Y十M レビュー
本日ご紹介するY十Mは、バジリスクでおなじみせがわまさき先生&山田風太郎先生のコンビによる忍法帖シリーズの作品です。
ただ、作品としての趣は大分違っていまして、まず、Y十Mはバリバリの能力バトル漫画だったバジリスクとは違って、人間離れした超能力とかは登場しません。
もちろん、だからといって戦闘面がヘボくなってるわけではなく、敵として登場する『会津七本槍』は、

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それぞれの得意とする武器を極限まで鍛え上げた超人達です。
しかし、これがバジリスクと大きく違う部分なのですが、味方側は敵の会津七本槍に比べて極端に戦力が低いです。
というか、元がお侍の娘さんとか人妻とかその奉公人であり、

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全員女です。その戦闘力のショボさたるや、生半可なものではありません。
すったもんだの末に、主人公、

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柳生十兵衛がこの女性達を鍛え上げ、策を授け、見事仇討ちを成し遂げるお手伝いをするというのが基本ストーリーです。
ちなみに、十兵衛はどうも同じく山田風太郎作品である魔界転生の主人公を勤めた柳生十兵衛と同一人物で、このお話はその前日談でもあるらしく、伝説の勇者!
当然ながら超強く、ちょっと七本槍の強さを確認するために七本存在する槍のうち三人を相手に戦っても、普通に圧倒して悠々と撤退して来たほどです。
仮に仇討ちを挑む女の人達が全滅したとしても、その後には十兵衛が自分で討ち取りに来るのは必定なわけで、そういった意味では会津七本槍は既に詰みですね。

で、この漫画の見所は十兵衛単独なら割と楽勝な七本槍を、七人で挑んでも七本槍一人にさえ勝てないだろう仇討ち志願の女性達にも勝てるよう(もちろん体も鍛えさせてるけど)一生懸命に策を練って戦わせるところ。
例えば、これはちょっとネタバレになるんだけど、七本槍の中でも鎖鎌を得意とする敵を倒す際は、あらかじめ配置した巨大な桶に隠れたと思わせ実際は内部の仕掛けで脱出し、代わりに入れておいたこれまた巨大なザルで、桶の中に入っている(はずの)女性を狙って放った鎖鎌を絡め取り、武器が使用不能になったところを七人で滅多刺しにしたりします。
ここら辺のシーンは、せがわまさき先生の画力と相まって、迫力と内容の凝縮した素晴らしい殺陣となってますね。

そんなY十Mですが、今週(46話)の内容が面白かったのでちょっと紹介しておきましょう。
冒頭、現在は自分の領地に帰ろうとしている七本槍とその主人一行を追従している最中なのですが、女性達の一人が普通にこけて足を捻挫します。
僕らの感覚だと、その調子で君達は本当に仇を討てるのかね? と心配してしまうところですが、そこは流石に我らが十兵衛。
まあ、くじいちゃったもんはしょうがないよねという事で、足が悪化しないよう転んじゃった人をおぶって先へ進もうとします。
と、そこへ突然、

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このように、いきなり転んだ人を責め始める残りの女性陣。
これには十兵衛も呆気にとられ、
「いやいや、俺は女人の一人や二人くらい楽勝で背負えるし、楽しく行こうよ」
という意味の台詞を言うのですが、今度は、

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足を挫いちゃった人まで、こんな事を言い出す始末。
十兵衛が理由を問いただすと、

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いきなりのカミングアウトをしちゃいます。

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そして、かつてない程に面白い表情をする十兵衛。重ねて申し上げますが、彼は後に魔界転生を戦い抜いた英傑です。
ある意味今までに無い脅威を前に完全に取り乱し、
「…ここに(先行している)沢庵老師がおられたら……そのひがみ根性を叩き直してもらうところだ!」
と、思わず口走ってしまいます。
ああ、それは地雷だよ~と思ってたら、

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案の定、本当に沢庵老師の所へ向かっちゃう女性二人。

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そして、最後に残ってくれた女性に対し、非常に情けない顔でご機嫌伺いしちゃう十兵衛。

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が、アウトでした。
……。

おお、十兵衛よ! フラグを立て損なうとは情けない!

でもまあ、仕方が無いですよね。
今まで、忍法帖シリーズのノリでやって来たのに、いきなりハーレム物の主人公にされては、そりゃ困惑するというものです。

それにしても、恐るべきは山田風太郎先生ですよ。
今調べたところ、Y十Mの原作である柳生忍法帖を執筆したのは昭和中期みたいなんですが、その時点でハーレム要素や能力バトル要素を普通に打ち出していたわけですから。
鬼才という言葉は、この人みたいな人間に使うべきなんでしょうなあ。

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by ejison2005 | 2006-11-16 23:30 | 漫画