ゴーカイジャー ゴセイジャー スーパー戦隊199ヒーロー大決戦 レビュー
 日本に古くから根付く先輩後輩の上下関係というのはまことに厄介なもので、お互いに気が合い尊重し合える存在ならば良いのですが、仮に先輩が見習う価値ゼロの人間でも後輩はその意見を聞かなければならないし、顔を立ててやらなければなりません。

 現在絶賛公開中の映画「ゴーカイジャー ゴセイジャー スーパー戦隊199ヒーロー大決戦」はまさに、そういった後輩の悲哀が赤裸々に描かれた作品であるといえるでしょう。


 もうここまで書いた時点で、このブログに来てくれてるような大きなお友達諸君は大体察してくれたと思いますが、そうです。あいつらまたやりました。
 ゴセイジャーと言えば去年一年かけて放送され、シリーズの存続を本気でファンから危ぶまれたスーパー戦隊界の面汚し。本作においても、ダメヒーローっぷりをいかんなく発揮します。

 まず、冒頭のレジェンド大戦からして凄い。他のスーパー戦隊が終結するまでの間、先んじてザンギャックと戦っていたのが彼らなのですが、ロボは倒されるわ自分達は雑魚兵士達に囲まれて情けなく一本の木に身を寄せ合って震えあがっているわで、番組終了から4カ月経っても全く成長していない姿をこれでもかというくらいに見せつけてくれます。おそらく、先輩戦士達が助けに来てくれていなければ、そのまま討ち死にしていたことでしょう。

 そんな彼らがレジェンド大戦から数年後、地球にやって来た35番目のスーパー戦隊「海賊戦隊ゴーカイジャー」からレンジャーキーをかすめ取り、再び地球の守護者として返り咲こうとするのが、本作における大まかなストーリーです。
 そうやって力を取り戻してからの過程もぶっ飛んでおり、放送中のTV本編で語られてる通り、「宇宙最大のお宝」を手に入れるための重要な指標であるレンジャーキーを渡すわけにはいかないと語る海賊ゴーカイレッドに対し、天使ゴセイレッドは「話せば分かり合えると思っていたのに!」などと言いながらいきなり襲いかかるのです。おい! 逆! 逆!

 その後も、ゴセイジャーが情けなく普通に倒され変身解除していた目の前でゴーカイジャーは一般人を庇ってその身を盾にしていたり、ゴーカイジャー側から「レンジャーキーを巡って争い合うなどいけません」と諭されたり、完全に先輩後輩天使海賊の立場が逆転しているシーンが多発します。その様は最早、東映による公式天使イジメ!

 それでもなお、本作が輝きを保っているのは、ひとえにゴーカイジャーがすごくイイ奴らだったからでしょう。
 基本的に彼らは、厄介な先輩からいきなり因縁をつけて絡まれるという恐ろしく面倒くさい状況に立たされているわけですが、そんな中でもくさることなく、この映画に登場する「敵」との戦いにまい進します。
 また、先程にも述べた通り、ゴーカイジャーは話し合いを優先させようとしたり、一般人を助けようとしたりと、いわゆる「正義の味方」的な行動を率先してとっていくため、問答無用で自分達の力だけ取り戻そうとするゴセイジャーを見て発生する嫌悪感を、大幅に緩和してくれるのです。
 そんな彼らを見て、ゴセイジャーもやがて心を動かされ共闘体制をとっていくわけですが、その際、「俺達が勘違いしていたようだ」と、あくまで上から目線なのもポイント。まったくもって厄介な先輩もいたもので、直近の年に放送されていた先輩戦隊という、本来なら最も心を許せるはずの存在がこんな奴らだったゴーカイジャーの苦労が忍ばれます。せめて来年の後輩達は、まともな人材が来てくれるといいね。


 そんな風に、とてつもなく自虐的というか斜め上の方向でのオマージュが目立つ本作ですが、戦闘シーンの出来は非常に素晴らしく、それだけで足を運ぶ価値があります。

 まず、ボリュームが凄い! 本作は上映時間のうち、なんと7~8割近くを戦闘シーンに割いており、とにかく終始戦いまくっています。
 ゴーカイジャーは残念ながらストーリーの都合上、最大の特徴である豪快チェンジをほとんど行わないのですが、それは逆にいえば、シンプルな銃&剣もしくはその交換による2刀流or2丁拳銃によるアクションを目一杯に楽しめるということであり、スーツアクターさん達が35年の歴史をかけて培ってきた殺陣技術を心ゆくまで堪能することができるでしょう。
 ゴセイジャーも番組が終わって販促する必要がなくなったからか、カードアクションの一部を遠慮なくカットしており、放送時に散々言われいていたアクションテンポの悪さという弱点を克服しています。
 超重いゴセイブラックの斧など、番組放送時にもほとんど取りざたしていなかったネタも入ったりしており、それらを見てニヤリとするのもまた一興。つまんねーつまんねーと言いながら一年我慢してきた我々の苦労が、ほんのちょっとだけ報われる瞬間です。

 何より凄いのは、クライマックスにおける全戦隊の飛行メカ&ロボが揃っての戦闘シーンで、ライブラリ映像を駆使した必殺技の乱れ打ちはド迫力のひと言! 予算が足りなかったのか、CGで合成して参加してる連中が大勢いるための緊急措置的な演出だと思われるのですが、ただでさえ動きが鈍重になりがちなロボが33機に飛行メカ2機が加わっての殺陣など、どだい不可能なことですので、この選択は大正解だったと言えるでしょう。
 何より、ひとつひとつが番組の見せ場として用意された必殺技シーンが一度にたらふく拝める映画など、本作を置いて他にありません!

 ちなみに、ライブラリ映像は先輩戦隊達が戦うシーンでも駆使されており、そちらも映像密度こそ巨大ロボ戦時に比べて劣るものの、確かな吸引力でもって戦闘シーンを彩ってくれています。

 ひとつ残念だったのは、先輩戦隊達の活躍が、とある事情によってゴーカイジャー&ゴセイジャーと対決するシーンに集約しており、結局、35のスーパー戦隊が肩を並べて悪と戦うシーンは一切存在しなかったことでしょう。
 これはおそらく、ゴーカイジャーの番組ラスト付近にこそ、その大ネタを持ってきたかったという事情によるものだと思われますが、それを少なからず期待していた身としては、少々物足りない印象を覚えます。

 とはいえ、デンジブルー、デカピンク、リュウレンジャーの三人が揃う同窓会チックなシーンなどはクロスオーバーここに極まりといった風情があり、今後のゲスト展開にも大きな期待を抱かせてくれました。ところで寿司屋、お前は髪をおろすな分かりづらいw


 そんなわけで本作は、色んな意味でファンの期待に応えつつ、高密度かつボリューム満点の戦闘シーンが楽しめるシリーズの節目に相応しい大作となっています。
 レンジャーキーはどのような経緯で宇宙に流出したのか? レジェンドはどうすれば力を取り戻せるか? など、今後のゴーカイジャー本編にも多少関わりそうなネタもありますので、ファンなら是非チェックを!

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by ejison2005 | 2011-06-17 23:22 | アニメ