続・ジャンプ編集長の発言について考える
本項は、前に書いた記事の補足です。

さて、ニュースサイト様とかに紹介して頂いた影響か、コメントで様々な意見を頂いたので、それを元に考察を深めてみようと思います。
まず最初に語っておきますが、

僕はアンケート&十週打ち切りシステムが悪だとは考えていませんが、現状には即していないと思っています。

アンケート&十週打ち切りシステムの長所と短所については、かがみさんが分かりやすく解説してくれてるのでそちらを参照して頂きましょう。嫌ってる人も多いとは思いますが、これがあるからこそ黄金期も生まれたわけで、そう一概に否定すべきものではありません。
しかし、現在の状況には全く適していないと僕には思えます。その理由を、ひとつひとつ解説していきましょう。

かがみさんが語ってくれてる様に、アンケート&十週打ち切りシステム最大の利点は、マシンガンの様に次々と漫画家を輩出していく、回転率の良さにあります。
「序盤に伏線を張りまくるタイプの漫画を描けない」などの短所は確かに存在しますが、「読者からの投票」というそれなりに公平な立場に新人達を置いて、次々とデビューさせる事が可能なのですね。
ジャンプという日本では最大規模のプラットフォームでより多くの人間にチャンスを回しているわけで、腕に覚えのある人間にとってはこれ以上に魅力的な漫画雑誌は存在しないといえるでしょう。
が、それは正常にこのシステムが機能している場合のお話。

ちょっとこの画像を見てください。

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小さくなってしまって申し訳ありません。エキサイトブログじゃ(何故か)これが精一杯。関係ない話ですが、To LOVEる布教コラではいつもこのサイズ制限で苦労してます。どうにかしてくれ。
ちょっと話が横道に逸れてしまいましたが、これは07年25号のジャンプ巻末目次の中で、積極的に編集部から保護を受けている(と思われる)作品を赤く塗りつぶしたものです。
具体的な作品名を述べると、
「ONE PIECE」、「アイシールド21」、「NARUTO」、「家庭教師ヒットマンREBORN!」、「BLEACH」、「銀魂」、「ラルΩグラド」、「こちら葛飾区亀有公園前派出所」、「D.Gray-man」、「ピューと吹く! ジャガー」
の合計十作品ですね。「テニスの王子様」は混ぜるべきかどうか悩みましたが、今回は除外しました。
こち亀を除いたこれらの作品に共通しているのは、アニメが放映中または放映予定であるという事です。
尚、ジャガーは次号でアニメ化が発表されるという情報が、あちこちで飛び交っているので加えさせていただきました。ネタバレを不快に思われた方には、深く謝罪させて頂きます。
通常、アニメが放送中の作品はメディアミックスを前面に押し出し、(人気を掴んだからこそアニメ化されるわけで、そこにやっかみを入れるのはお門違いである事を承知の上であえて書きますが)編集部からの手厚い保護を受けられる事が予想されます。
常識的に考えれば、アニメと連動して一気に稼ぐ事を狙いますからね。「武装錬金」みたいなのは蝶特殊な例です。
さらに、当たり前の話ですがアニメ化されればその漫画の人気が一層高まる事が予想されます。

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これまでノーマークだった作品に関してアニメ化を契機に知り、ファンになったという人は多いと思いますが、それほどまでにマスメディアの力というのは偉大なのです。
そうやって人気が人気を呼び、富める者はますます富み、格差は広がっていくわけですね。資本主義的なシステムの常です。

おっと、また話が横道に逸れてしまいました。
プロテクションを受けてるとおぼしき作品に関する話に戻りますが、最初の画像をパッと見て誰もが考えたと思うんだけど、その……まあ……多いよね。いくらなんでも。
現在、ジャンプで連載している作品は全部で二十一作品。そう、驚くべき事に誌面の半分をプロテクション枠が占めているのです。
子供の頃に誰もが経験したであろう椅子取りゲームを思い出して欲しいんですけど、席が少なくなればなるほど競争は激化します。こんな有様では、十週打ち切りシステム最大の売りである回転率の高さも出て行く方向にばっかり上がってしまい、残る方へはちっとも作用しません。
さらに、アンケートの方もメディアミックス作用で「富める者はますます富んでいく」状態の作品が誌面の半分を占めている状況では、真っ当に機能しているのか疑問符がつくところです。

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アンケートはがきを見てもらえば分かりますが、ジャンプのアンケートシステムは好きな作品を順に三つずつ書いていく仕様ですからね。
これだけの作品がアニメ化されていると、そちらの方にばかり票が集まってしまう状況が予想されるのです。
ぶっちゃけ、それらの作品は編集部的には「アニメ化にかかったお金の元を取るために、意地でも売り出していかねばならない」存在です。
つまり、プロテクション枠に関しては、実際に人気があるのかどうかを知る必要が無いとまで考える事ができるのですね。極論ですが、人気の有無を知る必要があるのは、プロテクションを受けていない残りの十一作品に関してだけです。
にも関わらず、票の大半はプロテクション枠に集まっていくという……。
これならば、打ち切って欲しい作品を順に三つずつ書いてもらった方がはるかにデータとして有用な気がします。「好き」で語るのではなく、「嫌い」で語らなければならないこんな世の中じゃ……。

さらに、アンケート&十週打ち切りシステムのもうひとつの長所である、「マシンガンの様に次々と漫画家を輩出していく」という部分も、現状では機能してるとはいえません。
何故かといえばそれはあなた、編集長自身が語っている様に有望な新人がいないからです。
ここ数年の新連載を振り返ってみても、それは明らかですよね。「斬」が連載されるなんて、本来なら漫画史に残るほどの大事件ですよ。いや僕はあの漫画好きだけども。
「下手な鉄砲を数撃って当てる」ためには弾丸をガンガン込めていかなければならないわけで、銃弾が少ない時に選んで良い戦法ではないのですよ。

「現状のジャンプに、アンケート&十週打ち切りシステムは不適切である」という僕の主張を説明し終えたところで、ではどうすればいいのか? という部分に話を移しましょう。
僕としては、前回の記事にも書いた通り、「あと二~三年くらいは上を目指さず、つまらないジャンプにするしかない。最底辺の売り上げになるしかない」と考えています。
ちょっと抽象的すぎる文章なので、反省してもっと具体的に述べると、「どんなにクソつまらない作品でも、とりあえず一年くらいは保護しようよ」という事です。
つまり、あえて回転率を悪くするわけですね。
これはどこの企業でもそうですが、即戦力になる人材というのはそうそう手に入るものではありません。では、即戦力にならない人材に対して企業はどうするのか……。
答えは簡単、育てるのです。教育するのです。
有能な人材を駆使して良い成績を残す。そんな事は、相当な無能でない限り誰でもできます。
管理職の評価というものは、普通の人材をいかに使って成果を出させるかによって決まるのですよ。
問題は、前の記事でも書いた通りに漫画雑誌だとそれが業績に直接響いて、編集長がほぼ確実にクビを宣告される事なんだけどね。
ちなみに、「どんなにクソつまらない作品でも」というのは必須部分です。「やっぱりこれは駄目っぽいから~」とかダブルスタンダードな事をやってると、これまでのシステムを敬遠していた新人層が取り込めませんから。

最後に、「果たしてジャンプの待遇は悪いのか?」という問題について語りましょう。
これに関しては、前回の記事のコメント欄にジャンプ作家の新人さんとおぼしき方が、「一新人」という名でコメントして下さっているので、せっかくですから引用させて頂きましょう。

>>ちなみに専属契約ですが、あれは半年契約のはずですよ。
>>新人でも大体契約期間中普通に食っていけるだけの金額は貰えますし
>>連載作家だともっと貰えるので、契約続く限りそれで生活には困らないかと。


また、かがみさんもコメントを入れてくだださっているので、そちらも引用しておきます。

>>なんかどうも専属契約の話は都市伝説っぽいですよ。
>>いや、実際あるんだけど、そんな悪いもんじゃなくて、むしろ打ち切りのための保証金みたいな感じらしいです。
>>まあ、どっかで聞いただけの僕なんかより一新人さんの方が信憑性があるだろうけど。
>あと、連載中にどのくらいお金かかるのか分からないけど、必ず単行本を出してくれるジャンプは、単行本の売り上げで大分ペイできると思いますよ。
>>単行本一冊で少なくとも100万は入ると思うので。(ジャンプの規模を考えると200万以上だと思う)
>>むしろ、秋田書店はどうやってるのかと思う。あそこ、売れない漫画は単行本出さないからなあ。


どうやら、冷静に考えてそんなに労働条件は悪くないようです。僕は、見事なまでに都市伝説に踊らされていたわけですね。いい加減な事を書いて誠に申し訳ない。
ならば、僕にいえる事はただひとつです。

漫画雑誌の編集部は、もっと漫画家の収益に関する情報をオープンすべきなのではないでしょうか?

これはもう、ジャンプだけの問題ではありません。他の雑誌についてもいえます。
前々から思ってたけど、漫画家の生活ってちょっと知られなさすぎですよ。
給料・福利厚生などの細かい労働条件を記すのは、求人をする上での基本です。それが無ければ、目指す側も何を待遇に関する指針とすれば良いのかさっぱり分かりません。
契約期間中に貰える給金の額や、十週打ち切りを受けた場合の平均的な単行本による印税収入などを何らかの形で明示するだけで、割と状況は改善されると思うんだけどな。

ところで、僕が大学の就職セミナーで言われた事なんですけど、

給料や福利厚生に関して説明してない企業は、ちゃんとその点に関して質問しなさい。
その際、曖昧な答えを出す企業は何らかの問題を抱えている事が多いです。
後ろ暗いところの無い企業は、必ずそれらに関して説明してくれます。


だそうです。そしてこれは、一般的な認識でもあると思う。
そりゃ、悪い噂だって広まりますよ。広まるとも。

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by ejison2005 | 2007-05-25 06:36 | ジャンプ感想