おおかみこどもの雨と雪 感想
 見てきたよー。ネタバレ注意。


 ストレスフリーかつバリアフリーなファンタジー

 この映画を見てまずいえるのは「ストレスフリーかつバリアフリーで楽しい気持ちに浸れる映画」である、というところでしょうか。少なくとも、上映時間中退屈に感じるような場面はなかった。

 これはなんといっても監督の作り出す映像が優れているのが大きくて、写実的な中にもしっかり萌えのエッセンスを落としこんだキャラクター、現実そのものかと見まがうかのように見事な背景美術、若干主張しすぎに感じる場面もあるものの全般的にしっかりマッチングしたBGM、これら全てが混然となって実に居心地の良いSこしF思議なファンタジー世界を作り上げている。

 登場人物の皆さんが基本(あくまで基本でアレな人もいたけど)、善性に満ちているのも大きく作用していて、これは他のアニメ感想でも似たようなこと書いた覚えがあるけど、イイ人達がイイ目に遭うのを見ているのはなかなかどうして気分の良いものです。だってイイ人達だから。

 幸せママンの奮闘記として終始気持ち良い世界に浸ることのできる映画に仕上がっていたんじゃないでしょうか。


 根本的な解決にはなりませんよね?

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 その上で言いましょう。だからどうした? と。

 うん、あのね。この映画は確かに上記の長所があるわけだけど、それを成立させるために犠牲にしてることがいかんせん多すぎる。

 具体的に述べてしまうと、トーチャンの死因や主の仕事に代表される謎、雨の一人立ちに代表される倫理的問題、すごく真相に気付きそうな爺さんの消滅に代表される都合が悪くなるとフェードアウトする主人公一家にとっての障害、これらがマイムマイムしちゃってるせいで「やりたいことは分かるんだがいまいち成功していない」状態になってしまっているのですよ。

 どれもこれも究極的には主人公一家……つーかママンが対峙して何らかの折り合いを付けるなり乗り越えるなりしなければならない問題のはずで、それを取り除いた結果、ドラマとして成立しなくなってしまっている。何故なら、ドラマというのは人が問題を乗り越える過程にこそ発生するものなのだから、
 確かに、神の見え見えな手でママンの道程からあらゆる障害を取り除いたためにストレスフリーにもバリアフリーにもなっているわけですが、そんな量産型ハーレム萌えアニメの如き人造エデンを見せつけるため作った映画だったのでしょうか。これは。


 総合

 そんなわけでダラーッと楽しむことは出来たものの、諸々の問題点からテーマを伝えることに成功しているとはとてもいえず、再度見たいとは思えない映画でした。

 好意的に見ればラストに伝えたかったことは「親がなくとも子は育つ」的なサムシングだと思うんだけどね。それをやるのならば、親パートをざっくり省いてむしろ子供が主役的立ち位置につかねばならない。何せ本編の映像内だと、肝心の「親がいないところで子が(狐先生との交流などで)育つ」シーンがキング・クリムゾンされてますから。

 ついでに述べておくと、劇中で描いた筋書きをやるだけならそもそも狼人間設定も田舎への引っ越しもいらなく思えます。普通に団地で人間の子育てに苦労すればよいし、「親元に置いておきたい母から独立する息子」をやりたいなら、もうちょっと先の年齢までやって住み込みの料理人でも目指させればよい。

 うん、やっぱりお話の練りが甘いよなあ。かなり残念だ。

 それにしても、トーチャンはなんで死んだんでしょうね?
 状況から考えて、

1.滑って転んで頭を打って死んだ。

2.何らかの病気だった。

3.某ミスターファイヤーヘッドが如く鳥と戦って完敗を喫した。

4.最後の人狼として闇の組織に目を付けられ母子の存在がバレないよう立ち向かうも殺害された。

 わざわざ家の前まで来といて荷物と財布のみを残し姿を消す……などという不可解な行動に及んでいることから考えて、4が濃厚でしょうか。

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by ejison2005 | 2012-08-03 03:32 | アニメ