辺境の老騎士 感想
 作品ページ。

 艦これのイベント始まったくらいには読み終わってたのですが、ようやく感想。


 なろうなようでなろうじゃない少しなろうななろう小説

 僕なりに本作を一言で表すとすると、およそこのような感じになるでしょうか。

 まず、主人公がジジイで舞台がオリジナルのファンタジー世界という時点でなろうにおいて隆盛を誇るジャンルからはかなり離れてるんですよ。下手すると、ぼくのわたしの勇者学みたいな感じで奇をてらった出オチ系主人公による尻すぼみ話になりかねないレベル。

 実際、僕も読んでみるまではドン・キホーテ的な爺さん騎士の滑稽な冒険譚かと思ってましたしね。

 ところが、そうではなかった。実際に読んでみると、話の筋そのものは極めてなろう的なサクセスストーリーであった。

 まず最初こそ主人公は(ジジイだから当然だけど)肉体的にもガタがきていて、大して強くないんですよね。本人もそれを強く自覚してる描写が多々ある。

 ところが、前半部分で古代剣を入手してからは徐々に風向きが変わっていきます。いわゆるひとつの「チートを授かった主人公」状態です。

 それでも使い方が分からなかったこともあり、しばらくは剣のパワーで強くなったりならなかったりを繰り返すわけですが中盤以降は剣が持つパッシブ能力のおかげもあって大活躍ですね。俺Tueeeです。

 これをなろう主人公といわずして、なんというのか!

 そもそも、残りの寿命短い(と感じたから)色々あったし旅に出るっていうのも「新天地への旅・新しい人生の始まり」という意味合いではみんな大好き異世界転生型主人公と端を同じくしてますしね。

 これは何もケチつけようという意味ではなく、同じ「さらわれたNPCを敵施設から救出するシナリオ」でもアリアンロッドとダブルクロスでは全然違う内容になるのと同じということです。

 テクスチャはガラッと変えていても、根本たる屋台骨の部分が同じだからなろうを好きな人は問題なくハマれるし面白いと思える。
 また、テクスチャが大きく異なるので既存作品群に食傷気味な人でも新鮮な気持ちで面白く読むことができる。

 ま、鍋物やってる時にポン酢だけでなくごまダレも試すようなもんですね。食べ方を変えた同じ料理。

 作者さんがどの程度まで意識してやってるのかは分かりませんが、本作の面白さの一端はここら辺にあるのだろうと僕は思っています。


 「使いこなしている」世界観

 作品タイトル通り数多くの騎士が登場する本作なのですが、よくよく考えてみると本作における騎士は中世ヨーロッパ的なものではなくかなりの部分で「僕の考えたかっこいい騎士像」なんですよね。

 で、本作がすごいのは「僕の考えたかっこいい騎士像」を成立させるための入念かつ緻密な世界観の構築にあると思います。

 まず、この作品の世界って狭いんですよね。すごく小さい内陸部の話。ひょっとしたら四国くらいの大きさしかないかもしれない。中盤で海を知ってる人間が誰もいないと判明した辺りでは、びっくり仰天したものです。

 そういった地理的な面を初めとし、魔獣の出現地域、亜人の縄張り範囲、各国の歴史的背景……全てが有機的に作用して「僕の考えたかっこいい騎士像」を成立させている。これがすごい。

 設定が単に設定として存在するのではなく、ひとつ目的に向けてギミックとして作用している。
 しかも、それが最終盤では物語のクライマックスを彩る使い方をされるのですから、見事としかいいようがないでしょう。

 テクスチャであり、ギミックであり、最後にはカタルシスとしても昇華されている。

 設定を凝った作品は数多くあるでしょうが、設定をここまで使いこなしている作品というのはそうそう見られるものではないと思います。


 まとめ

 そんなわけで端的にまとめると、なろうで流行しているジャンルと大筋を同じくしながらそれを彩るテクスチャによる違いと、その使いこなして圧倒的な個性を確立している作品であると思います。

 作者さんの新作も程よい長さで一端完結されたようですので、これもいずれ読まねばなるまいよ。

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by ejison2005 | 2015-06-09 05:29 | ノベル | Comments(2)
Commented by 多鎖 at 2015-06-13 12:41 x
>作者の新作
あの作品老騎士の人だったのか…後で読もう。

ちなみに、先日から「死神を食べた少女」の作者さんが新作を投稿し始めてるのでそれを読んでます。
あの人の作品、同一世界観で各作品のアレなヒロインがやりたい放題するのが好きです…ダークファンタジー戦記ですけど。
Commented by ejison2005 at 2015-06-14 08:11
>>多鎖さん
その死神を食べた少女をそもそも知らんのですが、老騎士の人の新作読んだ後で挑戦してみますかね。
ニートだけど~も賢者の弟子~もちょっとオレ的に不発でしたし。