カテゴリ:漫画( 74 )
戦国スクナ レビュー

戦国スクナ 1 (ガンガンコミックスONLINE)

ねこたま。 / スクウェア・エニックス


 この世にタダより素敵なものはない……ということで、今日は新進気鋭のWEB雑誌、ガンガンONLINEで絶賛連載中の「戦国スクナ」をレビューするよー。

 ちなみに、こちらのページで1話と2話は試し読みできます。


 英雄女体化の観点では普通

 はい、最初にこの漫画をぶっちゃけて総括してしまうと、戦国時代の武将を少女化したコメディコミックスといったところでしょうか。それだけで全てを説明できてしまうとも言いますし、それを最大限有効活用した作品であるとも言えます。
 まずは、戦国大名の少女化という要素をどう調理しているかについて触れますと、まあ、他の多くの史実英雄女体化系作品に関しても言えるように、伝説に謳われる英雄像とコメディ節を強調化されたキャラクターとのギャップで萌えさせる&キャラ立ちさせるという、あの方式を活用しております。というか、英雄の少女化などというのは、ものすごく大げさにかつ、格好良く表現するのならば、史実の再解釈に他ならないわけで、で、あるならば、よりギャップを大きくして、そこに読者側の感嘆符が生じる余地を生み出すというのは、まったくもって当然の話ではありますね。
 この点において、本作は偉大な先達が記した道を踏み外すことなく歩み抜いていく、凡庸な作品であると言えるかもしれません。しかし、本作はそうはならなかった。それは、戦国大名の少女化へ、更に少女要素までミックスさせることによって生じた、愛らしさに起因しているのであります。


 微少女化によって作品としての個性が際立つ

 第2話の修行シーンが特に顕著なのですが、

f0029827_64569.jpg

 この漫画は、スクナの小人設定を活かした描写が多いです。そして、小っちゃい彼女達の一挙一投足が、非常に愛らしい。ここで注目して欲しいのは、彼女達はただ愛らしいだけの存在ではなく、微少女としての可愛らしさを付加される前に、戦国大名を少女化したことによって生じる、ある種二次創作的な個性を備えているという点です。

 要するに、戦国大名少女化によって明確な個性付けを施されたキャラクターと、微少女というシチュエーション萌え要素とが、見事に混在し、互いを高め合い、作品性にまで昇華されているわけですね。

 舞台が現代日本であるというのも、それを引き立てる要因となっていて、我々日本人が共通項として抱いている限りなくリアルな空間を舞台とすることによって、微少女として何より大切な要素であるスケール感が際立ちます。これが戦国大名の少女化だからといって、安直に戦国時代を舞台にしていたら、いまひとつスケール感を得られずに、大事な個性を失う結果となっていたでしょう。あくまでも、彼女達のサイズを実感しやすい現代日本を舞台にするからこそ、この愛らしさが生まれるのです。

 そして、舞台を現代日本にすることは、更なる効能をもたらしてくれました。


 素晴らしき箱庭イズム

 本作は、あくまでも我々人間――霊長類ヒト科ヒト目ヒト――が生活する現代日本へ、主人公たち「スクナ」が間借りする形で生活するという体裁を取っています。それはもう、作中の至る所で強調されており、

f0029827_641920.jpg

 「○○さんちの○○」という具合に、あくまでも居候させてもらっている人間側を主体として呼び合うことからもうかがえますし、

f0029827_643454.jpg

 人間の築いた生活空間を間借りするという、彼女達の生活形態からも推し量れます。

 これによって何が起こるかと言えば、それは、我々読者への「突き放し」に他なりません。ここまで力を入れ、人間とスクナとの種族的特性の違いを強調されてしまえば、精神的な距離を感じずにはいられないでしょう。

 それにより、通常の漫画においては主人公と同じ目線へ定められている読者の視点が、この漫画においては、どこか遠くから、その活躍をながめる風になっており、日常の片隅で繰り広げられる、ちんまい彼女達の、ちんまい冒険譚を遥か上の視点からのぞき見るような、何とも言えない箱庭感を生み出しているのです。


 まとめ

 結論を述べるなら、小さいは可愛い 可愛いは正義ということですが、物理的な面でも、読者への精神的な印象面でも、スモール感を丹念に描いた稀有な作品であると言えるでしょう。

f0029827_644978.jpg

 これなら、某ファミリーレストランのアルバイトさんも満足間違いなしですね!
[PR]
by ejison2005 | 2010-04-30 06:17 | 漫画
テルマエ・ロマエ 感想

テルマエ・ロマエ I (BEAM COMIX)

ヤマザキマリ / エンターブレイン


 今、色々と話題の風呂漫画を読んでみました。せっかくだから感想をば。

 ちなみに第1話は、こちらのページから無料で試し読みできます。

 結論から言ってしまえば、この漫画は面白い。何故面白いのか、それは……、

 ナショナリズムを喚起しているから!

 なのです。


 皆さんも考えてみて下さい……我々日本人にとって、風呂とは一体、何であるのかを。
 おそらく、ほとんどの人は、自分たちが世界に冠たる銭湯種族であるとの意識を持っているのではないでしょうか? そしてそのことに、わずかな誇りと優越感を抱いているのではないでしょうか?

f0029827_2063337.jpg

 ↑多くの日本人が心の奥底で思っていること。
 テルマエ・ロマエは、そういった、我々が矜持としている部分を巧みに褒めそやします。ここでポイントとなるのは、主人公であるルシウス技師が感銘を受けるのは、基本的に未来の技術力ではなく、

f0029827_2064890.jpg

 我々日本人の快楽を追求する姿勢、風呂に対する執念であるということです。

 ここでちょっと思い浮かべて欲しいのが、「過去からやってきた人間がテレビを見て『箱の中に人がいる!』と驚く」という、タイムリープもので定番の、あのイベントです。これは、未知のテクノロジーと出会った人間の対応としてはごくごく当たり前のものであり、悪く言ってしまえば当たり前のことを当たり前に描いているだけのシーンです。
 しかし、本作は当たり前のことを当たり前に描かず、一捻り加えた。具体的に述べるなら、ガラス形成技術に驚くシーンなどの一部例外を除き、未知の(風呂)テクノロジーと出会った主人公の反応を、「『すごい技術だ!』と驚くあこがれ」としてではなく、

f0029827_207081.jpg

 「これまで世界一の(風呂)文明国家に属していると思っていたのを粉々に打ち砕かれる屈服」として描いたのです。

 これによって我々は、

 自分達民族が密かに誇りとしてきた文化が、他民族の同じ文化を圧倒する、ある種の嗜虐的快感を得ます。そして、その嗜虐的快感こそが、ナショナリズムの発露なのです。

 オリンピック観戦が最も分かりやすい例なのですが、我々があれを行うのは、選手の健闘を称えるためでありますし、現在の日本のスポーツレベルを確認するためでもあります。しかし、それ以上に大きい理由として、

 自国が文化的活動で、他国のそれに打ち勝つ様子がみたいから!

 というのが挙げられます。そのために我々はテレビに食らいつき、新聞のスポーツ記事に一喜一憂するのです。え? 何? オリンピックはもっと高尚な活動だって? ちっ! うっせーな! 反省してまーす!

 何故、我々は文化的活動での勝利をこうまでして喜ぶのか……?
 それは、我々が「国家」という枠組みに帰属する「国民」であるから。そして、国民であるからには、その胸の奥に大なり小なりの、ナショナリズムを抱いているからです。我々は、他者への文化的活動で勝利を収めたという実績を得ることによって、ナショナリズムを満たしているのです。

 そして、この漫画が持つ面白さも、全く同質のものです。主人公・ルシウス技師が、日本の風呂文化に感服する姿は、大いに我々のナショナリズムを満たします。

 テルマエ・ロマエは、首相が国というものをなんだかよく分かっていないこんな国勢の中において、失われつつある我々の愛国心を呼び覚ましてくれている。だからこんなにも面白いのです。

 若者にとって、今は息が詰まるような世の中です。こんなご時勢では、自分に自信を持つことも、やる気を出すことも難しいでしょう。
 しかし、そんな時、このテルマエ・ロマエを読んで自分達が栄光ある日本人であることを思い出せば、明日を生きる活力が湧いてくるのではないでしょうか?

[PR]
by ejison2005 | 2010-04-23 20:15 | 漫画
ヤングガンガン 10年 09号 感想

                l三`ー 、_;:;:;:;:;:;:j;:;:;:;:;:;:_;:;:;_;:〟-三三三三三l
               l三  r=ミ''‐--‐';二,_ ̄    ,三三三彡彡l_   需要を感じる・・・
              lミ′   ̄    ー-'"    '=ミニ彡彡/‐、ヽ
                  l;l  ,_-‐ 、    __,,.. - 、       彡彡彳、.//  
_______∧,、_∥ `之ヽ、, i l´ _,ィ辷ァ-、、   彡彡'r ノ/_ ______
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄'`'` ̄ 1     ̄フ/l l::. ヽこ~ ̄     彡彳~´/  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
                 ヽ   ´ :l .l:::.         彡ィ-‐'′
                ゝ、  / :.  :r-、        彡′
              / ィ:ヘ  `ヽ:__,ィ='´        彡;ヽ、
          _,,..-‐'7 /:::::::ヽ   _: :_    ヽ      ィ´.}::ヽ ヽ、
      _,-‐'´    {  ヽ:::::::::ヘ `'ー===ー-- '   /ノ /::::::ヘ, ヽー、

 いや、単発ネタだけども。


 魍魎の揺りかご(新連載)

 ええい! 夢はどうでもいい! 早くクワダテ先生を出さんかっ!
 まあ、そんなこんなで前作の人気キャラクターを交えての新連載。これは正当な続編なのかな? それともスターシステム的な何かなのでしょうか?

 と、いう些細な疑問に関しては、「作者の遊び心」以上の答えが出てこないし、心底どうでも良くはあるわけですが、しかし、
Who(誰が) What(何を) When(いつ) Where(どこで) Why(どうして)How(どのように)したのか?
 という、根本的な情報さえも伝わってこないのは、心底どうでも良くはないわけなのであります。

 確かに先は気になるけど、それは伝えられてしかるべき情報が一切こちらに伝わってこないからという、説明欲求からくる感情であり、本来あるべき「テーマをどう消化するのか気になる」「あのキャラがどうなるのか気になる」という状態ではないんですよね。チュートリアルも何もないゲームで、更に説明書も同梱されていません、みたいな。世間ではそれをクソゲーと呼びます。

 確かに、最初に事件(イベント)を起こして読者を引き込むというのは有効だし、基本的に物語というのはそうあるべきだと思うけど、それは「最初に起こる事件(イベント)」だけで一話のページを丸々使えってことじゃないという、教訓を残した漫画として記憶に残りそうです。

 それと、殺人鬼さんの描写や先生の変貌から考えて、バイオハザードライクな設定の臭いがバリバリするわけですが、こういうのって、受け手が能動的に主人公を動かすゲームという媒体や、尺が限られている映画という媒体ならともかく、人気がある限り(なるべく)連載し続けていかなければならない漫画という媒体で、持続的に恐怖感を漂わせるのは至難の技だと思うんだけど、そこら辺はどう考えているのでしょうか。
 同じジャンルで生き残った例だと、学園黙示録HIGHSCHOOL OF THE DEADPSYRENがありますが、前者はハナからゾンビを乗り越えるべきハードルとしてしか設定してないし、後者は超能力バトルになってるし、どうにも先行きが暗いと思うのです。トーナメントでもやりますか。


 荒川アンダーザブリッジ

 なんだか、ジャガーさんでたまにやる実験的エピソードみたいだ。やりたいことは分かるんだけど、そのセンスに地球人がついてくのはちと厳しいものがあるのです。しかし、読者にそう思わせた時点で中村先生の勝ちなのであった。が、それは真の意味で勝利と呼ぶべき代物ではなく、結局これは、勝利者なき戦いだったのであります。

 まあ、要するに誰得ですね。


 FRONT MISSION DOG LIFE&DOG STYLE

 皆で頑張ってガンダムを倒そうぜ! というお話。但し、主人公の救出対象はノリノリでガンダムのパイロットやっているがな! バーナード・ワイズマン伍長もビックリです。

 しかし、一人の「死者も」ではなく、「死傷者も」出していないというのは凄まじいなあ。ヴァンツァー乗りである以上、「撃墜=死」になる可能性が高いからということかもしれませんが、それでもすごい。潜入作戦の手際は確かに格好良かったけど、それでも吹かし過ぎじゃないかってくらいに凄い。

 まあ、こんな重大な任務で彼らのようなヘッポコ軍団が戦い抜いていくには、常木中尉にそのくらいの肩書きがないと説得力が無いってことかなあ。

 それにしても、彼らのやり取りを見ていると、何度も何度も撃退されちゃったせいで本当に人材が不足しちゃっているというのを感じられますね。あれだけ常木中尉を重要視していたというのも、頷ける話です。


 DARKER THAN BLACK~漆黒の花

 ものすごい勢いで幼女に死亡フラグを立てる話。この子が得意気に口を開くたびに、僕ぁ真庭蝶々さんを見送る真庭蜜蜂さんみたいな気分になっちゃったよ。何がこの娘さんをここまで駆り立てたのであろうか。しかもフラグ回避したように見せかけて、危険な状況でアイテムを取りに戻るという更なる死亡フラグを積み立ててるんだぜ?

 あと、ベイリーさんの能力は、能力者の優位性がさほど高くないこの世界において、凄まじい脅威だと思います。ヘイさんって結局、即死技が増えた近接戦士だもんな。


 マンガ家さんとアシスタントさんと

 今回の感想というより、この漫画全体の感想になりますが、主人公がリアルに脳障害を抱えた人のように思えて、見ていて生理的な嫌悪感を抱くというか、ありていに言って超キモイというか、耳の穴から小指を突っ込まれて脳味噌をグリグリかき回されているかのような、名状しがたい気分になるんですよね。

 本当、こういうこと書いてると我ながら人間力低いなあと感じるわけですが。でも、アサシンクリードで道を塞ぐ(自己検閲)を片っ端から(自己検閲)したのは僕だけじゃないと思うんだ。


 柚子ペパーミント

 何せ柚子さんだから仕方が無いという気もしますが、しかし、前回あれだけ苦戦していた相手に、ここまで優勢に戦っちゃうのを見ていると、何だかなあと思ってしまうのです。佐藤ゴツボ先生は意図的に王道から外してると感じられる描写が多くて、おそらくはそれが漫画家としての個性なんだろうと思いますが、こういう外し方は無意味だと思うな。

 あるいは、苦戦する柚子さんが覚醒して逆転し、そこでまた桜が吸血して逆転なんて攻防にすると、どこぞの少年漫画みたいなノリになってしまうから、それを避けたかったのかもしれないけど。

 それか、シャワー中に何かエロイ事を考えてドクドク鼻血を垂らしてたのでしょうか。うん、そっちの方がこの子のキャラだな。


 ニコイチ

 息子へのカミングアウトという、真琴さんにとって漫画キャラクター的な意味での最大試練は一番しんどいところを乗り越え、息子の人格や周囲の理解もあり、何やかんやで乗り越えられそうな雰囲気があるわけですが、しかし、学校等のいわゆる「世間様」へのカミングアウトという、真琴さんにとって社会的な意味での最大試練はまだまだこれからなのでありました。

f0029827_2064958.jpg


 んぐるわ会報(最終回)

 げげぇーい! 連載終了かい!
 いやこれ、書店でのフェアとかもやってたし、てっきり次期か次々期辺りでのアニメ化弾と思っていたので、ビックリです。まあ、それを言ったら、今のヤングガンガンはメディアミックスできそうな作品が飽和状態なわけですが。
 しかし、最終回で改めて思ったけど、松戸君という正ヒロインに支えられてるよね。この作品。とてつもない乙女力だ。

・つまり……どういうことだってばよ!?

f0029827_2071195.jpg

「――は間違っていなかった。が……ま……」

 死の間際、ついに会長はキラの正体を悟る。それを看取る松戸の邪悪な顔は、周囲を取り囲む生徒会役員達からは見えなくて――。

f0029827_2071195.jpg

「――の戦闘力は53万です。ですがもちろん、フルパワーであなたと戦うつもりはありませんのでご心配なく」

 校長先生を守るため、単身会長に立ち向かう松戸。しかし、会長の口から告げられる事実はあまりにも絶望的なものであり――。

f0029827_2071195.jpg

「――は一向に構わんッッ!」

 説明不要ッッ!

 まあ、真面目な話をすると、「あら里見 早いじゃない」って言ってるのが(また)留年した会長なんでしょうがガガガ。


 BAMBOO BLADE

 何と山田さんが勝っちゃったでござる。
 言うまでもなく、普通に作劇すりゃ、ここはウラが勝利してラスボスぶりをアピールする場面なわけですが、そこは王道回避で知られる土塚先生。普通には進めません。
 と言っても、土塚先生が凄いのは王道を回避することではなく、その後に回避してなお、面白く納得のいく展開を見せてくれることだと思っているので、期待したいのは次週以降ですね。

[PR]
by ejison2005 | 2010-04-18 20:18 | 漫画
ばりごく麺 レビュー
ちょっと前、ビジネスジャンプを何気なく立ち読みしていたら、すごく面白い漫画が連載開始していました。
そう……。

f0029827_1111026.jpg

「くのいち魔宝伝」ですね。くのいちっていうのはこう、男のロマンが詰まってると思うんだ。ぐへへへへ……!

ではなく!

f0029827_1113156.jpg

「ばりごく麺」です。どうでもいいけど、真面目なシーンなのにどうして笑いがこみ上げてくるんだろう?

ところで、今回のレビューを読むにあたって注意してもらいたい事があるんだけど、僕はグルメ漫画がすっごい好きなんですよ。下手したらバトル漫画よりも好きなくらい。こう、何というか救われた気持ちになるんだ。自由で平和で豊かで……。

そんなわけで、ちょっと贔屓目が入っているとは思うんだけど、でもでも、そんな個人的な感情を差し置いてよく出来てる漫画だと思うんですよ。

ストーリーとしては今のところ、とてもマズいラーメン屋に主人公が訪れては、

「ぐあー! クソまずいぜ! だがそのマズさがある意味で気に入ったぜ! だから俺が同じ材料で超美味しいラーメンを作ってやるぜ!

という行動を繰り返すというもの。箇条書きにすると、単にイヤ味ったらしいだけの人物ですね。

しかしながら、この漫画のすごいところは、そういったイヤ味ったらしい行動を取っている主人公が、決してそうとは感じさせず、むしろ快男児という印象を与える点だと思うのです。

これはひとえに、サブ主人公として用意された脱サラ見習いラーメン職人・朗馬の存在が大きいでしょう。
彼は初対面時のファースト・インプレッションが強烈だったからか、主人公に心酔している節があり、彼が問題行動(ラーメンの値段を間違えて足りないお金しか置いてかなかったりした時とか)には、何らかのフォローを入れてくれます。

破天荒な人間をそう認識させるには、傍らに常識的な人物を配置し、受け手の目線として配置するのが非常に効果的なのは、過去のヒット作(グレンラガンとかね)が証明しているところなわけで、この漫画もその手法を有効活用しているといえるでしょう。

あとは、主人公が「とにかく余人を寄せ付けるところのない超人」として描写されているのも大きいと思う。範馬勇次郎とかもそうなんだけど、何らかの卓越した能力を持っている人間は、そこから発されるカリスマ性で多少人格に問題があっても補っちゃうよね。


そんなこんなで、ハタ目にはイヤ味としか受け取れない行動を取る主人公が、サブ主人公のフォローと圧倒的な技量でもって、何となくそれを格好良いと周囲の人物&読者に認識させちゃう痛快ラーメン漫画です。ラーメン食いながら読め!

ちなみに、

f0029827_1114723.jpg

f0029827_1115616.jpg

f0029827_112351.jpg

必殺技は、お湯が魔貫光殺砲みたいな軌跡を描く湯切り。
だからー! 何で真面目なシーンなのに面白くっていうか、明らかに狙ってるだろっ!

[PR]
by ejison2005 | 2008-07-04 01:15 | 漫画
「面白い少年漫画」とは何ぞや?
「面白い少年漫画」の定義も変わったなあ……と強く思います。


ちなみに、少年漫画といっても定義は星の数程あるのですが、僕が連想する少年漫画のスタンダードというのは、かの大名作ドラゴンボールにほかなりませんね。
すなわち、ストーリー上の大仕掛けは用意せず、常に新たな強敵が立ち塞がり、主人公はその打倒を目指す、というタイプの漫画です。こういった種類の作品が、登場しなくなって久しい。

とはいえ、時勢というのもあるとは思うんですけどね。面白さってのは変動するものだと思う。昔大ヒットした作品を今まったく同じまま連載したとしても、決して人気は獲得できないでしょう。


ならば、現代における「面白い少年漫画」とはどういった作品なのか……今日はその辺、ちょっと真面目に語ってみちゃうよ!


さて、上の文章内で僕は「昔大ヒットした作品を今まったく同じまま連載したとしても、決して人気は獲得できない」と書いたわけですが、だったらどうすればいいの? という話ですよね。
そこで、ここ十年ばかりのヒット作を見直してみると、ある二つの要素のうち、どちらかが(あるいは両方が)存在しているというパターンが非常に多いことに気がつきました。

ひと昔前の漫画界において、主人公及びその周辺人物の強さとは、それに見合った期間の努力で掴み取るものでした。いわゆる、「努力・そして勝利」の構図ですね(友情忘れてた)。

現在のヒット作においても、もちろんこれらは欠かせない要因なのですが、それに加えて「努力が介在しない強さ」「組織的に動く登場人物達」というのも必要不可欠な要素となりつつあるのです。

と、いうのもですね。現代の読者は、とかく「早期の刺激」と「リアリティ」を求めるものなんですよ。これは僕個人の趣向とかだけではなく、もっと広い視野に立ってもそうだと思う。

それは、読者がせっかちになってきたりスレてきたりというのもあるにはありますが、もっと大きな問題として、昔の漫画が打ち立ててきたテンプレ通りに作劇したとしても、決してオリジナルを超えることはできないというのが大きいです。
海原雄山の言葉を借りるのなら、「ピカソに絵を習ったからといって、ピカソと同じ絵を描いても仕方がない」というところですね。

で、偉大な先人達を超えるため、作品への付加価値として近代の漫画家が生み出したシステムが、「努力が介在しない強さ」「組織的に動く登場人物達」なのです。
「努力が介在しない強さ」というのは、「主人公が倒すべき敵ではない強キャラ」と読み替えてもいいですね。要するに、最初から強い登場人物のことです。

先に「努力が介在しない強さ」について解説しておくと、最初からクソ強い登場人物を味方なり第三勢力なりへ配置することによって、話に厚みをつけられます。彼らが行動を起こすシーンは、否が応でも緊張感が沸きますから。

何より彼らのバトルを要所要所で挿入することによって、お手軽に読者へカタルシスを与えられるのですね。まだまだ主人公達が未熟なうちから、はるか上のランクでのバトルシーンを提供できるわけです。

また、主人公が強さの頂点に立つという方式でストーリーを構築した場合、それこそドラゴンボールのようなインフレ地獄へと突入してしまうわけですが、この方式を用いれば主人公以上の強敵が散見する世界観を構築可能なわけです。

もうひとつの利点として、「強キャラをさらに上回る強キャラ」という足し算方式で強さの表現を行った過去作と違い、この方式は「強キャラをどの程度下回っているか」という引き算方式でキャラクターの強さが算出可能なため、登場人物のベジータ化を防げるというのもあります。いや、僕は王子大好きだけどな!

「組織的に動く登場人物達」というのは字のまんまです。近年のヒット作には、登場人物が組織的なバックアップを受けて行動するというパターンが非常に多く、それがリアリティを向上させている。

ま、これは分かりやすいですね。現実の社会において何らかの組織に属さないものなどほぼ存在しないわけですから、登場人物達がそういった援助を受けようとするのは自然な流れです。
というか、昔の漫画でも組織に所属するキャラは多かったんで、こちらに関してはそういった要素が強化された、という書き方をした方がいいかもしれない。

これにもやっぱりインフレ問題が関わってくるわけなんだけど、「強キャラをさらに上回る強キャラ」の足し算方式で話をつないでいった場合、あっという間にごくわずかな中心人物だけが飛びぬけて強くなってしまうため、その他の登場人物はモブと化して一生懸命に応援するか、情報収集でもするくらいしかやることがないんですよね。

もちろん、それはそれで活躍ではあるし、見せ場だと思うんだけど、やっぱり、少年漫画っていうのはバトルに参加してナンボだというのも本当のところだし、参戦していなければ見ている側の印象も薄いです。

しかし、近年頻繁に採用されるようになった「強キャラをどの程度下回っているか」の引き算方式ならば、登場人物達はある程度団子状態の強さで推移していけるため、お互いに協力しあいながらのバトルという展開が、実現しやすくなったということでしょう。


要するに、ここ十年近くの少年漫画の歴史はそのまま「いかにしてインフレを防ぎ、かつインフレ展開の面白さだけは抽出するか」腐心してきた歴史でもあるということです。

そして、それに成功してきた作品こそが現代における「面白い少年漫画」ということでしょう。
うむ! 我ながら独断と偏見に満ちてるしバトル漫画以外のジャンルには全く触れていないが、そんなの気にしないぜ!


注:ちなみに今回、意図して能力バトル漫画には触れませんでした。理由は、真面目に能力の特殊性だけで勝負してる漫画ってほとんど無い(能力者本人のスピードとかパワーも重要な作品が大半)から。

[PR]
by ejison2005 | 2008-06-28 18:12 | 漫画
To LOVEる布教(?) 絶対編
打ち切りにも負けず打ち切りにも負けず

f0029827_237201.jpg

f0029827_2372582.jpg

f0029827_238145.jpg

f0029827_238572.jpg

f0029827_238936.jpg

f0029827_2381443.jpg

f0029827_2382067.jpg

f0029827_2382695.jpg

f0029827_2383224.jpg

f0029827_2383856.jpg

f0029827_2384430.jpg

f0029827_2385185.jpg

f0029827_2385797.jpg

f0029827_239437.jpg

f0029827_2391072.jpg

f0029827_2391546.jpg

f0029827_2392476.jpg

f0029827_2393142.jpg

f0029827_2393871.jpg

今期は原作モノのアニメが強いZE!

オマケ

そんなこんなで祝日中、一巻から読み直したりしていました。で、こうして読み返すと、椎名先生の「可愛い女の子を描く技術」の向上っぷりが凄ェ!

f0029827_2310250.jpg

――ビフォー

f0029827_23101630.jpg

――アフター

……比べてみると、もはや頭身からして違う気がする。十分すぎるくらいベテランなのに、更に自分を変えられるっていうのは素晴らしいですね。

[PR]
by ejison2005 | 2008-04-29 23:22 | 漫画
フォーチュン+ブリゲイド レビュー
フォーチュン+ブリゲイド 1 (1) (バーズコミックス)
松田 未来 / / 幻冬舎
ISBN : 4344810635





フォーチュン+ブリゲイドは、松田未来先生の手による架空世界を舞台にした戦車漫画です。
といっても、

f0029827_2183339.jpg

ご覧になっていただけば分かる通り、思いっきり人型ですので、基本的にはロボット漫画だと考えてもらえば間違いはないと思います。


とはいえ、この作品の舞台となっている世界は、基本的に第二次世界大戦時の欧州くらいの技術レベルとして描かれているため、ロボットは複座で操作しなければなりませんし(主人公機に至っては三人乗り)、粒子ビーム砲やミサイルといった兵器は登場せず、ロボットの武装はライフルや機銃がいいところです。

また、この作品に登場するロボットの大きな特徴として、一部の例外を除くと「接近戦は想定していない」というものがあります。
長大なライフル銃を扱っている主人公機などいい例で、

f0029827_2185819.jpg

このように、機体の大きさに比してあまりにも小さな機銃を取り付けたくらいで「わーい、接近戦用武器を入手したよ!」となりますし、これが戦闘中に破壊されたりすると敵から、「これで近接戦装備はなくなったな!」と言われたりすることも。
この、手足など飾りですと言わんばかりの砲撃戦に特化した戦闘描写こそが、戦車漫画を名乗る所以なのでしょうね。

更に、ここが個人的に最も好ましく感じられた部分なのですが、この作品に登場するキャラは正攻法を好まない傾向にあるため、敵も味方も積極的に相手を罠にかけようとします。

f0029827_2191248.jpg

結果としてロボット戦が単なる撃ち合いや殴り合いに終始せず、激しい裏のかき合いの様相を呈し、それが戦闘に深みを与えてくれているのです。
大体が、ロボットに出来ることなんてせいぜいが、殴る、投げる、関節を極める、武器を振る、銃を撃つ、くらいのものですからね。どこかしらに工夫を入れないと、どうしても単調になってしまうわけですが、この作品はそういった点も軽々とクリアしているといえるでしょう。


キャラクターについて触れますが、この作品は第一に、主人公である少年兵ミゥラの魅力が非常に高いです。
志願兵なだけあって戦意が非常に豊富(=勇敢)ですし、かといってこの手のキャラにありがちな「功を焦っての暴走」も全くしません。

f0029827_2192572.jpg

かといって何でもゴザレの完璧キャラというわけではなく、その能力はあくまでも「見所があるかも」と言われる程度のものですし、勇気ある行動を取る前にも内面ではきちんとビビりまくっていることが強調されているために、感情移入はかなりしやすくなっています。
また、行動目的も「故郷を戦火から守るため」だったり、「ヒロインの少女を救うため」であったりと、ストレートでかつ好感の持てるものであるため、主人公オブ主人公とでも呼ぶべき、優等生的なキャラに仕上がっています。

ヒロインであるテュケも基本は根暗であれど、肝心な時には主人公を思いやった行動を取りますし、特殊能力の持ち主であるばかりに各勢力から狙われまくるという設定もあって、分かりやすい囚われ系ヒロインとして描かれています。
主人公であるミゥラの性格も合わさって、二人は正統派の主人公カップルという印象を読む者に与えることでしょう。

脇役の皆さんも、戦時中の軍隊に所属しているだけあって肉体年齢・精神年齢共に高め(最低で二十代)の傾向にあります。何というか、敵味方そろって「若さゆえの過ち」は決して起こさないと確信できる人々なので、読んでいて安心感があるんですよね。


まとめると、この漫画は無骨な戦争兵器としてのロボットをきっちりと描きつつも、戦闘描写は単純な正面からの殴り合いには決して留まらず、キャラクター達は極めて好感度が高いという、優秀な作品であるといえるでしょう。
ほぼ毎回戦闘シーンが存在しますし、ロボット物が好きな方にはオススメの一作です。

[PR]
by ejison2005 | 2008-03-08 02:25 | 漫画
ヨルムンガンド レビュー
ヨルムンガンド。
北欧神話に登場する蛇の怪物であり、悪戯好きの神ロキの子供でもある伝説上の存在です。
そんなおファンタジーな爬虫類とは、一切関係ない漫画が本日ご紹介する、

ヨルムンガンド 1 (1)
高橋 慶太郎 / / 小学館






ヨルムンガンドです。


☆ストーリー☆
両親を戦争で失い、武器に関する一切を憎むようになった元少年兵ヨナは、ひょんな事から若き女性武器商人ココ・ヘクマティアルと、彼女が率いる私兵達と共に世界中を旅する事になるのであった……。


さて、上で説明したように本作は武器商人達を題材にしたガン・アクション漫画です。
とはいえ、基本的にはドンパチの方へと尺を回している事が多いので、武器商人云々に関しては、撃ち合いの状況を作るための設定程度に考えておいた方が良いかもしれません。だからといって、おざなりだったり疎かであったりとかはしませんが。
例えば、僕も大好きな映画にロード・オブ・ウォーという作品があり、こちらは実在の武器商人達のエピソードを元に、武器取引というものに関してかなり詳しく描写しているのですが、ヨルムンガンドではそういった方面のイベントはあまり存在しないということです。まあ、あちらはあちらで撃ち合いのシーンはありませんから、一長一短ですね。


そんなわけで、最大の特徴である「武器商人達が主人公」という点は添え物的な要素にすぎず、蓋を開けてみればこの手の漫画としてはかなり平凡な作風なのですが、しかし、平凡は平凡なりに、かなりの高水準でまとまった平凡さではあります。


まず、ガン・アクション漫画では必須とされる画力ですが(銃がヘボイと話にならない)、これは、

f0029827_465091.jpg

ニイッと笑みを浮かべさせるつもりが、ルージュを引きそこなったように見えるなど、荒削りな面も多々見受けられますが、

f0029827_47989.jpg

このように、迫力あるアクションシーンも多いですし、

f0029827_472130.jpg

f0029827_472612.jpg

題材が題材なだけあって、実在する多数の銃器が登場し、読者の目を楽しませてくれます。


登場人物に関してですが、この作品に出てくるキャラは一部の例外を除き、割と現実的なファクターで構成されているため、漫画的な意味での「濃さ」に期待してる人にはちょっと肩透かしかもしれません。ブラック・ラグーンみたいにオサレポエムを語ったりもしない。
個人的にはルツというキャラクターが好きですね。野外戦では主人公より遙かに劣り、得意としている狙撃も私兵メンバーの中ではナンバー2に過ぎず、女子供が相手だと「俺、元警官だしあんまり撃ちたくないなあ(´・ω・`)」と苦悩して役立たずと化す三下っぷりがたまらない。

キャラクターに関してもうひとつですが、この作品は主人公の戦闘能力がそれほど高くありません。私兵メンバーの中でも、総合的に考えると3位か4位くらいでしょう。今のところ、名のある敵を倒したりもしてないし。
「少年兵の主人公」というと、ガンダムウィングフルメタル・パニックみたいな「年齢にそぐわぬ身体能力を備えた一流の兵士」みたいなのを連想してしまいますが、この作品の主人公に関しては適用外ということです(彼らよりさらに年少だしね)。
センスはいいし強いことは強いんだけど、若年故の荒削りさがあるため、本当に一流の相手には適わないというわけで、よくよく考えたら非常に正しいキャラ付けですね。若いから年長者には勝てない。
そういったところでも、現実寄りという印象を受けるんだろうな。もちろん、十分にファンタジーではありますが。


そんなわけで、「俺は撃ち合いのシーンが読みたいんだ! それも拳銃によるしけたものではなく、アサルトライフルを使った派手な銃撃戦をだ!」という方にはオススメの漫画です。大傑作というわけでもありませんが、手堅くまとまっているので、必ずや期待に応えてくれることでしょう。

[PR]
by ejison2005 | 2008-01-25 04:12 | 漫画
アニメがお仕事! レビュー
職業物、というジャンルがあります。
アニメ・小説・漫画・ゲームなど、どの様なメディアでも万遍なく作品が存在しますが、特にドラマでは扱われる事の多いジャンルですね。
このジャンルの利点は、「物珍しい職業なら、取材さえしっかりすればそれだけでストーリーを組み上げられる」という点で、何気に世の中を見渡せばいくらでも新規開拓ができそうな、金鉱脈なんじゃないかな~と個人的には思ったりしています。

とまあ、ちょっと脱線しましたが、ともかく職業物というのは「今まで他人がやってなかった様な作品を作りたいけど、どうすればいいか分からない」という方にはうってつけの題材だという事です。これまで扱われなかった職業についてきっちりと下調べをして、それを元にドラマ作りをすればいいわけですからね。
とはいえ、何でもかんでも題材に選べば良いというもんでもありません。例えば、バキュームカーで排泄物を回収して回る人々を題材にした漫画を読みたい人など、そうそういないでしょう。描きたい人だっていないはずです。
やはり、選ぶなら多くの人に興味を持ってもらえる職種が望ましいですね。それでいて、業界内の実情があまり知られていないようなものだとより良いです。
僕がそんな事を考えながら書店を漁っていた時、何気なく手にした漫画が本日ご紹介する、

アニメがお仕事! 1巻 (1)
石田 敦子 / / 少年画報社
ISBN : 4785924608





「アニメがお仕事!」です。

さて、この前振りだから当然といえば当然なのですが、この漫画はいわゆるひとつの職業物に位置する作品のひとつです。
で、扱っている職業はもちろんアニメーター! まあ、このタイトルで寿司屋の物語とかやられても困りますしね。
アニメーター。
このブログを訪れている人ならば、一度は興味を持った事のある職業なのではないでしょうか。
ネットなどを通じて色々な話が流れてはいますが、やはり、業界人でない僕らには実体がよく分からないこの職業。「興味を持つ者は多いけど実態はよく分からない」という職業を題材に選ぶという、職業物漫画としての第一ハードルは十分にクリアされています。
もちろん、いくら良い題材を選んでも取材がおろそかではどうにもならないのですが、どうやら、作者である石田先生自身も元アニメーターらしく、製作現場の書き込み等に関しては非常に力が入っています。
もっとも、この作品は「アニメーターという職業について解説する漫画」ではありませんので、

f0029827_28770.jpg

ところどころに入る嘘だか本当だかよく分からないうんちくなどによって、一定以上の……少なくとも、漫画としてなら十分なレベルのリアリティを確保するに留まってはいますが。
また、「動画」「2原」などといった専門用語が、何の説明も無しにバンバン出てきますので、「まっさらの状態からアニメーターについて知りたい!」という人よりも、「アニメ製作現場の職種などについてある程度知識はある」人の方が楽しみやすいかもしれません。
まあ、単語の意味が分からなかくて支障のあるストーリー展開ではないので、分からない言葉が出てきたら読み終えた後にネットで検索すればいいんじゃないでしょうか。実際、僕もそうやって読みましたし。
そういった意味では、ちょっと読者層を絞っているかもしれませんね。

ストーリー面について触れますが、この作品の大きなポイントとして「主人公への追い込みっぷりが半端じゃない」というのが挙げられます。
まず、アニメーターの話題となると必ず出てくる給料が安いという意見ですが、

f0029827_282588.jpg

ご他聞に漏れず、主人公達は薄給に悩まされ続けており、酷い時には(これは他にも原因があったのですが)家賃を払えなくなってしまったりもします。
また、特にこれが一番大きいのですが、主人公の周囲にいる人間は非常に嫌な奴が多いです。ええもう、半端ではなく。

f0029827_283920.jpg

代表的なところでは、主人公の上司ですね。
彼の腐りっぷりはなかなか根性が入ったもので、凄まじい時には主人公が祖母から送ってもらい、職場で配ったドラ焼きをわざと潰したりする程です。漫画界広しといえど、ここまでストレートにムカつく行動をするキャラはそうそういません。
そして、ここが重要なポイントなのですが、この漫画はそういったキャラに一切の報いを与えず、主人公が一方的に怒りを溜め込み、昇華させていくのが基本的な流れです。

これは漫画に限らず、およそあらゆる物語の定石なのですが、悪役は途中でどれだけ威張り散らしたりしていても、最後の最後には何らかの報いを受けるものです。そうする事によって、カタルシスを生み出しているわけですね。
しかし、この漫画にはそれが一切存在しない。憎まれっ子が世にはばかりまくりで、主人公はどこまでも泣き寝入りします。
が、それが他の作品には無いリアリティを生み出しているのですね。
何故なら、現実でも世の中はそんなもんだからです。そりゃそうですね。下っ端にできるのは、「こんな会社辞めてやる~!」と言って出て行くくらいのもんです(その後どうなるのかは知ったこっちゃありませんが)。
主人公達は、自分達の言い分など決して通らない理不尽だらけの世界で、それでも清濁を併せ呑んで理想を目指し、突き進んでいくわけです。

これは、個人的に大いに評価したい部分ですね。
いわゆる職業物というと、「破天荒な主人公がちょっといい事を言うと何故か周りも賛同して状況が改善されていく」というのがありがちな展開として挙げられるんですけども、僕はこれってあまり好きじゃないのです。
第一に、それをやると主人公がやたらと説教臭くなり、上から目線になる事が往々にして起こってしまうからと、第二にリアリティが無いからです。だって、現実じゃそんな上手くいきませんし。
現実に存在する職業で、現実で起こり得ない事をやっていたら、そりゃ嘘っぽい物語にもなりますよ。もちろん、フィクションと割り切って楽しむのは大いに有りですが。
そんなわけで、「壁にぶち当たったら主人公が我慢する」というこの作品におけるストーリーテリングは、なかなか研究しがいがあるんじゃないかと思うわけです。

と、ここまでこの作品の良い点を記述してきましたが、もちろん短所だって存在します。
先にも述べた通り、この作品は主人公が現実につまずくのが基本的な流れなのですが、それ故に少々、打たれ弱いというかメンヘラ気質的な面が多分に見受けられるので、そういうキャラが嫌いな人には若干、受けが悪いでしょう。まあ、この流れで「なあに、俺はへっちゃらだぜ!」というキャラが主人公だとお話にならないので、それは宿命ですね。
ただし、第五巻だけは別で、この巻において主人公はいつも通り壁にぶち当たる事になるのですが、その時だけは明らかに誰が見ても自業自得と言える事が原因で落ち込んでおり、

f0029827_29560.jpg

f0029827_291219.jpg

そのくせ、上司に逆恨みだけはきっちりします。この時ばかりは、本当に嫌な子だ。

もうひとつの難点は、ちょっと恋愛に比重を置きすぎなところかな。
その辺は割と個人の好みが出てくる部分なので、あくまでも僕が受けた印象として書いちゃいますけども、登場人物達が割と恋愛絡みでイザコザを起こす事が多いのですが、僕としてはもうちょっと仕事関係の揉め事が原因で窮地に追いこまれる展開をメインに据えていてくれた方が好みですね。

そんなわけで、新米アニメーターが安い給料や嫌味な上司にめげず高みを目指していく漫画です。アニメーターという仕事の険しさに触れてみたい方には、オススメ!
[PR]
by ejison2005 | 2007-09-01 02:10 | 漫画
ドスペラード レビュー
チャンピオンRED。
月刊少年チャンピオンからの派生誌であり、エロやらグロやら何でもありというか、連載作品ほぼ全てが(良い意味でも悪い意味でも)他の雑誌ではありえない圧倒的な「濃さ」を持っていることから、秋田書店の核実験場とまで呼ばれる漫画雑誌です。
そして、06年9月号……チャンピオンREDに新たな核弾頭が投下されました。
本日レビューをお送りする、

ドスペラード (チャンピオンREDコミックス)
大和田 秀樹 / / 秋田書店
ISBN : 425323089X
スコア選択:




「ドスペラード」です。

まずはいつも通りに作品の概要を解説しようと思いますが、本作のテーマはあるひと言に集約されます。そう……それは!

f0029827_3372562.jpg

萌えです。

…………………………。

ワンセモアッ!

f0029827_3375032.jpg

萌えです。


…………………………。

えー、核実験場と呼ばれてる意味がお分かり頂けたでしょうか?
そう、この作品はおっさんが魔法少女に変身して土水火風の四大系統魔法の上位に位置する「萌え魔法」を駆使して戦い抜くというストーリーなのです。きが、くるっとる。
もちろん、それだけでは単なる一発ネタの漫画となってしまい、読み切りとしてならともかく連載形式の作品としてはやや厳しいところがあるのですが、この作品にはもうひとつの特徴が存在します。
それは、ストーリーそのものは極めて王道的なそれであるという事です。
本作は対立する二つの魔法使いギルド(ちなみにこの世界では魔法使い=ヤクザです)のうち、片方のトップが暗殺され、それを聞いたかつての英雄(的なヤクザ)である主人が再び街へ帰ってくるという任侠物として非常にオーソドックスなストーリーです。
で、お約束として帰還した主人公は大規模な組織抗争に巻き込まれるのですけども、

1.何人かの刺客を簡単に蹴散らし主人公の特異性をアピール
2.主人公の能力に気付いた同質の能力を持つライバルキャラが勝負を挑んでくる
3.惨敗した主人公はとある辺境の地で魔法の秘密を知る人間から修行を受ける
4.あまりに激しい修行で一度は命を失うものの最終的には真の力に覚醒して復活し敵を圧倒

という、任侠物としての設定は活かせてませんが、ものすごくストレートで正道を行く展開となっています。これだけなら、ジャンプで連載できそうな勢いですね。
まあ、

f0029827_338930.jpg

主人公の特異性というのが萌え魔法で、

f0029827_3382472.jpg

ライバルキャラというのがこんなんで、

f0029827_3384391.jpg

辺境の地に隠された秘密というのが、かつて秋葉原に集った三十過ぎの童貞達が覚醒して放った魔法によって世界が滅んだ事で、

f0029827_339622.jpg

f0029827_3391328.jpg

f0029827_3391923.jpg

あまりに激しい修行というのが過去の恥ずかしい思い出(しかも無駄に生々しい)を暴露される事
だったりする辺りが、非常に大きな壁として立ちはだかる気はしますがガガガ。

そう、この作品は根底部分をしっかりと作りこんでいるくせに、まさしくハンマーでぶっ叩くかの様な豪快さでそれを崩壊させていくわけですね。
そして、その落差こそが圧倒的なカタルシスを生み出し、独自の面白さに繋がっているんじゃないかと。

f0029827_415020.jpg

↑何せ、主人公が真の力に覚醒する話での決めシーンがコレですから。
三十過ぎた童貞達が裸で大地にひれ伏すとか、本当にひどいというしかない。これはひどい。

さて、そんな核爆弾に例えるとツァーリ・ボンバ並な本作の破壊力は、さすがにチャンピオンREDといえど耐え切れなかったのか、

f0029827_3393899.jpg

07年7月号にて最後までひどすぎるオチ打ち切りに。
ううむ、やっぱり厳しかったのかなあ。
そんな風に落胆してると、

f0029827_3395067.jpg

最後の方にちっこくこんな文字が!

第二部があるかどうかは7月発売の単行本の売上げ次第!!
みんなの小銭を大和田先生にわけてくれェエエ!!!


えー、そんなわけで長々と書いてきましたが。
僕が続きを読みたいので、皆さんの小銭(552円+税)を大和田先生に分けてくださると幸いです。

[PR]
by ejison2005 | 2007-07-28 03:40 | 漫画