミステリ大賞受賞作品です。

 なんでまた、僕がこの作品を読もうと思ったかというと、作者である川崎先生が元セガの人だとプロフィール欄に書かれてたからですね(伏線)。


 あらすじ

\\//  / \ \/ /      |
  >  <  \/   \ _,. --─-- |  ┬   ⊥上 ┬r_j_, l 、
//\\/\ /_, '"            | |工|  .ロ.||   |コ┴'┼!
  // \  _,r'"           |十'十 小儿 ┴| 日乂/
>  <   / ,.イl/r' /⌒´       |
        j≧i{ルzえr‐==宀Y!→三  |    ナ__ぃ ナ ヽ   |〉
      /ト{⌒`´″      l|   三 |    / ー    d、 O
      { }i{             リ  三 |
 \/   ソ -、           三  \__  _____/
 /\   i=-、   ,r==‐一   `ミミ    」/
     _r==≠ー‐' r‐テ宍ぃ,___ヾミ     ヽ、 !
    └}- i 亠}⌒ヽ{ 、_  ̄´ }r───―r‐rイ ⌒トi }| |
      ヽ_!`_j   ヽ _ _ノ'_ノ'´   ノ ミ! i片 l//ll |
        ヽ }   '´ `!       /  ミ!  し'ノ/l!lリ
   \/  、ヽ _ r‐- ノ  `ヽ、       i_,ノヘ川
   /\   川从川从川从  !  i       !   ノル{
          ヽ‐ー→―ー‐ァ'’ j   !      ! }   {_
  ×      ヽi`ー─-^'´/  !      / /    ソヽ
           い、____,.   /      /l  }   / /ヽ
        ×  }            ,. '"   } / / /
\  /        '、         _/    ///  /
  ×        ``=ニr‐ '"/      /  /
/  \   \/         }  /   /

 転職を控えるゲーム会社の主人公はある日、同僚の変死事件に出くわしてしまう。それだけなら死を悼んで終わりだったのだが、故郷の町で起きた女子中学生による殺人事件とに共通のキーワード「ケイジロウ」を発見し、興味を抱いていくことになるのであった……。


 受け入れやすい文体が特徴

 さて、横溝正史ミステリ大賞受賞作品なんて仰々しい看板が掲げられると、そもそも手に取る前に「面倒くさい文章なんじゃねえだろうな……」と思ってしまったりするものですが、まず、本作の売りとして文章はかなり軽いというか、平たいです。
 かといって、ラノベ並にフォントいじったり擬音使いまくったり、というわけでもなく、個人的には、重すぎず軽すぎずの絶妙なラインを突いている文体だと感じました。ここら辺は、ゲーム業界で仕事をしてきた作者の経験則によるところが大きいのかもしれません。

 いかに名作だと言われようと、今さら夏目漱石やら芥川龍之介やら読むのはかなり厳しいところがあるわけで、本を読む上で最初のハードルである読みやすさ、というのがクリアされているのは、それなりに重要なポイントであるといえるでしょう。


 魅力的な主人公

 小説を読む上でのハードルといえば、文体の読みやすさと並んで重要なのが主人公のキャラクター性なわけですが、僕としては、ここが一番感心したポイントで、ありていにいってこの主人公、萌えます。

 そう、この作品、主人公は女性なのですね。ゲーム会社に勤務する美人のお姉さんで、孤独を愛し、自立心と行動力に富んでいる。絵に描いたような「出来るキャリアウーマン」です。
 つっても、お姉さんという形容通り年は若いですし、周りの登場人物も基本的に大人なのですから、それだけだと単なる「強気の女」で終わってしまうわけなのですが、この作品、中盤でちょっとした助手役として中学生の男子が登場し、紆余曲折の末、主人公の捜査に協力させられるのですね。
 当然ながら、その過程で様々なやり取りが二人の間で行われるわけですが、これがね。素晴らしい萌えポイントなのですよ。
 有能だと主人公の出る幕がなくなってしまう関係上、この男子中学生は色々とおっちょこちょいで、至らないところが多々あるわけなのですが、それを叱ったりたしなめたりといった主人公の行動ひとつひとつが、もう、何というかゾクゾクしますね!

 そもそも、お姉さん属性というのは、お姉さんと敬語で呼ぶ関係上、尊敬や敬服の念を多分に含む萌え属性であると考えられるわけですが、むしろ、そういった感情というのは「あらあらうふふ」と優しくされるよりも、厳しめに接された方が芽生えやすいものなんじゃないかと、一石を投じる主人公像が描かれているといえるでしょう!

 それはさておき、本作における探偵役もこの主人公が努めているわけですが、その捜査手法は基本的に、図書館で資料を漁ったり、そこから得られた情報をもとに聞き込みをおこなったりなど、クトゥルフ神話TRPGのPCを彷彿とさせる非情に地味で、かつ、現実的なものです。

 それ故、関係者一同に会して現場検証ドーン! というクイズ形式的な類の作品とは、また一風変わった味わいを感じられるのも本作のポイントといえるでしょうか。


 どのような事件か?

 文体、主人公のキャラクター性ときて、最後にして最も重要な要素となるのが、どのような事件を扱う作品であるのか? という点でしょうか。というか、ミステリなんだからそこを最初に触れるべきなんだけどね。お姉さん属性に開花した私が阿修羅すら凌駕しちまったから仕方ないね。

 で、まあ、主人公の捜査方法でちらりと触れたけど、本作は殺人に関するトリックとかを調べる類のミステリではなく、主人公の故郷でもある因習に縛られた村……そこに隠された恐るべき真実を探る! といった趣の作品となっております。

 その際、村に隠された真実と並んで重大なポイントとなるのがインターネットでして、発表された当時の時勢を考慮しても、かなり先進的かつ、現実的な役割を果たし、事件に大きく関係する要素となっているのが面白いです。

 いってしまえば、村社会の秘密という古めかしい要素と、インターネットという現代的な要素を見事に融合せしめ、新しい味わいを生み出しているわけで、そういった独自のテイストが評価され、横溝正史ミステリ大賞受賞に繋がったのではないでしょうか。

 伏線の撒き方なども適切かつ巧妙なもので、読み進めるに従ってバラバラに思えていた個々の要素が集約・解明されていく様は、ミステリとしての確かな満足感を与えてくれることでしょう。


 しかしながら、欠点もいくつか散見される

 とはいえ、全てを肯定的に捉えられるわけではなく、欠点もいくつか存在していて、まず、前半100ページあまりは主人公のゲーム会社における勤務風景を描写したものになっているのですが、そのほとんどはゲーム業界に携わった作者の経験を踏まえた体験談的な内容となっており、興味深くは読めるものの、事件そのものとは大して関係ないお話が続きます。

 そして第二に、この作品は人間の持つ歪みや狂気といったものが重大なテーマとなっているわけですが、ストーリーギミック上、別段狂っている必要の無い人物まで狂気を孕んだ行動に及んでしまっている。ミステリである以上、用意したギミックから逸脱した行動を取らせるべきではないと僕は考えますし、かえってテーマをぼやけさせる結果になってしまっていると思います。

 最後に、第三の問題点として、中盤、ある人物が主人公の無謀さに対して忠告をするのですが、そのやり方が明らかに必要以上の過激さと暴力性を含んだもので、これはどう考えても、口頭で丁寧に忠告すれば済んだことでしょう。さほど重要でもない登場人物に対して、いらぬ嫌悪感を抱かせるだけです。

 とはいえ、前半100ページを終えてしまえばそういった問題点は瑣末なものに思えてしまうほどテンポ良く物語は進行し、真相へと迫って行くことになりますし、ラストには、事件を経た主人公の成長が感じられる味わい深いシーンも存在します。全体的にはやはり、意欲的な良作であると断言することが出来るでしょう。


 でも今は、そんな事はどうでもいいんだ。重要なことじゃない

 はい、長い前振りを終えたところで、今回のレビューにはオチが用意されています(伏線回収)。

 えー、この作者、最初に述べたとおり元セガの人なんですが、前半、主人公が制作に関わっているゲームの内容が、明らかに当時自らが構想していたゲームなのだと思えるものになっています。

 で、それがどういうものなのかというと、パソコン、ゲーム機、携帯電話をネットで接続し、コミュニケーションを取ることを主体とした代物。

 ……うん。先見の明あるね。ありすぎるくらいあるね。今、ソーシャルゲームとか超流行ってるもんね。

 えー、ここでもう一度、確認しておきましょうか。

 本作は、第21回(2001年) 横溝正史ミステリ大賞受賞作品です。

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    ノ     ;;;:;:;;..;;;;.;;;;;;.;;:゛                 ノ



 十年早いんだよ!

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by ejison2005 | 2012-05-04 02:12 | ノベル
ゴールデンタイム レビュー

ゴールデンタイム〈1〉春にしてブラックアウト (電撃文庫)

竹宮 ゆゆこ / アスキーメディアワークス


 とらドラ!でおなじみ、竹宮ゆゆこ先生の新作に挑戦してみました。アニメは見てたけど、この人の作品読むのは初めてだよん。


 で、最初に結論から述べてしまうと、正直にいって、この第1巻の範囲においては、あんまり面白くないなーというのが感想です。
 これは僕が幼い頃から努力友情勝利の洗礼を受けてきた生粋のジャンプっ子だから(※)、超能力とかバトルとかが含まれない純然たるラブコメに対し拒否反応を示してしまうというのもあると思うんだけど、しかし、それ以外にもつまらないと感じた要因はいくつかあるので、そこら辺を重点的に書いていこうと思います。


 まず、文章的な問題。これが大きい。
 一人称やら三人称やらが純情ブレパレード状態だからなのか、はたまた、他の要因があってなのかは知らないけど、とにかく、ひたすら読みづらい文章が続いて頭痛が痛かったです。
 活字媒体における文章ってのは、漫画における絵柄みたいなもんなわけで、そこが自分に合わなかったら、やっぱり良い印象抱けないよね、ていう感じ。


 そして、もうひとつ大きいのが、要素を絞り切れていない点。
 最初に「超能力とかバトルとかが含まれない純然たるラブコメ」と書いといてなんなのですが、実はこの作品、物語開始と同時に詳細不明の事故によって主人公の霊魂と肉体が分離してしまっているんですよね。で、肉体は記憶喪失の別人格となって行動し、記憶をがっちり保有している霊魂の方はそれにくっ付いて回っていると(肉体の方は霊魂を認識できない)。
 しかしながら、そんな特殊な設定を用意しておきつつも、やっていることは「超能力とかバトルとかが含まれない純然たるラブコメ」に過ぎないわけです。正確にいえば、最後の方でようやくそのギミックを活かしたイベントが起こりますが、それすらも、通常の記憶喪失で問題なく展開できる範疇のもの。
 少なくとも、この第1巻においては肉体(記憶無し)と霊魂(記憶有り)との分離なんていう、微妙に状況説明しづらい設定を活用できてるとは言い難いわけです。
 既にシリーズ化が決定している作品の第1巻なんだから要素全てを使う必要はない、という見方もあるのでしょうが、僕はむしろ、シリーズものの第1巻であるからこそ、全ての要素を活用して作品全体の方向性を見せて欲しいと思ってしまうのです。例えるなら、現状この作品は「第1話でバスケと出会わずに喧嘩ばかり行うスラムダンク」みたいな状態なのですから。


 そして第三の問題点として、第1巻における最大のスペクタクルシーンは新興宗教の洗脳合宿から主人公とヒロインが逃亡を図るシーンなのですが、そんなのが最大の見せ場でいいのか、という点。
 確かに、大学一年生が直面する危機としては生々しいものがありますし、そういう意味では非常にリアルなのですが、だからといって、別に読んでいる人間の夢が掻き立てられたりはしません。
 これはラノベに限ったことではありませんが、主人公が陥る危機的状況というのは、「確かにピンチではあるけど、受け手が『自分もそういった状況に陥ってみたい』と願うような状況」であることが望ましいと、僕は思います。例えば、日本一発行部数の多い漫画を読んだ小さなお友達が、「僕も大きくなったら海賊になるー!」って言うような、ね。
 有名イラストレーターによる華やかな表紙を用意し、題名をゴールデンタイムと銘打って、最大の見せ場がこれでは、ちょっと詐欺的な気分を味わってしまうのです。

 ついでに述べておくと、このイベントによって進展しているのは「ヒロインが主人公の秘密を知る」くらいのもの(それもあっさりバレてあっさり流されて終わる)で、多角的恋愛関係の処理にも、主人公の置かれた特殊な状態の是正にも、これといって貢献していないのが気になります。
 これでは、本流から分岐したサイドイベントに過ぎないわけで、もうちょっと他の重要な事柄も同時に巻きこめなかったのかと、思えてなりません。
 

 そんなわけで、総括してしまうと、文章は読みづらく、用意した要素は第1巻内で使いきれておらず、作品として盛り上がりを期待したい部分では微妙に盛り上がりきれない作品、というのが僕の受けた印象でした。
 ちょっとオススメは出来かねます。


 ※但し小学生時代はボンボン派だった。

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by ejison2005 | 2010-09-17 21:28 | ノベル
小悪魔ストライカーズ! レビュー

パラサイトブラッド・ノベル 小悪魔ストライカーズ!(1) (富士見ドラゴン・ブック)

片山 泰宏 / 富士見書房


 読んだ! 読んだともさ!
 というわけで、折角だからレビューを。


 さて、以前に剣をつぐものレビューでも書いたことですが、TRPG原作のラノベというものは、基本的に平凡な小説となっていく宿命にあります。何故なら、多くのTRPGは「ごく普通のヒロイック・ファンタジー」や「ごく普通の現代異能バトル」を演じるために調整されたシステムだからです。
 そりゃ、やろうと思えば「高レベルの冒険者が命をかけて覗きを敢行する話」とかも作れるでしょうが、TRPGのノベル化というものは、原作となったシステムを小説という形で紹介したり、それを通じて新しい客層に興味を持ってもらったりするために行うものなので、やる意味はまったくないわけです。どうあがいても、何かひとつの方向へとんがった作品は作れない。そういった定めにある。
 そんなわけで、TRPG原作のラノベに求める面白さというものは必然、王道ド直球的な、ベッタベタな面白さということになるわけであり、突飛なアイデアとかでカバーできない分、それはむしろ、普通に一からラノベを書くより遥かに難しい仕事と化すわけで、作者の力量が試される分野であるといえるかも知れません。
 では、グループSNEの新鋭たる片山先生はその難事業を見事にやりおおせたのかといえば……これはちょっと、微妙といわざるを得ないかもしれません。

 まず第一に、そして最大の問題点ですが、キャラクターが弱い。
 それはヒロインがツンデレに服を着せたようなキャラであるとか、ツッコミとして(悪魔憑きとはいえ)主人公のドテッ腹をぶッ刺すのは恐怖を感じるとか、ラスボスが厨二病の権化みたいだとか、中ボスの名前がださ恥ずかしいとか、そういう問題ではなく、どのキャラクターに対しても、主人公の関わりが薄いというところに起因している気がします。
 初対面でそのまま最終決戦に至るラスボスとか、同じチームに所属するモブキャラといった様相を呈しているサブヒロインズとか、酷い目に遭ったのにその後音沙汰なしな幼馴染みに関してはいわずもがなですが、では何故、それなりの紙幅を費やして主人公とのイベントを行っているメインヒロインにまでそう思ってしまうのかというと、単に関わっているページ数と時間が多いというだけで、主人公の彼女に対するスタンスが変化を見せていないんですよね。
 恋を抱くのでも、同じ組織に所属する悪魔憑きとしてライバル心を燃やすのでも、別になんでも構わなくはあるのですが、ともかく、物語の最初と最後においては、彼女との人間関係を変化させて欲しかった。
 およそ物語ってのは主人公の置かれた(恋愛とか金銭とかライバルとの戦いとかの)状況が変化していく様を語っていくものなわけで、彼女とのイベントに少なくない紙数を割くのであれば、彼女との関係性の変化を語らねば片手落ちとなってしまうのです。
 とある事情により彼女サイドからの好感度は物語スタート時からマックス状態なわけで、「見くびられていた主人公がそれを覆す」という展開にもなってないし、この心情変化の無さは全体的な構成で見ても、キャラクターを推していかねばならないライトノベル全体の市場状況から見ても、下策であったといえるでしょう。

 第二に、物語全体から鑑みて、あまりにも起伏が少ない。どんでん返しが存在しない。
 悪役は悪役として普通に悪事を企み、主人公達は正義の味方としてそれを一生懸命に阻止しようとするだけでは、ちょっとサプライズが少なすぎる。
 結果としてどれだけの行数を費やそうとも、「特殊な力に目覚めた主人公が悪人をやっつけたぞ!」という一文で済んでしまうお話にしかなっていないわけで、これは王道を貫いているというよりも、驚きのある展開を盛り込めていないと、そう評するべきでしょう。

 では、逆にこの作品はどんなことに成功しているのかといえば、それは主人公の初心者悪魔憑きとしての描写、でしょうか。
 本作はかなり終盤まで、主人公が悪魔寄生体を入れてるだけのほぼ常人として進んでいくわけですが(それも盛り上がりの無さに拍車をかけてる気がする)、それだけのことはあり、悪魔憑きとなったばかりの人間がどういう風に日常生活を送っていくのか、それまでの人間時代とはどんなところが違うのかを、かなり詳細に書いています。
 小説としての面白さというよりも、実際のプレイングにおける参考例としての面白さといった側面が強いですが、これは確かにTRPG原作ラノベとして意味と意義のあることですし、本作に商業価値を与えているといえるでしょう。


 そんなわけで、TRPG原作ラノベの性質上、パンチ力に欠ける点は致し方ないとしても、それを補うだけのテクニックも、まだ感じられない作品です。
 まだ続巻は刊行していく予定のようですし、難点として感じた部分でも、とりわけキャラクターの面は強化していって欲しいところでしょうか。僕達みたいなTRPG好きな層だけではなく、それ以外の層に関しても強烈な吸引力を発揮するような、そんな作品になっていってくれるといいナ!

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by ejison2005 | 2010-09-04 01:48 | ノベル
剣をつぐもの レビュー

ソード・ワールド2.0 剣をつぐもの1 (富士見ファンタジア文庫)

北沢 慶 / 富士見書房


ソード・ワールド2.0 剣をつぐもの2 (富士見ファンタジア文庫)

北沢 慶 / 富士見書房


ソード・ワールド2.0 剣をつぐもの3 (富士見ファンタジア文庫)

北沢 慶 / 富士見書房


ソード・ワールド2.0 剣をつぐもの4 (富士見ファンタジア文庫)

北沢 慶 / 富士見書房




 完結したことだし、折角だからレビューを。

 まあ、最初にひと言でこの作品を表すのなら「ごく普通のヒロイック・ファンタジー」といったところでしょうか。残念ながら、良くも悪くも平凡なファンタジー小説。今時のラノベ読者層を引きつけるであろう、キャッチーな要素は何一つとして存在しない。「ドラゴンボールを三つくらいまで集めたと思ったら、残りはラスボスが集めていてくれたぜ!」という、どうにも打ち切りライクな展開からも、人気が出なかったのであろうことは想像に難くない。

 しかしながら、これは作者である北沢先生の責任ではない、ということは書いておきたい。大体、原作であり、日本一有名なTRPGシステムであるところのソード・ワールドは、僕たちが「ごく普通のヒロイック・ファンタジー」を演じるために調整されたシステムなのだから、その世界観を基に小説書いたって、そりゃ平凡な小説にしかなりませんよ。ええ。
 いやまあ、中には魔法戦士リウイなんていう例外もあるんだけどね。あれとこの作品とでは、抱えている事情が異なる。それは土台の上に積み重ねている作品と、土台を作り上げるために生み出された作品との違い。

 良く訓練された冒険の書読者である諸君ならば当然ご存じだと思われるが、この作品はソード・ワールド2.0最初のノベライズである。その宿命として、新しい世界、新しい設定群を紹介するような内容であることが望まれているのだ。ロードス島戦記から連綿と受け継がれてきた歴史の集大成(や、クリスタアの方が時系列は後だけど)として書かれているリウイとは、全く立場が異なっているのは、説明するまでもない。

 と、なれば、北沢先生の仕事は膨大だ。
・既存のアレクラスト大陸とは異なる新しい世界観について描写せねばならない
・旧版に比べ非常に重要な存在となっている魔剣について描写せねばならない
・タビット、ルーンフォーク、ナイトメアなどの、新しい種族も過不足なく活躍させねばならない。だがリルドラケンとドワーフ(女)、てめーらは駄目だ
・敵役にはもちろん、世界共通の強大な敵として設定した蛮族を起用し、彼らの価値観などについて描写せねばならない
 パッと箇条書きにしただけでも、これだけの要素(制限とも言う)をぶち込んだ上で、ひとつの作品として仕上げねばならないのだ。他人の黒歴史ノートを基に一作立ち上げるようなもんである。

 そんなチェスや将棋で言うところのチェックメイトにハマッた中、北沢先生は本当に頑張った。「ごく普通のヒロイック・ファンタジー」と最初に言ったが、それは逆説的に捉えれば、きっちりと王道的な展開へ仕上げているということ。それゆえのありきたりさもあるが、白いご飯はいつ食べても一定の満足感を得られるものである。
 その上で、箇条書きにした各要素をきっちりと昇華して見せ、のみならず、(ちょっとネタバレになるけど)ラストでは、今後ソードワールド2.0のサプリメントとして展開していくのであろう、非常に魅力的な新しい冒険の舞台を用意していくれているのだ。これを偉業と言わずして、何を偉業と呼ぼうか!
 そう、言うなれば、

 このライトノベルはえらい!

 のである。

 単純な小説として仕上げるのではなく、様々な要素を複合せねばならない条件下の中、見事に己の仕事を全うした北沢先生。そんな彼の力作を、皆さんも是非、お楽しみください。































 少しでも売り上げが上がれば、サプリメントとかリプレイの展開も増えていくだろうし。
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by ejison2005 | 2010-03-25 16:57 | ノベル