犬マユゲでいこう レビュー
唐突ですが、僕はたまにこう考える時があります。
「何かを説明したり伝えたりするのに、最も優れた媒体は漫画なのではないか?」
……と。
いきなり何を言い出すのかと思うのでしょうが、実際問題として文章で長々とひとつの物事を描写するよりも、一枚絵でパッと見せられた方がはるかにイメージしやすいのが人間という生き物なわけで。
しかも、漫画は単なるイラストと違って絵と文章の二つを駆使する事のできる優れた媒体です。詰め込める情報量が半端じゃありません。
皆さんも、小学生の時に図書室で学研の漫画を読んで過ごした事のある人は多いでしょう。ちなみに、僕は世界の偉人シリーズが好きでした。
そういった、いわば「レビュー系漫画」とでも呼ぶべき作品の中で僕が最も愛している作品が、

犬マユゲでいこうソルプレーザ
石塚2祐子 / / 集英社
ISBN : 4087794180





本日ご紹介する「犬マユゲでいこう」です。


この漫画は月刊Vジャンプで連載しており、僕も毎週感想を書いている週間少年ジャンプの読者コーナーでイラストを担当したりしている石塚祐子先生のエッセイ的なスタイルをとっているのですが、特徴として実在のVジャン編集部員が極端に漫画的なキャラとしてデフォルメされて登場したり、架空のロボット等が登場したりしてドタバタコメディを展開するというものがあげられます。
特に、この漫画の二代目&現担当編集者であるイヨク青木こと伊能昭夫編集部員の扱い方はすさまじく、

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何故か編集長の地位を狙っている事にされていたり、何かとネタキャラ扱いされています。
で、イヨクさんや他の架空キャラと一緒に、

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ゲームの世界(上の画像は剣神ドラゴンクエスト)に潜り込んでドタバタギャグを繰り広げたり、ゲーム内容で理不尽に感じた部分へツッコミを入れたり(商業誌の連載作品としてはかなりロックな行為)してレビューとするのが本作の基本的なスタイルです。

……が、本作は石塚先生がまさに「やりたい放題やっている」漫画であり、真っ当なゲームレビューを行う事は滅多にありません。
どのくらいやりたい放題かというと、

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何の脈絡もなく10年以上も前のゲームボーイソフト(当然白黒)のレビューを行ったり、

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ぶっ飛んだ時には、何故か牧場へ行った体験談のレポートになったりもしています。くどいようですが、連載雑誌はVジャンプです。
商業誌で連載するという事は、当然ながら利益を生み出さなければならないわけで、そうなると自然に内容は大作ゲームのレビューになったりとかするものなのですが(参考文献:いい電子)、それを考えると本作はかなり同人作品的な気質を持っているといえるでしょう。
これは本作を語る上で非常に重要な事で、お知り合いのサイトでたまに書かれているのですが、創作物というのは全く同じ環境なら締め切りや内容的な誓約(例:ぺージ数)を受ける商業作品よりも、製作期間や内容的な誓約を受けずに好きなだけクオリティを高められる同人作品の方が、当たり前ですがより面白い作品として仕上がります。
ですが、当然ながら営利活動として会社の支援を受けたりできる商業作品と個人(又は有志の集まり)による同人活動では全く同じ環境を整えるなど不可能であり、通常はそこら辺が内容の差として出てくるわけですね。
が、犬マユは上でも書いた通りに同人作品的な性質がかなり強く、商業作品でありながら恐ろしく自由気ままな内容にする事を黙認されています。
当然、表現したい事を自由に描いた方が作り手も気合が入るわけで、そこら辺が他の作品にはない独特の味わいとクオリティの高さとなって表れているのです。

また、石塚先生のゲームを遊ぶ姿には共感できる部分が多く、

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例えば、名作ダンジョンRPGウィザードリィではキャラのグラフィックが表示されないのを逆手にとってパーティーメンバーに動物の名前をつけ、彼らが活躍する姿を妄想してみたり、

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「ゼルダの伝説時のオカリナ」(wiiのバーチャルコンソールで配信されてます)では、主人公リンクについてくる妖精ナビィを本気で剥がそうとしたり、自分なりの楽しさを開拓する事に余念がありません。
僕なんかはもう、感銘を受けまくりですね。
別に楽しんでいないわけではないんですけど、ここのところは「本気でゲームを遊んでいるか?」と聞かれたら、ノーと答えるしかない状態ですし。ゲーマー失格ですよ。
最近だとファイアーエムブレム 暁の女神感想)に、

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フリーダ様というビジュアル的にもクラス(女騎士)的にも僕の好み一直線なキャラがいたのですが、「弱いから」という理由でベンチウォーマーにしちゃってましたし。昔の自分なら、意地でも最前線で使い続けたはずです。
この漫画を読んでいると、ゲーマーというのは「ゲームを遊ぶ人間」ではなく「ゲームを楽しむ人間」である事を思い出させられるのですよ。


そんなこんなで、本作は石塚先生がやりたい放題したい放題にする姿を面白おかしく描いた漫画なのですが、ゲームを積極的に楽しもうとする姿に感嘆させられたりと、真の意味でゲーマーたらんとする人間には何気に深い味わいが得られたりもします。
最近、ゲームを遊んでいるのではなく、ゲームに遊ばれていると感じたりしている人なんかには、特にオススメしたい作品ですね。

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by ejison2005 | 2007-05-04 04:57 | 漫画 | Comments(8)
Commented by ポルカ at 2007-05-05 13:28 x
これほどまでに作者の趣味嗜好が反映された漫画は読んだことありません。まったく素晴らしいレビュー漫画です。
随分と昔から続いてますが、初代担当のナマさんが好きでした。新し物好きで知ったかぶりばかりするナマさんを、石塚先生が独自の視点からツッコみ、論破し、ねじ伏せる。まるで漫才を見ているようなノリが楽しかったです。
特に加賀百万石ネタなんか本当にばかばかしいんですが、腹がよじれるほど笑ってしまった記憶がありますね。
Commented by ejison2005 at 2007-05-06 01:44
>>ポルカさん
僕は単行本の第一巻を持ってないので(第二巻は持ってる)ナマさんに関するくだりは、あまり知らないんですよね。
ア・ティエンポでだいぶ救われましたが、どうせならきちんと復刊して欲しい。
Commented by JEX at 2008-12-15 13:43 x
牛のヤツ呼んだことあります!10年ぶりくらいにみたかもしれません。ずいぶんまた懐かしいですね。
Commented by ejison2005 at 2008-12-17 20:07
>>JEXさん
この漫画も息が長いですよねー。それでいて、クオリティが常に高いのは凄ェ!
Commented by カピバラさん at 2009-07-05 17:46 x
犬眉はまじ神まんがこれに勝るものはなし
Commented by ejison2005 at 2009-07-06 00:09
>>カピバラさん
エッセイってセンスが重要だと思うんだけど、この人は本当にセンスありますよね。
Commented by 透と百人の忍 at 2009-07-07 02:14 x
本屋に行ったら新刊出てて驚いた。もちろん買いました。
相変わらずスーファミネタとか最高です。

マイナーな作品だと思うので、丁寧なレビューをみつけてうれしかったです。
オツカレサマです。
Commented by ejison2005 at 2009-07-13 15:37
>>透と百人の忍さん
教えてくれてサンクスー! さっそく買いに行ったよ。
真理とヒグマを持ち上げるのは感動の名シーンだね!