一航戦、出ます! 感想

艦隊これくしょん ‐艦これ‐ 一航戦、出ます! (角川スニーカー文庫)

鷹見 一幸 / KADOKAWA/角川書店


 さて、本作の感想を端的に述べるなら、こういうことになるでしょうか。

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 もうね、なんなんだろうね。艦これのノベライズはファントムルージュしなきゃいけない決まりでもあるのだろうか?
 買ってある以上、読まないのもアレなんだが瑞鶴主役のやつは大丈夫なのかなあ……?

 ちょっと話が逸れましたが、とにかく、この作品を支配してるのは圧倒的な「無」です。「『何も無い』が、そこにある」という田舎暮らしの宣伝文句みたいな作風です。

 その原因は明らかで、登場人物が誰一人として精神的成長をしていないのですね。
 もちろん、オリ設定等でキャラクターをsageまくり、その上でプラマイゼロに戻すことで成長を演出するなどは論外ではありますが、だからといって、ここまで精神の動きがまったくのゼロだと、それはそれで困る。何しろ、物語であるというのに何も「物語って」いないのだから。

 例えば、冒頭部の彩雲入手エピソードなどは分りやすい例で、この作品のように「艦隊の索敵能力が低くて困ってる → 開発で彩雲きましたわーいわーい」では話になってないのです。
 それをやりたいというのなら、「索敵能力が低いことの問題を知らない艦娘が、その重要性に気づき成長する話」としなければならないのです。
 そこで問題となるのがキャラsage問題なわけですが、赤城さんなどは史実が史実なので、そこを絡めることでどうとでもできるでしょう。というか、やらないなら艦これ小説の意味ないじゃん。


 また、本作はなかなかのタイトル詐欺っぷりを発揮しており、表紙と合わせて一航戦コンビが主役と見せかけ、実質の主人公はオリキャラである提督となっているわけですが……。

 際立って無能というキャラクターではないのですが、だからといって特段、有能に感じられるわけでもなく、性格設定も「提督」というより「そこらの学生」という感じであり、「悪い意味で無個性なラノベ男主人公」そのもの、といった感じです。
 やたら大量に登場させ描写が薄い艦娘の代わりに、結構な尺を使ってじっくりねっぷりと描写されるオリキャラ提督の心理描写には、DSのトレーニングソフトで培った速読技術を駆使するのもやむなし、といったところでしょうか。
 一点、思わず笑っちゃったのが最終盤における『一人でもいい、帰って来てくれ……』という脳内台詞で、このようなことを考えるのは「犠牲覚悟で夜戦に踏み切った場合」であり、「敵の作戦がある種のハッタリであると判断し夜戦を決意した」今回のシチュエーションにはそぐわないでしょう。この場合、脳裏に思い描くべきは自分の判断が間違っていたのか否か、です。
 Hey! 提督ぅ! わずか5ページ前の心理描写くらい頼むからきちんと踏襲させてほしいネー!

 あと、金剛ちゃんはんなデスデス言わねえし島風の一人称も「私」だよん、と。


 設定関連ですが、これまた薄っぺらい代物でして、「自分で認めるくらい経験の足りない提督を補佐してやる人間は誰もつけないの?」とか、「そもそも提督はどのような組織に所属していて誰から命令を受けてるの?」とか、「命令を受けてるからには各種任務のGOサイン出すのって上層部であって提督じゃなくね?」とか、一見しただけでも思い浮かぶ疑問の数々に何らのアンサーも出されていません。下手すっと、考えてすらいなさそうなレベル。
 つっこみ所のなさが面白さにつながるわけでもありませんが、少なくとも、こんなパッと見で思い浮かぶくらいのことには先回りして答えを用意すべきなんじゃねーかなーと思わされます。


 軍事描写ですが……艦娘が曳航してこれるレベル(まさか数百個引きづってるわけでもあるまい)のドラム缶で補給が足りる陸軍は化け物か!? とか、わたし、しろうとだけど、ひがえりきぶんでいってこられるほどサーモン(ソロモン)かいってちかくないとおもう(小並感)とか。
 日帰りで行けるほど近いなら議論の余地なく殲滅の一手であるし、そうでないなら描写外で舞空術でも使ったのであろう。サラマンダーより、ずっとはやい!!


 そんなわけでまとめると、心が折れるかと思いました。

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by ejison2005 | 2014-03-15 18:11 | ノベル