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オシエシラバス レビュー

オシエシラバス(1) (ヤングガンガンコミックス)

高尾 じんぐ / スクウェア・エニックス


 「オシエシラバス」はいわゆるひとつの家庭教師モノ漫画です。


 あらすじ

 女子高生の主人公が古本屋で参考書を買ったら、中から「持ち主を志望校に合格させることが使命」と言い張る家庭教師が出てきたよ!


 ありがちな題材で無難に構成したストーリー

 え~、あらすじを見て頂ければ分かる通り、ぶっちゃけこの漫画はストーリーだけ見れば特に目新しい要素がないです。いわゆるドラえもん系作品のテンプレートを、無難に無難に組み合わせている。
 唯一、新しいというか珍しい要素といえば、題材となっているのが「家庭教師」であるということでしょうか。ありそうでないよね、家庭教師。ジャンプのアレはバトル漫画になってはや数年だし。

 一応、つかみというかフックとして「参考書の中から家庭教師が出てきた!」という設定が存在しますが、それが意識されるのは本当に序盤も序盤だけで、別に魔法的なサムシングが扱えるわけでもなく、悪く言えば地味~な作品に収まってしまっているとも言えます。

 しかしながら、短所というのは裏返せば長所になる場合もままあり、この作品の場合は、それがかえって魅力となっているのです。


 今作においても「高尾じんぐ」らしさが光る

 作者の高尾じんぐ先生といえば、前作「んぐるわ会報」でもそうでしたが、「漫画キャラらしい漫画キャラ」というのは登場させず、現実の延長線上に存在しそうな登場人物同士で、淡々としたかけ合いを行わせることに定評のある漫画家です。

 それが顕著に表れているのは絵柄であり、

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 やや硬質な、それでいて写実的な背景と、現在流行っている路線に比べればかなりマイルドなデフォルメに留まったキャラデザインが特徴となっています。
 分類すれば萌え系作品に該当する本作ですが、その画風とかけ合い時の落ち着いた空気が合わさって、他の作品とはまた違った、独特の味わいを持っているのですね。

 萌え系と言えば、原色の絵の具をぶちまけたかのようなキャラキャラとした雰囲気の作品が多い昨今において、セピア調のもの柔らかな雰囲気を持った本作は、確かな個性を持って屹立しているといってよいでしょう。


 とはいえ、全編が全編そんなムードで描かれているというわけでもなく、

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 要所要所では、きちんとボケたりオーバーなリアクションを返したりします。
 そして、それがアクセントとして機能し、上述した高尾先生の個性を際立たせる形になっているのですね。


 百合もあるでよっ!

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 まとめ

 そんなわけで、「オシエシラバス」は穏やかなかけ合いと画風、そして百合が楽しめる家庭教師コメディです。

 華やかなだけじゃ物足りない、というアナタに是非。

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by ejison2005 | 2011-07-29 02:57 | 漫画
「王道の難しさ」を真面目に考えてみる
 王道は難しい……よく聞く気もするし聞かない気もしますが、とにかく王道作品と聞くと「簡単そうに思えて実は難しいジャンル」というイメージがあります。え、ないって? そこは話を合わせて下さい記事が終わってしまいます。

 というわけで、台風も荒ぶってることですし、ちょっとインドアで王道の難しさを真面目に考えてみることにします。……日にち置いたら台風去っちゃったけど。



 まずは定義を決めよう

 さて、ここでひとつの問題が浮上します。それはズバリ、「何を差して王道とするか?」というもの。

 試しに王道漫画……と聞いて、ドラゴンボール、スラムダンク、ワンピース、北斗の拳、その他様々な作品を皆さん思い浮かべると思いますが、どれもこれも、それぞれの作品毎にてんでバラバラな特徴を有しています。ジャンルも違えば、主人公の能力も年齢も目的も何もかも違います。そりゃそうです。ゴーカイジャーだってみんな同じじゃないから確かめたがるのです。ただ一つだけの宝が誰にも眠っているのです。

 試しにgoo辞書で王道について引いてみましたが、その答えは、

1 儒教で理想とした、有徳の君主が仁義に基づいて国を治める政道。
2 《royal roadの訳語》安易な方法。近道。「学問に―無し」

 と、いうもの。とりあえず、僕らが求めてる王道の定義ではなさそうです。有徳の君主が仁義に基づいて国を治める作品しか認められないのでは、ジャンプに王道漫画は無いという話になってしまいますし、ほとんど全てのクリエイターは安易な方法を取ろうと思って作ったわけではないでしょう。

 というわけで、しょうがないから独自の判断で勝手に定義を決めることにします。ちなみに僕は産湯に使った時からジャンプっ子なので、基本的にジャンプのヒット作を参考にしてます。


1 主人公はヒーローであり、精神的には既に完成されている。半人前ではあっても、半端者ではない。あくまでメンタル面での話であって、実力が伴う必要はない。

 悟空もルフィも花道もケンシロウもダイも幽助も、みんなみんな、精神的には完成されたところからスタートします。ルフィはエースを助け損ねて涙を流しちゃったけど、あれはフィジカルな実力が足りてなかっただけで、別に自分の考え方や人生観が未熟だったから泣いてたわけではない。
 閑話休題だけど、ジャンプのバトル漫画において、よっぽど工夫しなければ修行パートが退屈になりがちなのは、「修行を通じて主人公の精神的成長を描写する」という修行パートが持つ性質と相性が悪いからじゃないでしょうか。ただ単純に技設定が増えたりレベルアップしたりするだけで、ドラマが発生しないのですね。
 だからそれぞれの修行パートにおいて、悟空はクリリンと友情を深めたし、ルフィと幽助は修業後へ一気に時間を流したし、花道はヒロインへのフラグ立てをしたし、ケンシロウはそもそも修行しないし、ダイはハドラー様が単騎特攻しに来たのでしょう。

 とまれ、皆さん人間的には成長する余地がなく、成長するのは主人公に影響を受けたサブキャラ達なのです。


2 主人公自身に因縁のある事件を描いてはならない。正確には、描いてもいいがメインに持ってきてはならない。

 ジャンプのヒット作で興味深いのは、どの作品における事件も、本質的な意味では主人公と関わりが薄いということでしょう。まあ、戦闘能力の関係上、どれもこれも「俺がやらなきゃ誰がやる!」な状態であることは確かですが、王道作品の主人公として思い浮かべるような奴らは、仮に戦闘能力が足りなくても戦いへ赴くような奴らです。というか、それが原因でピンチに陥りパワーアップってのはまさに王道だし。
 また、戦ってる内にライバルとの因縁が生まれることはままありますが、それは戦い始めた動機ではない。あくまでも、スタート地点こそが大切なのです。

 これを外れると、一気に勧善懲悪な王道路線から逸れてしまうと、僕は考えます。
 例として、みんな大好き「ガン×ソード」の主人公ヴァンは復讐を目的として行動し、それを完遂するまでの物語を展開しますが、彼を差して「王道作品の主人公だ!」と言う人はほとんどいないと思います。大変に魅力的な人物であるにも関わらず、です。
 それは基本的に彼が、自分の抱えている問題を解決したに過ぎないからではないでしょうか。困難さのグレードを下げてしまうと、友達に貸してたお金を返してもらいに行くようなお話なのです。そこにヒーロー性はありません。ただの格好良い復讐鬼がいるだけです。

 また、ゴーカイシルバーこと伊狩鎧は初登場時、転んだ子供に手を差し伸べるべきだとマーベラスに言い放ちました。それは世界を救う戦いも、転んだ子供を助けるのも、困難さの度合いこそ違えど、本質的には同じ行為だからそう言ったのです。そこには明確なヒーロー性が存在します。
 まあ、結果的には過保護な行為だったわけですが、都合の悪いことは気にしな~い。

 要するに、被害者がいて、それをヒーローが助ける物語こそが王道と呼べるものなのではないでしょうか。自分が困難な状況に置かれてるからそれを打開しようとする話では、ヒーローが生まれないのです。
 ファミレスバイトの如くシフトまで組んじゃう音撃戦士、仮面ライダー響鬼の関東十一鬼衆がヒーローなのは「人助け」を自らの使命としているからなのでしょう。


 さて、ここに挙げた二つの条件を満たした作品こそ「王道作品である」と、とりあえずこの記事では定義します。



 それが定義だとして何が難しいの?

 はっきり言いましょう。おそらく、超難しいです。

 では何故難しいのか? それは上記の定義によって成立しなくなる、物語のパターンを列挙して語りましょう。


1 最初ダメダメな主人公が成長して格好良くなる話を描けない。

 ピクサーのヒット作大否定です。続編が作られるまでの超人気作である、「トイ・ストーリー」も「カーズ」も、最初は精神的に未熟だった主人公が成長する過程を描いたお話なのですが、この定義だと王道ではないことになります。
 ここで注目すべきは、ピクサーの作品が最初を見始めた人はほぼ確実に最後まで見るだろう映画であるという点。
 そう、ジャンプでこれをやると打ち切られちゃうのですね。そりゃそうです。ジャンプ式アンケートシステムは、その週その週で票を集めるのですから、いくら「ほぼ確実にその主人公が成長する」と保証されていたところで、その週単独での評価を見れば低いものになるのは仕方がないことでしょう。しかも、最近の新連載は成長する必要性があることを認識してないケースもままあるし。
 テレビアニメや特撮の場合も同じで、主人公が駄目人間だったら、視聴率は落ちますし玩具も売れません。キバッて逝く羽目になります。

 嫌な奴を見てストレスを溜め込むために娯楽作品を手に取る人間は、ほとんどいません。マジョリティであることを差して王道と称するのならば、創作物の基本であるこの形式はそう呼ぶに相応しくはないのです。
 というか、一定期間毎に敢行される漫画雑誌や、週一で放送されるテレビアニメ、特撮などが主な創作物の供給源である現代日本の情勢に置いては、そういった作品が王道足り得ないというのが正確ですね。ラノベなんかも、最初の十数ページで読者の心を掴まないと売れないらしいし。


2 主人公自身が深い関わりを持つ事件を描けない。

 定義決めの際にも触れましたが、自分自身の問題を解決する主人公の物語は、王道足り得ません。だってヒーローがいないから。水戸黄門は、いつだって旅先で縁もゆかりもない人々を助けているのです。
 また、ジョジョが6部以降、妙に燃えないのは、この問題が大きいんじゃないかと僕は考えています。徐倫にしろ、ジョニィにしろ、事件へ関わった動機は自分の問題を何とかするためだからね。だからしばしば、導き手であるジャイロの方が主人公なんじゃないかと我々は錯覚させられたわけです。
 対して、5部までの歴代主人公はみんな、外部から事件に関わる奴ばかりです。作中の言葉を借りるのなら、黄金の精神を持っているのです。ジョナサンがDIOにへりくだるようなゴミ虫だったら壮大なサーガは始まりませんでしたし、ジョセフは人助けをする中でドンドン事件が大きくなっていきました。承太郎は母が倒れる前の花京院戦で明確に法で裁けぬ悪は自分が裁くと言い放ちましたし、丈助は無敵のスタープラチナが何とかしてくれるのを待つばかりの男ではありません。そしてジョルノは、セリエAのスター選手に憧れても良かったところを、わざわざギャング・スターに憧れたのです。
 おっと閑話休題。

 主人公自身が被害者であり、その状態から這い上がろうとするのはこれまた創作物の基本です。這い上がる過程そのものがドラマであるからですね。
 しかし、それは読み手であったり視聴者であったりに、ストレスを与えることになってしまいます。何せ我々は、作中の主人公と視点を共有しているわけですので、彼らが受けたストレスはそのままこの身に降りかかります。

 結局、先に述べた通り、ストレスを溜め込むために娯楽作品を手に取る人間は、ほとんどおらず、マジョリティであることが王道ならば、この形式はそう呼ぶに相応しくないということになってしまうのですね。



 以上、二つのパターンがこの王道定義によって不可能となります。これが本当に厳しい。だってこれ、文中でも述べた通り基本パターンなのだから。
 試しに自分の本棚に収まってる漫画へ目を向けて欲しいんだけど、この二つのパターンに収まっていない作品がどれだけあるでしょうか? それだけこの二つは、物語を織りなす際において重要な、基幹となる部分なのです。

 何故、基幹となっているのか? それは、主人公自身がドラマを生み出すのに必要なパーツだからです。
 言い換えてしまえば、

 王道作品というのはすなわち、主人公が単独でドラマを生み出すことができない作品である

 ということなのですね。

 王道の難しさっていうのは、すなわちそこへかかっているのだと僕は思う。主人公自身はドラマを背負っていない。そのため、脇役や被害者を助けたりする過程でドラマを生み出さなければならない。かといって、主人公なんだから当然、お話の中心にいないわけにはいかない。恐るべき矛盾構造です。

 うん、難しいね。解決策全然見えてこないね。そりゃあ、サイコーやシュージンだって苦悩するわというお話でした。

 ちなみに、この記事を書くにあたってインスピレーションを得たコラム

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by ejison2005 | 2011-07-22 03:40 | 漫画
魔法少女おりこ☆マギカ 感想

魔法少女おりこ☆マギカ (1) (まんがタイムKRコミックス フォワードシリーズ)

原案:Magica Quartet / 芳文社


魔法少女おりこ☆マギカ (2) (まんがタイムKRコミックス フォワードシリーズ)

原案:Magica Quartet / 芳文社


 読んだので簡単に感想を書くよー。ネタバレ注意。

 どうでもいいけど、アキバBlogさんの記事タイトルでおもっくそネタバレかまされた時はガッデムという気持ちになった。まどかはネタバレ厨から決して逃れられないコンテンツなのだろうか。

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by ejison2005 | 2011-06-30 04:26 | 漫画
よるくも レビュー

よるくも 1 (IKKI COMIX)

漆原 ミチ / 小学館


 月刊IKKIで好評連載中の「よるくも」は、凄腕のイケメン殺し屋が飯屋の看板娘とデートしたり、美味しい卵かけご飯の食べ方をレクチャーされたりする漫画です。


 ぶっちゃけ話は評価する段階にない

 えー、このような書き方をしたのもですね、実は現在刊行されている第1巻時点までは、ほとんどお話が進展していないからだったりします。というか、作品全体としての目的が見えない。ボスキャラっぽい人がこれから何かやるぞー! というところまでしか進んでない。
 この第1巻に収録されているのは第7話までなんだけど、月刊誌で7か月かけてそこまでしか進展していないのだから、そのスロースターターっぷりは推して知るべし! です。

 さて、ここで皆さん、疑問に思ったかもしれませんが、通常、僕はそういった類の作品はけなす傾向にあります。にも関わらず、何故、今回この作品をレビューしようと思ったのかというと、そんな欠点を吹き飛ばすくらい優れた点が存在するからなのです。


 世界観一本釣り

この[世界]には、上・中・下、がある。
富めるものの住む[街]。
貧しいものの住む[畑]。
その下に、深く、暗い[森]――。


 これはIKKI公式サイトからの引用で、この字面だけだと何かおファンタジーな世界を舞台にした物語みたいになってしまいますが、

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 要するに、キッチリ仕分けされた階級社会を舞台にした作品です。

 で、このうち第1巻で登場するのは畑と森なんだけど、街並みの描写が素晴らしい!

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 無秩序に人が集まり生活する都市特有の、わいざつな活気が高い画力でもって、しかし淡々と描かれています。

 九龍城と聞いたらそれだけでドキドキしちゃう人は多いと思うんだけど、こういったスラム街っていうのは独特のロマンがありますよね。ファンタジーRPGなどにおいて、拠点のひとつに用意されることが多いのもうなずけるというもので、いつ命を落とすか分からない硬派な空気、ただそこで過ごすだけで事件が巻き起こる非日常感、社会的最下層に位置しながらもバイタリティに溢れた住民達、雑多に積み重ねられたはずが不思議な調和を生み出している建物群などなど、およそ男の子の求める全てがそこに合わさっています。

 それを独自のセンスで構築し、描いているというだけで、ここまで面白い読み物になるのかと衝撃を受けることは受け合いです!


 ある種の世相反映も

 さて、ここからはややうがった見解となりますが、最初に説明した通り、本作の世界観は居住地区毎に統制された階級社会となっています。
 キャラの名前に日本語が使われているからかもしれませんが、何というか、これ、かなり人ごとではないんですよね。
 現実の日本だって、もちろんここまで酷くはないけど、かなりの階級社会となりつつあります。特に僕ら若年層はそれをひしひしと感じていて、その理由を今さら論ずる必要もないでしょう。
 別に作者もそれを意図して描いてるわけじゃないだろうけど、こういった世相のもとで、ヒエラルキーの差を如実に描いた作品が出てきているのを考えると、なかなか深読みしたくなるものがありますね。


 まとめ

 そんなわけで「よるくも」は、物語としては遅々とした歩みながらも、魅力的な世界を体験でき、何なら社会風刺だって感じ取ることのできる意欲作です。

 スカッとしたいわけではない、かといって陰惨に過ぎる作品が読みたいわけでもない、退廃的なエネルギーを感じ取りたい方にオススメ!

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by ejison2005 | 2011-03-23 04:10 | 漫画
PSYRENなんで打ち切られてしまったん?
 じゃあ、10年52号のジャンプ感想でも宣言していたことですし、サイレンのまとめ感想でも書こうかと思います。
 ちなみに、あらかじめスタンスを述べておくと、僕はこの連載終了を打ち切りだと考えている。円満終了と言うには、終盤がちょっと駆け足に過ぎますからね。アッサリ倒されちゃったラスボスなどが顕著な例。


 初期のサバイバルホラー要素について

 終わってっから言うのもアレなんですが、超能力バトルものに路線変更をしている以上、受けは悪かったと見るべきでしょう。当時書いた自分の感想を見てみても、あまり好意的な印象は抱いていない。
 原因はいくつかあるのですが、細かいところだと、登場人物の反応&死に様が同じようなのばっかりでバラエティに欠けている(サバイバルは危機に直面した人物の心情こそが大事なのに)、比較的序盤で雨宮がタブーを一匹退治してしまっているため、何とかなりそうな雰囲気が漂ってしまっている。サイレンやタブーのデザインなど、恐怖感を煽るためのエッセンスが有名な他作品の象徴的要素をパげふんげふん。

 当時書いていたそれらの文言に今、付け加えるのだとすれば、そもそも、サバイバルホラーというジャンルそのものが漫画に向いていないのではないか? というのがあります。
 私見ですが、サバイバルホラーを題材に使われるのが多いのは、映画やゲームといった媒体です。
 映画ならば、恐怖演出のタイミングをコントロールすることが可能です。なんてったって、映像媒体ですからね。しかし、漫画は読者自身で読み進めるものですので、そうそう上手くはいきません。少なくとも、ビックリ箱的に「クリーチャーが突然姿を現す!」という演出は難しいでしょう。
 ゲームの場合、そもそも、状況を打開するのはプレイヤー自身です。ボケッとしていてもキャラクターは何もしてくれません。自分自身で勇気を奮い起し、コントローラーを操作するところまで含めて恐怖演出として成り立っているので、こりゃもうサバイバルホラーとの相性はバッチリです。そりゃ、このジャンルで有名作品が次々と輩出もされるわな。一方、漫画はゲームブック形式でもない限り、キャラクターが勝手に解決するものです。
 これらの問題を解決する妙案も思いつかないし、やっぱり、僕にはサバイバルホラーと漫画って親和性悪く感じられるかな。サバイバルだけならばまだしも。


 主人公について

 読んでいて最後まで掴み切れなかったのが、主人公のキャラクターですね。

 未来に強制召喚されちゃうから頑張る → ワイズを倒さないと世界が滅んじゃうから頑張る → ワイズをそうさせた元凶が判明したので倒す

 という具合に、むしろブレなさすら感じさせるくらいの勢いで状況に流されまくっちゃってる。だから、自意識が希薄に感じられてしまったのかなって思います。主人公なのに。

 もっと言ってしまうのなら、心理の転換がないんですよね。同じく、強制的に非日常の世界へ足を踏み入らされてしまう落ちもの系作品の定型を見ると、

 ヒロインと出会う → ヒロインといさかい → ヒロインと和解 → 協力して事件を解決

 という具合になってるわけですが、ここで大事なのが「ヒロインと和解」というステップで、ここで主人公が普通に考えりゃ喧嘩別れして当然のヒロインという異分子を受け入れることによって、「『ヒロインのいない世界』という選択肢を自ら破棄する主人公の意志と選択」を表現し「『ヒロインと協力して事件を解決する』という目的」が物語に誕生するのです。ついでに、受け入れてなかったものを受け入れるようになった主人公の精神的成長も描写できる。

 サイレンの場合、もう最初からそう行動するしかないくらいに主人公の選択肢が限定されてしまっているため、あえて何らかの「逃げ道」を用意し、それを主人公自らが葛藤の末、破棄するくらいにしても良かったのかもしれません。

 もしくは、07号と雨宮を一人のキャラクターとして悪魔合体させ、メインヒロインとするとか。それこそ、落ちもの系作品になってしまいますがw


 テクスチャ関連

 ともあれ、テレホンカードに始りテレホンカードに終わる物語全体の構成はかなりスッキリしていたと思います。
 ならば、それを色付けするテクスチャの方はどうだったのかといえば、サイレンという作品はここでも……というか、主にこの点で猛烈に損していたのではないかと思わずにはいられません。
 何というかこう……全体的にダサレっていうか、格好つけようとして全く格好つけられてないんだよね。最初っから素直にダサイならそれはそれで味かもしれないけど、変に格好つけようとしちゃってるため、大変に恥ずかしい状態となってしまっている。
 ドラゴンとか、ワイズとか、星将とか、元老院(笑)などのネーミングセンスなんか、特に顕著で、名前負けしているというか、そもそも世界観にそぐわっていない。
 言うまでもなく、サイレンの世界は現代日本(及びその地続きの荒廃した未来)であるわけで、自軍に星の使徒なんて名付けちゃってキャッキャと喜んでたクリード様みたく、完全な異世界の住人というわけではないのです。
 そんな世界観であんなネーミングにしちゃうもんだから、ワイズが厨二病末期患者の集まりみたいな感じになってしまっていたんでしょうなあ。彼ら、何を考えてか源次名まで名乗っちゃってるし。

 他にも、何故か未来へ舞台を移した途端、失敗したFFみたいになっちゃう服飾センスとか、クリーチャーデザインとか、うん、ダサイというか、読んでて赤面しちゃうような諸々が見事に集結していたと思う。

 厨二も突き抜けてしまえば格好良いという方もいるでしょうが、僕としては、突き抜けた厨二ってそれにそぐわった世界観なども一緒に提供してくれているもんだと思うのですよ。


 ぶっちゃけ絵が(ry

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 まとめ

 そんなわけで、いくつかまとめて書きました。
 やっぱり、一番大きいのはテクスチャで、次点くらいが主人公のキャラクター造形でしょうか。ハッとするくらいテクスチャが抜きんでているか個性的ならば、それだけで価値が生じますし、主人公がもっと自意識をしっかり持っていたならば、それ故に仲間と衝突するなどしてドラマが発生し、各キャラクターもより作り込めたんじゃないかと思う。

 ともあれ、連載お疲れさまでした。

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by ejison2005 | 2010-12-09 03:55 | 漫画
アリアンロッド・サガ コンチェルト レビュー

アリアンロッド・サガ・コンチェルト 1 (電撃コミックス)

佐々木 あかね / アスキー・メディアワークス


 アリアンロッド・サガといえば、冒険と戦争、そして殺意に満ちたリプレイシリーズとして知られていますが、本日ご紹介する「アリアンロッド・サガ コンチェルト」は、その前史を描いたコミカライズです。



 結果

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 ごらんのありさまだよ!!



 だが少し待って欲しい

 ところで、上の画像を見た人はこう思ったんじゃないでしょうか? 「まだだ! 陛下の殺意はこんなものじゃないはず!」と。
 それには全くもって同感と言うしかありませんが、コンチェルトで描かれているのは本編から三年前(ピアニィ13歳時)のものです。

    ,ィィr--  ..__、j
   ル! {       `ヽ,       ∧
  N { l `    ,、   i _|\/ ∨ ∨
  ゝヽ   _,,ィjjハ、   | \
  `ニr‐tミ-rr‐tュ<≧rヘ   > つまり、この三年間で殺意を熟成させ、
     {___,リ ヽ二´ノ  }ソ ∠ 本編で一気にそれが爆発したんだよ!
    '、 `,-_-ュ  u /|   ∠
      ヽ`┴ ' //l\  |/\∧  /
--─‐ァ'| `ニ--‐'´ /  |`ー ..__   `´
    く__レ1;';';';>、  / __ |  ,=、 ___
   「 ∧ 7;';';'| ヽ/ _,|‐、|」 |L..! {L..l ))
   |  |::.V;';';';'| /.:.|トl`´.! l _,,,l | _,,|  , -,
    ! |:.:.:l;;';';';'|/.:.:.:||=|=; | |   | | .l / 〃 ))
    l |:.:.:.:l;';';'/.:.:.:.:| ! ヽ \!‐=:l/ `:lj  7
    | |:.:.:.:.l;'/.:.:.:.:.:.! ヽ:::\::  ::::|  ::l /

 むしろ、ここからピアニィは戦術を学び、本能面でもロジック面でも殺意を高めていくわけで、次巻以降、どれだけ殺意が高まっていくかに期待するべきではないでしょうか。
 というか、何も起きてない平時でもコレな時点で既に相当なもんだよな。



  ここから真面目なレビュー

 さて、全ての卓ゲ者が真っ先に気にするであろうことを先んじて紹介しましたが、この作品、単なるファンサービスに留まらず、ストーリーそのものもかなり優等生的な出来栄えとなっております。
 簡単に言うと、抑えるべきポイントを抑えた作劇となっている。

 あらすじを語ると、シェルドニアン学園に転入した少年セシルが、ピアニィと彼女が所属するギルドの仲間達と絆を深め合い、学園内で巻き起こるトラブルを解決していくというものなのですが、一巻の中だけでも、

 物語の導入とメインヒロイン・ピアニィ主体のエピソード → 仲間達とセシルがそれぞれ親睦を深めていく個別エピソード → ピアニィ出生の秘密(笑)を知るエピソード

 といった具合に、いわゆるハーレム的「基本メインヒロインとイチャイチャし、たまにサブヒロインと仲良くする」ストーリーを完璧に踏襲しきっています。
 これは別にディスっているわけでも何でもなく、普通にやってしまえばとてつもなくニッチな方向を向いた作品になってしまいがちなTRPGのコミカライズ作品に、最大公約数的な面白さを付加することに成功しているということなわけで、やれるだけのことをやった丁寧な仕事であるといえるでしょう。その上で、やるだけやっちまってるのはご愛嬌です。



 本編の主人公セシル

 ところで、あらすじを読んだ方はこう思ったでしょう。「ん? ピアニィにフラグを立てるのはアルの仕事じゃないのか?」と。
 そんなあなたは冷静に考えてみてください。この漫画は本編より三年前の物語で、メインヒロインは、あの! 破壊を司る女王とまで呼ばれた! ピアニィです。

 だから、彼はおそらくもう……。

 そして、アルもいずれはきっと……。



 佐々木あかね先生の美麗な作画

 さて、本作の作画を担当しているのは、サガ本編でもイラストを担当している佐々木あかね先生なわけですが、先生の特徴である、少女漫画的タッチでありながらも、男心をガッチリ掴んだ繊細な絵を楽しめるのも、大きなセールスポイントであります。
 全体的に描きこみも多いですし、無意味に背景が白いシーンなども存在しません。
 バトルシーンにおける「動き」の描写には不得手さを感じますが、一番重要なピアニィの魔法行使(つーかフロストプリズム)シーンは見開きで迫力のあるエフェクトを駆使していますし、そちらが目当てで買いたいという人にも、満足のいく描写になっているのではないでしょうか。

 あ、ピアニィのサービスシーンはないよ。陛下のスカートってばマジ鉄壁。



 まとめ

 というわけで、基本をしっかり抑えたストーリーを展開しつつも、ピアニィ陛下の殺意と、佐々木あかね先生の美麗な作画を楽しめる、サガファン垂涎の一作です。
 巻末にはシェルドニアン学園用のアイテムデータも存在しますし、この学園を舞台にしたシナリオが作りたい方には、必携の一冊といえるのではないでしょうか。

 もちろん、ピアニィが握ってる包丁のデータもあるでよ!
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by ejison2005 | 2010-12-03 19:36 | 漫画
「頭脳系」キャラについて考えてみる
 頭脳戦……なんとも心躍る響きです。
 能力バトル系の作品などで、キャラクターが能力の特性を活かし、「あっ」と驚くような方法で敵を撃破するシーンが好きだという方は多いのではないでしょうか。
 別に作品のメインストリームへ据えずとも、物語を回すにはキャラクターをピンチに陥れる必要があり、ピンチに陥ってるキャラクターは普通にやってたからそんな状況になってしまった故、何らかの「普通じゃない」手段を思いついて状況を打破する必要があるわけで、創作物と頭脳戦とは、切っても切れない仲であるのだといえます。

 そういった、お話を進行させるための都合もあり、漫画アニメラノベなどにはしばしば、その頭脳を褒め称えられるキャラクターが登場します。
 基本的には漫画について感想を述べたり考察したりするこのブログ、こんな美味しいネタを放置しておく手はありません。ここはひとつ、各作品に登場する天才的と称えられる……もしくは、作品内で讃辞されずとも読者が思わずそう称えてしまうキャラクターを取り上げ、考察を図ることにしましょう。

 ()内は登場作品です。


 夜神ライト(デスノート)

 デスノコラとして散々利用させてもらった身ですし、やはり一番バッターとして語るべきは彼でしょう。
 彼の天才描写として印象的なのは、学業において非常に優秀な成績を残していると、度々強調されていること。そしてもう一つは、基本的に「計画を練ってるシーンは読者に見せない……もしくは結果が出てから回想する」というところでしょうか。
 前者はキャラ付けとして、重要なのは後者で、実はライト君、全編を通しても計画実行前に作戦を明かすことはほとんどありません。ひょっとしたら全くないかもしれない。
 と、いうのも、実は彼の作戦って荒唐無稽なものである場合が多いんですよね。
 特に、「計画通り!」のコマに繋がる一連の計画なんかがその筆頭で、冷静に考えてみれば、お前、何を根拠にしてそこまで自信満々にしてるんだよ、とツッコミを入れたくなります。むしろ計画通りにならねえ可能性のが遥かにたけえだろ、と。
 しかし、彼は実際に成功させた。成功させた上で初めて、「全て狙い通りだったんですよ」と勝ち誇って見せた。これが上手い。
 計画実行前に語っていれば机上の空論でも、成功させてからならばそうではありません。いや、漫画なんて全部机上の空論だろ、というのは置いといて。
 何せ成功させてるわけですから、その言葉には実績という重みがつきます。スポーツ選手なんかと同じで、試合開始前に「これこれこういう風に頑張りました」と言うよりも、試合勝利後に「こういうところで頑張ったのが結果に結びつきました」と語った方が説得力があるし、格好良いのです。

 経過の前にまず結果! それがライト君に見る天才キャラクターの演出方法なのでしょう。サイコーとシュージンも、うだうだ企画練るシーン出すより、まず結果を見せてからドヤ顔した方がいいのかも分からんね。まあ、デスノもジェバンニは物議をかもしたのだから、ものによるんだろうけど。


 小野寺剛士(A君(17)の戦争)
 太公望(封神演義)


 彼らに関しては、タイプが同じだと判断したので一緒に語ります。一軍を率いる将というだけではなく、天才キャラとしての演出面でも似てる。

 この二人に共通して言えるのは、現代より文明レベルで劣る世界において、現代的な、もしくは作品世界よりも未来で用いられるはずの戦術を駆使していることでしょう。剛士君はほぼ全編において、太公望は殷郊との戦い(の前哨戦として行われた合戦)においてそれを披露しています。
 
 この演出方法の利点は、主人公以外のキャラクターが主人公に知略において劣る理由付けが図れることでしょう。後述しますが、頭脳戦において、キャラクターに知性の差をつけることは絶対に必要なことです。とはいえ、不自然にバカっぽすぎても読者につっこまれてしまうわけですが、そもそも彼らの文明レベルで思いつけるはずのない戦術を主人公が持ち込んでいるだけならば、そういった心配は杞憂に終わります。だって、周りがバカなんじゃなくて、主人公がチートなだけなのだから。

 まあ、つまり、彼らについて端的にまとめると、早くA君の続刊を出して下さいお願いしますとなるわけです。


 ヤン・ウェンリー(銀河英雄伝説)

 うん、まあ、彼を外すわけにもいかんよね。
 随分と昔に読んだきりなので記憶が定かではありませんが、彼というか、銀河英雄伝説の凄いところは、作中の登場人物全てに「こいつは○○が得意で○○が苦手」という具合に能力の差異を設け、それを読者に周知させていたことでしょう。

 例:ビッテンフェルトは突撃能力が高いが粘り弱い。

 後は将棋のコマの如く、戦場という盤面に彼らを配置し、押したり押し返されたりを描写していくわけですが、その際、魔術師ヤンは的確に相手の弱点を突いたりする、と。
 つけ加えると、事前にラインハルト等が作戦を語り(負けフラグ立てともいう)、それをヤンが看破するシーンを入れることで、「ヤンの戦術眼スゲー!」と思わせる演出も多かったような気がします。


 奈良シカマル(ナルト)

 大した奴だ。
 まさか、ここまでの子とは……。


 スメラギ・李・ノリエラ(機動戦士ガンダム00)

 確かに作戦立案はしていたのだが、うん、肝心の作戦内容は基本、ガンダムの無茶な性能に頼っただけのゴリ押しだったよね……。
 紛争が起こってるorこれから起こる地域を予想するという仕事もあったんだけど、ヴェーダというスーパーサポートがあった故、あんまり彼女のおかげという気がしないのであった。
 劇場版は見てないんだけど、ちょっとはマシになったのだろうか。


 ナヴァール(アリアンロッド・サガ)

 というかリプレイのPCであるわけですがガガガ。
 他リプレイのGMがPCを務めることによって、やりたい放題に「先を見通した」軍師プレイが可能という、ここに列挙した中でも屈指のチート・オブ・チートキャラ。社長自重すれw


 オマケ ~キャラの知能格差について~

 ネット界隈でよく言われる言葉として、「○○を持ち上げるために周りがアホみたいに描かれる」というのが挙げられますが、一応、これについて擁護しておきたい。
 基本、作中の登場人物を動かすのは作者であるわけで、それはつまり、全ての登場人物は、作者と脳味噌を共有しているということでもあるわけです。つまり、本質的には知能に差が出るはずのない状況なわけ。
 しかし、それじゃあ話が進まないわけで、キャラクター間には知能格差を生じさせるというわけ。
 小野寺剛士・太公望ペアは、知能格差が発生する理由付けを図り、不自然さを緩和させた例といえますね。
 他に、この状況を避ける策としては、あらかじめTRPGセッションとして収録して、それを元に書くという手法もあります。要は、プレイヤーという外部メモリの力を借りるわけですね。



 適当に考えだけ書いて、まとめずに終わる。

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by ejison2005 | 2010-11-05 21:31 | 漫画
作品モチーフに関する考察 ロボットモノ編
 以前、このような記事を書いたんですが、今回はそれの補足と言うか続編というか、そんな感じの内容です。
 ぼけっとした頭で書いてるので、ちょっとまとまりのない記事になるであろうことは最初に謝っておきます。


 さて、長々と前置きを書いたりしても仕方がないので、とっとと本題へ移りますが、今回触れたいのは、前回書いた事例があてはまらないジャンルに関してのことです。まあ、ジャンルというか、記事のタイトルにある通りロボットモノのアニメ・漫画・ノベルに関してのことなんだけどね。この場合、ロボットの定義はあれです。巨大なやつ。

 前回の記事を読んだ賢明なる読者諸兄ならば、ここまで書いた時点でもうお気づきだと思うんですが、うん……ぶっちゃけ当てはまらないよね……ロボットモノ。正確には、当てはまらないというより、前回の記事の論調でいくならば、ロボットモノの大半は否定してしかるべき存在になってしまうということですが。

 だって、ロボットでやる必要ない話ですから!

 例であげるなら、

 ガンダム
 リアルな戦争したいなら戦車でやれ!

 マクロス
 アイドルと宇宙戦闘機でよくね?

 ゾイド
 ポケモンゲットだぜ!

 ということになってしまいます。まったくもって身も蓋ないですね。
 ロボットというモチーフを活かしているのは、せいぜいが、最初に巨大ロボットとの共闘という方向性を打ち出した鉄人28号や、有人式巨大ロボットという道を生んだマジンガーZくらいでしょうか。暴論だけどね。
 その他の作品は、ロボットというモチーフに別種のテーマを持ち込んでいる場合が多く(それこそマクロスなら歌とか)、基本的には、そのテーマでやるんならやるなりの、もっと素直な切り口がある作品ばかりになってしまいます。

 ではなぜ、こうも大量にロボットモノが作られていったのか。
 いくつかの理由があるでしょうが、まあ、最たるものはこれでしょう。

 商業的な理由

 スーパー戦隊が毎年毎年律儀に新しいロボットを登場させることから分かる通り、ロボットの玩具は売れます。少なくとも、戦隊玩具の中ではぶっちぎりです。だからこそ、毎度毎度新しい切り口で複数のロボットを出してくるわけで、その究極到達点のひとつが、ロボットを日常パートで深く介入させるに至ったゴーオンジャーなのでしょう。
 特に、そういった玩具の売り上げが良好だった(知ったかぶりである)昔はそれが顕著で、何せ、スポンサーが付かなきゃ作品は作れもしないわけで、当然ながら作られる作品はスポンサーの商品(ロボット玩具)を前面に押し出した代物になってしまうわけです。
 要は、戦隊や仮面ライダーが毎年同じフォーマットで違うテーマの作品を作るのと同じようなもんで、最初に商業的な理由によるフォーマットありきな作品群というわけですね。で、そういった玩具があまり売れない現代においてはロボットモノのアニメが減少していると。
 ロボットモノの作品といえばほとんどアニメに限られてしまうのも、これが理由なんでしょうかね。中には週刊少年漫画誌で連載されていたパトレイバーなんていう例外もありますが、あれは別にゆうきまさみ先生単独での企画ではないし。押井監督に至っては重機的なアプローチでやりたかったというオチであるし。
 他には、ラインバレルとかブレイクブレイドとか、ラノベ枠で先日完結したフルメタルパニックとかランブルフィッシュとかがあるのかな。
 とにかく、メディアミックス展開等以外の、最初から独立した作品として作られた漫画・ノベル作品はそう多くはないわけで、ロボットモノというのが、いかに商業的な理由で作られた作品群であるかという結論に至るわけです。


 で、ここまで長々と悪口を書き連ねて結局何がいいたかったのかといえば……何が言いたかったんだろうw まあ、とりとめなく考えてたことを明文化するためにまとめただけだからなあ。
 ああ、新しく漫画家やら何やらを目指す人は、ロボットモノに憧れる気持ちは分かるけど、あれは商業的な理由ありきで作られたものがほとんどだから、やめといた方がいいぞ、という結論は出せるな。どうしてもやりたければ、スポンサーに営業かけてバックとなってもらうとかした方がいい。もしくは、ロボットを出す必然的な理由(テーマ)を盛り込むとか……例えばラインバレルはロボットモノの主人公に憧れる厨二病患者少年の成長劇なわけで、幼き日の早瀬少年の前に降り立ったのがラインバレルではなくガンタンクだったら話は成立しないわけだし。フルメタルパニックやランブルフィッシュは、不相応に進み過ぎた技術力の象徴がロボットなんだったっけ?
 まあ、そんな結論が出せたところで、だから何? という感じだけど。やっぱり、最初に考えをまとめとかないといかんなあ。


 え? それで結局、お前はロボットモノ嫌いなのかって……?


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by ejison2005 | 2010-08-28 02:11 | 漫画
高杉さん家のおべんとう レビュー

高杉さん家のおべんとう 1

柳原 望 / メディアファクトリー


 お弁当……! それは魅惑溢れる小宇宙!
 お弁当……! それはひとつの絆の証!

 本日ご紹介する「高杉さん家のおべんとう」は、そんなお弁当をテーマにしたラブコメ漫画です。

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 ん? 作るのは男だけど何か?


 あらすじ

 博士号(地理学)持ちのフリーター主人公(31)に、突然中一超美少女の義娘ができたよ!




















 それなんてエロゲ?


 モチーフたる「弁当」の使い方が抜群に上手い

 まあ、そんなわけで「ニュー速でやれ!」と言わんばかりの境遇となった主人公と、その義娘さんとが徐々に徐々にその絆を深めていくというお話なのですが、その作劇において、何よりも目を引くのが、タイトルにも抜擢されている「弁当」というアイテムの使い方です。

 これがね、非常に上手い。

 といっても、どこぞのグルメ漫画よろしく「来週……同じ時間に来てください、本当の弁当をご馳走しましょう」「なんちゅうもんを食べさせてくれるんや! これは弁当の革命や!」という展開になったり、弁当同士で味比べを行ったり、スーパーの半額弁当を巡って血で血を洗う激闘を繰り広げたりするわけではもちろんなく、ごく普通に主人公が弁当を義娘さんに持たせてあげるだけです。それだけで全てのあらすじが完結してしまう漫画。

 とはいえ、主人公の調理スキルはゼロに限りなく近い状態なため、義娘の口に合う弁当を作るため、彼は東奔西走する羽目になります。
 つまり、義娘との間に存在する溝を埋めるため、非常な苦労を負うことになるわけです。

 ここがいい!

 当然ながら、義娘さんはそんな主人公の苦労を察してドキがムネムネしちゃったりするわけですが、それというのも、全ては弁当が上手いからではなく、それに込められた主人公の心を感じ取ってのことなのです。

 言うなれば、重要なのはあくまで二人がお互い苦労しながら絆を育んでいくことであって、弁当はそれによって生まれた結果に過ぎないということですね。

 弁当など作ったことのない主人公が、空の弁当箱を覚えたおかずで埋めていき、その彩りが豊かになっていく様を使って、二人の仲が深まっていることを、視覚的にも物語的にも大変分かりやすく表現しているわけです。

 弁当といえば、
・離れたところで食べる
・普通は親しい者が作る
・作るのはメンドイ
 といった要素が思い浮かんでくるわけですが、この漫画はそれらのキーワードを上手く物語に活かし、年齢も食べる場所も離れた二人の間を繋ぐアイテムとして、有効活用していると言えるでしょう。


 小難しい理屈は置いといて義娘さんが可愛い

 さて、色々と理屈を並べてみましたが、ラブコメである以上、何よりも大切なのはヒロインのキャラクターです。ぶっちゃけ、これさえ立派なものならどんな糞作品でも(ry

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 女性漫画家の作品ということで、本作は極めて少女漫画的なタッチで描かれていくわけですが、まず外見が可愛い。すごい可愛い。

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 人付き合いが苦手でもちゃんと相手を思いやる辺りとか、いいね。すごくいいね!

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 スーパーのお買い得品チェックとか欠かさない辺り、おい主人公テメー俺と代われ!


 まとめ

 そんなわけで、とにかくヒロインが可愛い。超可愛い「高杉さん家のおべんとう」。ヒロインが可愛いので、皆さん、ぜひ一度お手に取ってみてください。

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by ejison2005 | 2010-07-25 05:24 | 漫画
続・鉄腕バーディー 感想

鉄腕バーディー 1 (ヤングサンデーコミックス)

ゆうき まさみ / 小学館


 前回の続き。今回は各巻ごとに感想書いてみました。


11巻

 ネーチャンを救出に行ったり、OBのおじさんが忘れたころに再登場したり、ラスボスが超絶油断した状態で主人公と一緒に飯食ったりするお話。ところで、つとむのお世話係に任命されたこのかわい子ちゃんはレギュラーに昇格しないのですか? そうですか……。

 正直な話、ネーチャンは後々になって人間を捨てたりすることもなく普通に日常生活へ回帰し、オンディーヌとの決着もつかず、ラスボスとはノーテンキに五穀米をつっついてるわけで、話が進んでないにも程がある気がするわけですが、それでも、興味を持続させ続けるのはゆうき先生の実力なのか、はたまた俺が単行本一気読みしているからなのか……。

 まあー、ラスボスに一宿一飯(後にそれどころのではなくなるが)の恩を受けるとか、シチュエーション的な面白さはあるんで、そこに引っぱられている気はしますね。ここら辺は、俯瞰した視点から各勢力に関して描いてきた本作ならではの面白さ。普通の作品なら、後々になって「えー! あの時の教主さんがレビだったの!?」と、主人公共々に読者が驚いて終わると思うし。
 あとはまあ、レビの人間性を描いたという意味では重要なエピソードかもしれない。ゴメスさんもそうだけど、皆さん、複雑ですなあ。

 そして全然関係ないけど、「てえへんだあ」「野郎、ずらかる気か!」などの定番ネタにほっこりした。


12巻

 ええい! バーディーとか早宮とかもうどうでもいい! つとむを着がえさせたというこの娘さんをヒロインに据えぬか! (地団駄)

 13巻にも言えることだけど、バーディーの過去編は確かに悲しいお話だし、犬のお友達とか、一部、後々になって拾われている部分はあるけど、基本的には停滞しか感じないのでありました。や、現在が既に確定している以上、過去語りなんてのはどうしたってそうなるもんなのですが。仕方ないね。

 ところで、美少女を下着同然の格好で生活させる惑星にはどうやったら移住できるのですか?


13巻

 ヴァイオリンの強さにビックリな巻。例えるなら、ポケットなしのドラえもんが素手でバイオレンスな殺戮を開始したかのような……お前、そんなに強かったのかよ!

 んー、そんくらいです。過去回想はあんまり好きじゃないからなー。この巻で張られたバーディー狂戦士化への伏線も、氷川戦でちょいと芽吹いただけですし。あんまり思うことはないや。

 まあ、いずれやるのであろう、「バーディーの狂戦士化を抑えるつとむ」イベントへの前振りだと思っておきましょう。それは作品テーマ的にも最重要エピソードとなるはずだから、その暁には、この過去回想も有意義なものへと生まれ変わるはず。

 どうでもいいけど、警部・ザ・役立たずだったメギウス警部は、この過去回想でずいぶんと株を取り戻してますね。


14巻

 時間軸は戻るよ現在へ~。千明君の厨二病っぷりが素敵です。修行編にまで突入する徹底ぶり。だから、お前は登場する漫画を間違えていると何度言えば(ry

 本編ですが、これまでは基本的につとむの成長と覚悟を描く物語だったのが、バーディー主体のそれに変わってきている感じ。ここら辺、過去回想でどういう過去を背負っているのか描写されたのが大きいのかもしれない。

 そしてゴメス無双も再び。キャーゴメスサンカッコイー!
 ケダモノ軍団を気持ち良くボコるだけでは飽き足らず、千明君婿養子化計画も着々と進行していたのである。それにしても、「息子ですよ。妻そっくりなんですがね」と言うコマのゴメスさんは男前ですな。


15巻

 殺しの覚悟。讃良ちゃんカワユスなあ。
 現地人同士の争いには~なんて言い方だからピンときづらいけど、バーディーの立場からしたらこれ、ウルトラマンが犯罪組織のアジトを踏みつぶすようなもんなんですよね。そりゃ、躊躇もする。クラーク・ケントなんかと違い、地球に骨を埋める気もないわけだし。
 そんなわけで、これ、実は相当に重たいテーマなんだよね。それを、ただ重たいままに垂れ流すのは簡単(でもないけど)だろうけど、あえて軽妙に描き切るゆうき先生流石っす。

 そしてスーパーゴメスデート! キャーゴメスサンカッコイー!
 しかし、今回はバーディーがアホの子だったがために、過去最大のダメージを受けることになってしまうのだった。夫婦仲的な意味で。
 徒手空拳で云々とか年齢から察するに、過去回想内で元軍人のアルタ人が見たというイクシオラはゴメスさんで確定ですかね。

 一方、千明君は男の娘にフラグを立てていた。


16巻

 氷川さんボッシュートの巻。これで勢力がひとつ減り、大分状況が分かりやすくなりましたなあ。でも、悲しいかな。20巻までだと、あとは温泉編と宇宙誘拐編で終わりなのよね。

 結局、バーディーはトドメを刺さなかったけど、まあ、致命傷は与えたんだから似たようなもんだわな。前述の通り、バーディーからしてみれば氷川殺しは到底許容できないものなわけで、それを飲み込んだ上で行うのだから、当然責任を持って殺さなければならなかった。つとむは無責任なようで、ちゃんと正論吐いてると思う。まあ、問題はこいつも半分当事者であることなんだが。

 で、リーさん率いるケダモノーズも全滅。リーさんに関してはハッキリ描かれてないけど、これ、キッチリ殺っちゃったんですかね? まあ、生きてたところで、組織の後ろ盾もなく薬も残り少ない彼女に何ができるんだって話なんですが。あ、いや、薬に関しては千明君同様に特異体質っぽいからどうにかなるっぽいのか。
 なんかゴメスさんの性格的に、手札として生け捕りになってそうな気はしますね。

 そして、後半からは温泉編スタート。事件そのものはあんまり進展しないため、何とも箸休め感の漂うエピソードとなっています。


17巻

 入浴着は逆にエロいと思わんかね?

 そんなわけで、箸休めは続く。バーディーさんは怪獣退治の専門家やでえ!
 まあ、続く宇宙誘拐編への前振りとして、同級生につとむへの不信感を抱かせる役割は果たしてます。


18巻

 力の1号(バーディー)に対し、技の2号(紅葉さん)登場! THE FIRST方式ですな。

 疑似人格さん達との押し問答は、まあ、ハッキリ言って茶番以外の何物でもないわけですが、地球上に築かれたネットワークがいかにカビ臭いもんであるかの描写にはなっているのかもしれない。

 回収された残骸は、後々で本筋の事件に影響してくるんですかね。


19巻

 宇宙誘拐編開始。
 読んでる時、現地で窃盗を働くわ、警官を射殺するわで、この水兵の皆さんはどんだけ無能なんだよと思ったもんだけど、後々、「訓練も何もしてないド素人です」と理由付けされていて笑った。

 そこら辺もそうだし、艦長とかクレドの上司とかもそうだけど、味方組織が本気出して捜査しちゃうと、あっという間に漫画が終わってしまうため、基本的に味方側NPCは駄目駄目ですなあ。


20巻

 続・男の戦い。ウルトラマンメビウスで例えると、タロウ客演回辺りのエピソード。すなわち正体バレ。それにしても、ただ打ち付けるだけではなく、イチモツに巻きつける程の繊細な動きを可能にするとわ……この鞭男、出来る……!

 氷川戦辺りでは大分バーディー寄りになっていた物語ですが、ここへきて、俄然つとむが主役らしくなった感じ。男の仕事の八割は決断で後はおまけみたいなもんらしいですが、それは物語においても同じで、およそあらゆるフィクションは、主人公が悩み決断する過程を描いたものであるわけです。つまり、ここがこの漫画で最も盛り上がる場面(のひとつ)であるはず。それを描いた直後に雑誌廃刊っていうのは、何とも皮肉なものですな。

 そんなわけで、終始ハイテンションを保っていたわけですが、残念なところもあって、それは主にニエトさんの仕事によるもの。つとむがバーディーと繋がってると知った上で拷問したり、宇宙船内で躊躇なく発砲したり、果ては爆破しちゃったりと、どうにもこうにも行動に無理がある気がする。

 部下を掌握しきれてないことで、株を下げっぱなしの味方組織ですが、真実を知った艦長の殊勝な態度によって、少しは持ち直したところがあるかもしれない。これがないと、本当にただのいけすかないダメな人達だからね。上手いフォローだったと思う。ステロタイプの嫌な役人としてではなく、人間性を垣間見せた上で散れたし。

 そして、無印ラストエピソードはまさかの発情期ネタw 今まで、そこら辺の処理はどうしていたんだろうと思ってたけど、基本がバーディーの体だから衝動自体が起こらなかったのね。


まとめ

 そんなわけで、小賢しく情報を小出しにして引っ張るのではなく、読者にある程度それを伝えた上で、各キャラクターの心情と行動、それにともなう状況の変化を描き抜いてきた良作でした。

 ただ、ここまでかなりの紙数を割いてるのに、本筋の事件に関する捜査は遅々として進んでないのが気にはなります。結局、ここまでの成果らしい成果は氷川と彼にまつわる組織を壊滅させたくらいだもんな。

 新シリーズの方では、そちらの進展を期待したい。

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by ejison2005 | 2010-06-25 01:27 | 漫画