崖の上のポニョ レビュー
用事で新宿まで出かけたので、ついでにバルト9崖の上のポニョを見てきました。どうでもいいけどこの映画館、本編が始まるまでの予告がクソ長くてイライラするなあ。設備はいいんだけど。
そういうわけで、せっかくだからレビューしておくよ。


微妙にネタバレあり!


ところで、本作の監督である宮崎駿といえばスタジオジブリであり、スタジオジブリといえば駿監督の息子が作った前作のアレっぷりが記憶に新しいです。
果たして、パパ宮崎は息子の汚名を挽回できたのか……!
結論からいうと、枕を並べて討ち死にだったんだけどね(´・ω・`)


☆ストーリー☆
――アタシの名前はブリュンヒルデ。心に傷を負った人面魚。モテカワスリムで恋愛体質の愛されガール♪
全員で顔を寄せ合うシーンが、あまりにキモくてブラクラにしか見えないくらい数が多い妹達がいても、やっぱり海の中はタイクツ。今日もパパとちょっとしたことで口喧嘩になった。
サカナ同士だとこんなこともあるからストレスが溜まるよね☆ そんな時アタシは一人で地上へ家出することにしている。
がんばった自分へのご褒美ってやつ? 自分らしさの演出とも言うかな!
「あームカツク」……。そんなことをつぶやきながらクラゲに乗って海上へ出る。海底を掃除する船は嫌いだ。素で生命の危険を感じるし。
うっかりビン詰めになっていると、人間の男の子に助けられた。
「……!!」
……チガウ……海底のサカナとは何かが決定的に違う!
添い遂げるため人間になった。それが原因で天変地異が起こった。
バッシャバシャ。地球は水没した。ジブリがいっぱい(笑)。

……後半ちょっと苦しいな。


☆感想☆
さて、この作品をひと言で表すのならば「子供映画」というところでしょうか。ただし、純粋につまらないだけの作品を「子供向け」と定義するならばな!

そう、色々と置いといて、この映画はつまらなすぎるんですよ。そりゃもう、ゲド戦記が名作に思えるくらいのレベル。

つまらない映画といっても種類は様々ですが、この映画の場合、最大の悪因はストーリーの平坦さにあるでしょう。とにもかくにも、起伏に欠けているのです。
それが特に顕著なのは、後半の主人公とポニョへ試練を与えるくだりで、恐るべきことにこのチャプター、「種族が違っていても主人公はポニョを愛せるのか?」という趣旨なのに、主人公が種族の壁に悩むイベントが全く存在しなかったりします。麺抜きのラーメンというか、ルーの無いカレーというか、作品のメインテーマを描くべき場面なのに、この気抜けっぷりはどういうことなんだろう。

悩んでいる描写が全く無いため、クライマックスの愛を確かめられるシーンでも、主人公が何も考えていないように見えるのは非常に痛いですね。そりゃ今は純粋無垢な子供だから正体サカナ娘でも愛せるだろうけど、この先十年二十年と経ったら考えを翻しちゃうんじゃねーの? と思ってしまう。それくらい彼の決意は軽い。軽すぎる。
というかこの主人公、愛という言葉の意味も理解していない気がするんだけど、和風人魚姫な本作の主人公がそんなので果たして良いのだろうか……。


そしてもうひとつ大きなマイナスポイントが、理解し難い展開の数々でしょう。
母親が息子も同乗している車で、特に必要もなく命がけのドライブを慣行するシーンはその最たるものですが、後半のボートに乗った若夫婦との会話シーンもなかなかのもの。
これ、簡単に説明すると母親を探して旅に出た主人公とポニョが、その途中で出会った若夫婦から赤ん坊というものがいかに弱く、守ってあげなければならない存在なのかを教えてもらうというイベントなのですが、別にそれが物語の展開に影響を与えることはありませんでしたからね。

いかにも意味ありげなシーンだったので、きっと宮崎監督は何らかのメッセージを込めて挿入しているんだと思うけども、ストーリー全体の中で明らかに浮いてしまっているために、何ともスッキリしない感覚だけを受け手に残します。

作品テーマをダラダラと台詞だけで語り切った息子さんの作品も相当なもんでしたが、何らかの暗喩を込めればそれでいいというもんでもないんですよ。

また、(これは僕の理解力が足りないのも原因かもしれませんが)地球水没のくだりでは、その原因がポニョの人間化にあると気付くまでにかなりの時間を要しました。おそらく、「何故、ポニョが人間になると月が地球へ近付くのか」を説明していないのが原因だと思います。


☆宮崎監督は何をやりたかったのか?☆
一度は一線を退いた宮崎監督がわざわざカムバックして作り上げた本作。巨匠がそこまでして作り上げたからには、きっとかなり壮大な目標が存在したと思うんですよ。
実際、こちらのサイトでレビュられている通り、「死」を想起させる要素が妙に多いですしね。

しかし、惜しむらくは感想の項目で触れた通り、それが作品内で上手く消化できておらず、単に受け手を置き去りにするだけの結果に終わっている点。
例えば、エヴァなんかよく深読みされる作品ですけれども、あれはそれ以前にエンターテイメントとして完成されていますからね。自分のやりたい事をやるのは勝手だけど、受け手を楽しませずにそれだけやったって、ますます評価を下げていくだけだと思う。


……と、いうよりもね。僕が思うに、これらの要素には特に何のメッセージ性も込められていないんじゃないかな。
だってこの映画、今まで僕達がジブリ作品から受けてきたイメージによるフィルターを外したら、ただ単に起承転結が成立していない、子供向けの上っ面を被せただけの純然たる手抜き作品ですからね。いっちゃ悪いけど、「子供向けということにしておけば多少つまらなくても許してくれるだろう」という、安易さすら感じ取れましたよ。


宮崎駿がゲド戦記を見た時の動画があるんだけど、彼は当時の自分が発言した台詞の内容を思い出した方がいいと思うな。
ナイスブーメランというか、吐いたツバ飲み込みまくりだと思いますよ。今回。


最後に、一見するとハッピーエンドな本作ですが、人類滅亡を企てていたポニョの親父がそれを悔いることなく終わってしまったため、またしばらくしたら人類根絶計画の再建に取りかかるんだろうなあと思いました。
こういうところでも詰めが甘い。甘すぎる。

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by ejison2005 | 2008-08-10 04:45 | 映画