「面白い少年漫画」とは何ぞや?
「面白い少年漫画」の定義も変わったなあ……と強く思います。


ちなみに、少年漫画といっても定義は星の数程あるのですが、僕が連想する少年漫画のスタンダードというのは、かの大名作ドラゴンボールにほかなりませんね。
すなわち、ストーリー上の大仕掛けは用意せず、常に新たな強敵が立ち塞がり、主人公はその打倒を目指す、というタイプの漫画です。こういった種類の作品が、登場しなくなって久しい。

とはいえ、時勢というのもあるとは思うんですけどね。面白さってのは変動するものだと思う。昔大ヒットした作品を今まったく同じまま連載したとしても、決して人気は獲得できないでしょう。


ならば、現代における「面白い少年漫画」とはどういった作品なのか……今日はその辺、ちょっと真面目に語ってみちゃうよ!


さて、上の文章内で僕は「昔大ヒットした作品を今まったく同じまま連載したとしても、決して人気は獲得できない」と書いたわけですが、だったらどうすればいいの? という話ですよね。
そこで、ここ十年ばかりのヒット作を見直してみると、ある二つの要素のうち、どちらかが(あるいは両方が)存在しているというパターンが非常に多いことに気がつきました。

ひと昔前の漫画界において、主人公及びその周辺人物の強さとは、それに見合った期間の努力で掴み取るものでした。いわゆる、「努力・そして勝利」の構図ですね(友情忘れてた)。

現在のヒット作においても、もちろんこれらは欠かせない要因なのですが、それに加えて「努力が介在しない強さ」「組織的に動く登場人物達」というのも必要不可欠な要素となりつつあるのです。

と、いうのもですね。現代の読者は、とかく「早期の刺激」と「リアリティ」を求めるものなんですよ。これは僕個人の趣向とかだけではなく、もっと広い視野に立ってもそうだと思う。

それは、読者がせっかちになってきたりスレてきたりというのもあるにはありますが、もっと大きな問題として、昔の漫画が打ち立ててきたテンプレ通りに作劇したとしても、決してオリジナルを超えることはできないというのが大きいです。
海原雄山の言葉を借りるのなら、「ピカソに絵を習ったからといって、ピカソと同じ絵を描いても仕方がない」というところですね。

で、偉大な先人達を超えるため、作品への付加価値として近代の漫画家が生み出したシステムが、「努力が介在しない強さ」「組織的に動く登場人物達」なのです。
「努力が介在しない強さ」というのは、「主人公が倒すべき敵ではない強キャラ」と読み替えてもいいですね。要するに、最初から強い登場人物のことです。

先に「努力が介在しない強さ」について解説しておくと、最初からクソ強い登場人物を味方なり第三勢力なりへ配置することによって、話に厚みをつけられます。彼らが行動を起こすシーンは、否が応でも緊張感が沸きますから。

何より彼らのバトルを要所要所で挿入することによって、お手軽に読者へカタルシスを与えられるのですね。まだまだ主人公達が未熟なうちから、はるか上のランクでのバトルシーンを提供できるわけです。

また、主人公が強さの頂点に立つという方式でストーリーを構築した場合、それこそドラゴンボールのようなインフレ地獄へと突入してしまうわけですが、この方式を用いれば主人公以上の強敵が散見する世界観を構築可能なわけです。

もうひとつの利点として、「強キャラをさらに上回る強キャラ」という足し算方式で強さの表現を行った過去作と違い、この方式は「強キャラをどの程度下回っているか」という引き算方式でキャラクターの強さが算出可能なため、登場人物のベジータ化を防げるというのもあります。いや、僕は王子大好きだけどな!

「組織的に動く登場人物達」というのは字のまんまです。近年のヒット作には、登場人物が組織的なバックアップを受けて行動するというパターンが非常に多く、それがリアリティを向上させている。

ま、これは分かりやすいですね。現実の社会において何らかの組織に属さないものなどほぼ存在しないわけですから、登場人物達がそういった援助を受けようとするのは自然な流れです。
というか、昔の漫画でも組織に所属するキャラは多かったんで、こちらに関してはそういった要素が強化された、という書き方をした方がいいかもしれない。

これにもやっぱりインフレ問題が関わってくるわけなんだけど、「強キャラをさらに上回る強キャラ」の足し算方式で話をつないでいった場合、あっという間にごくわずかな中心人物だけが飛びぬけて強くなってしまうため、その他の登場人物はモブと化して一生懸命に応援するか、情報収集でもするくらいしかやることがないんですよね。

もちろん、それはそれで活躍ではあるし、見せ場だと思うんだけど、やっぱり、少年漫画っていうのはバトルに参加してナンボだというのも本当のところだし、参戦していなければ見ている側の印象も薄いです。

しかし、近年頻繁に採用されるようになった「強キャラをどの程度下回っているか」の引き算方式ならば、登場人物達はある程度団子状態の強さで推移していけるため、お互いに協力しあいながらのバトルという展開が、実現しやすくなったということでしょう。


要するに、ここ十年近くの少年漫画の歴史はそのまま「いかにしてインフレを防ぎ、かつインフレ展開の面白さだけは抽出するか」腐心してきた歴史でもあるということです。

そして、それに成功してきた作品こそが現代における「面白い少年漫画」ということでしょう。
うむ! 我ながら独断と偏見に満ちてるしバトル漫画以外のジャンルには全く触れていないが、そんなの気にしないぜ!


注:ちなみに今回、意図して能力バトル漫画には触れませんでした。理由は、真面目に能力の特殊性だけで勝負してる漫画ってほとんど無い(能力者本人のスピードとかパワーも重要な作品が大半)から。

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by ejison2005 | 2008-06-28 18:12 | 漫画