バンブーブレード レビュー
剣道。
日本古来の剣術をスポーツ化した武道であり、空手・柔道などと並んでポピュラーな格闘技のひとつです。
ところで、皆さんは剣道を題材にした漫画と聞いて、何を思い浮かべるでしょうか?

旋風の橘 5―新・熱血剣道ストーリー!! (5)
猪熊 しのぶ / / 小学館
ISBN : 4091263852





うん……まあ……これを思い浮かべちゃうよね……。
知らない人のために説明すると、伝説のクソ漫画です。説明終わり。
サンデーが生み出した黒歴史の事は、とりあえず置いといて ミ□
本日ご紹介するのはこちら、

BAMBOO BLADE (1)
土塚 理弘 / / スクウェア・エニックス
ISBN : 4757515308





『BAMBOO BLADE』です。
さて、前フリからも分かる通りこの作品は剣道漫画なのですが、ぶっちゃけこの作品の見所は剣道シーンではありません。
というのも、この作品は学生スポーツ漫画としては非常に珍しい事に、主人公達がそれほど部活動に重きを置いてないんですね。
もちろん、毎日部活には出ますしそこでは真面目に練習をするのですが、それ以外の時間ではそれぞれ、

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趣味やバイトに埋没しています。
これ、読んでいてすごく感情移入のできる展開ですね。
スポーツ漫画の登場人物というものは、お前らそれ以外に考える事とか無いのか? と問いかけたくなるくらいに、人生の全てを懸けるのがセオリーです。
ですが、実際僕達が学生の時、そこまで部活に全力投球していたかというとそんな事はありません。
学校の試験だってありますし、読みたい漫画や見たいテレビ番組は尽きませんからね。
そういった点で、一般的なスポーツ漫画の登場人物というのは、現実とは一線を画したファンタジー世界の住人です。
ひたすら部活に打ち込むその姿は、雑念を捨てて荒行に挑む修験者の如し。そして、一般人には修験者の心境など理解できるものではありません。
この作品は、逆に部活動へ従事する割合を減らし、登場人物それぞれの欲望などをストレートに実行させる事で、人間臭い魅力を与えているわけです。
では続いて、主要登場人物について解説していきましょう。


・メインヒロイン タマちゃん

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メインヒロインにして、作中最強キャラ。
実家が道場だったためか、超高校級の実力を持っており、他校の監督(ちゃんと日々鍛錬していて強い)相手でも一本取っちゃたりします。
その存在を脅かす、恐るべきライバルが登場したりもしてないため、今のところ地位は微塵も揺らいでいません。

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ちなみに、無類のアニメ好きであり、DVDボックスを買うためにバイトをしたりもします。
剣道は普通に好きみたいだけど、別に青春の全ては懸けてないです。むしろ、アニメに懸けてます。
メインヒロインからして、剣道とある程度距離を置いた付き合いをしているのが、この作品のカラーを象徴してる気がするなあ。

・部長 キリノ

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この作品では珍しい、剣道一直線なキャラ。
というよりも、誰か一人くらい部活に打ち込むタイプの人がいないと話が進まないので、こういう設定になったんだと思います。
とはいえ、そこはこの作品らしく基本はまったり方針。

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本作の主人公であり、剣道部顧問でもあるコジローが一時の勢いで無駄にスパルタな練習をしようとすると、普通にツッコミを入れたりもしますし。

・ドS ミヤミヤ

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ヒロイン勢では唯一の彼氏持ち。剣道部に入った理由も、彼氏が剣道部に入ったからです。
当初はそれほど剣道を好きでも無かったけど、

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練習中Sに目覚め、部活もそれなりに熱意を持って取り組む様になりました。
この、『叩きたいから剣道をやる』という事からは、絶対にステロタイプな理由では剣道と関わらせないぞという作者の意地を感じます。
でも、あくまでも基準は彼氏。部活より何より、彼氏を優先します。
タマちゃんもそうなんだけど、この作品は剣道以外に打ち込む事があるキャラばっかりで、部活は部活、私生活は私生活とメリハリをつけて行動しているのがリアリティを感じますね。

・無軌道 サヤ

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剣道部に入った理由は不明。
自分に何ができるかを模索してるらしく、

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小説を書いたりギターを弾き始めたり、節操の無い行動を取ってます。
ちなみに、そっちの方が優先順位が高いらしく、物語スタート時には既に在籍してたのに2巻になるまで小説へ没頭して登場しませんでした。
でも、ぬるいので皆その事を怒ったりせず普通に迎えたり。
中学や高校の時、同じ様に自分の可能性を模索した人は多いでしょうけど、そういった意味で無駄に現実感がありますね。
この年代になると、急にギターの練習を始めたりするんだよなあ(笑)。

・東と書いてあずまと読むよ 東

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4巻目でやっと登場した、五人目。
剣道は小さい頃から好きだと本人も告げるものの、

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学力が全く足りないので部活をやってる場合では無いという。
学校生活>>>>>超えられない壁>>>>>レクリエーションである部活動
という、この作品の妙なシビアさを象徴するキャラかな。
仲間入りしないと、(団体戦に出られないから)話が進まないんですけど、作風から考えると剣道部に入ったとしても塾とかを優先気味にする気がします。

・主人公 コジロー

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この作品の主人公にして、剣道部顧問。
その指導方針は、部活なんだから無理して鍛えずのんびりやってこうというもので、個人的にはかなり好感度高いです。
アイシールド21とか、たまに選手を潰しかねない露骨に危険な特訓を課したりしますからね。
僕も部活はダラダラやってた人なんで、この指導方針はすごく共感できます。


こんなわけで、登場人物達はどこまでもマイペースなんですが、ストーリーの方もかなりそういう感じです。
この作品は、コジローが剣道部を何とかして盛り上げようとするのが、ストーリー上の主軸になってるんですけど、その動機が、

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他の高校で顧問をやってる高校時代の先輩との賭けに勝って、寿司を奢ってもらう事だったり、

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とある理由(ちなみに、コジローの過失ではないです)で、どうしても剣道部を全国へ出場させて実績を作らないとクビになるからだったりと、いちいち即物的で素敵です。
即物的っていうのは結構大事な要素で、例えば世界を救う勇者に何故戦うのかを質問して、
「平和のために、滅私奉公しているのサ!」
という答えと、
「それはね、各国の王様から多額の報奨金と領地を貰ってるからなんだよ
という答えだったら、読者がより共感しやすいのはどちらかというと後者です。
人間っていうのは欲望を元に行動する生き物ですから、聖人君子みたいな人物より即物的な人間の方が身近に感じるわけですね。
作中で、

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例え不純でも、動機があるからこそ強くなれ、それが漠然としたものだからこそ自分は続かなかったというコジローの独白がありますしね。
きっと、

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寂海王が伝えたかったのも、そういう事なんですよ!


というわけで、目指せ全国というスポーツ漫画としてはステロタイプな展開の中に、部活は楽しむものという現実的なテーマが入る事で不思議な読後感を出してる作品です。
ガンガン系コミックスの中では、良作の部類だと思いますよ。

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by ejison2005 | 2007-01-12 19:50 | 漫画 | Comments(7)
Commented by 黒川 at 2007-01-12 22:44 x
すみません!私はSMAPと同世代なので、キムタクもファンだと言っている「六三四の剣」以外よく知りません(^_^A
「おれは鉄平」は古すぎて知らないし(--;
今思うと、「ヒカルの碁」のキャラ設定の一部(塔矢親子)は、この作品に通ずるものが有ります。
何つうか古い時代のサンデーの名作です。後半は武者修行編で、各地の古流剣術を照会して回るような展開になって、トーンダウンした様な機がしますが…それでも私が示現流を知った作品でも有りますねw
漫画喫茶か何かで見かけたら、良かったら読んでみてください。
あの頃のサンデーだと、B・B(石渡治著)の方がお勧めですがw
Commented by ぺんぼー at 2007-01-12 22:44 x
剣道漫画=六三四の剣

ですよ。
Commented by ぺんぼー at 2007-01-12 22:46 x
ぬふぅ
Commented by ejison2005 at 2007-01-14 00:41
>>黒川さん
ぐお、僕は逆に『六三四の剣』の剣が分からないです。
それにしても、剣道漫画って意外と少ないですよねえ。
剣客漫画なら、それなりに数がありますが。
機会があったら、読んでみますね。
Commented by ejison2005 at 2007-01-14 00:42
>>べんぼーさん
六三四の剣は、機会があったら読んでみようと思います。
でも、シグルイは剣道漫画では無い気がします。
Commented by マサムネ at 2007-04-23 01:38 x
「しっぷうどとう」という剣道漫画をご存知でしょうか?
スピリッツで連載されていた作品で、もう清々しい程に王道の青春スポーツ漫画です。
隠れた名作と言っても過言ではないので是非読んでみてください。
Commented by ejison2005 at 2007-04-25 02:23
>>マサムネさん
読んだ事はないんで、機会があったら読んでみますね。
読みたい漫画ばっかりたまっていく……男塾とかすごく読みたいけど時間をとれなくていまだに読んでないですし。