よるくも レビュー

よるくも 1 (IKKI COMIX)

漆原 ミチ / 小学館


 月刊IKKIで好評連載中の「よるくも」は、凄腕のイケメン殺し屋が飯屋の看板娘とデートしたり、美味しい卵かけご飯の食べ方をレクチャーされたりする漫画です。


 ぶっちゃけ話は評価する段階にない

 えー、このような書き方をしたのもですね、実は現在刊行されている第1巻時点までは、ほとんどお話が進展していないからだったりします。というか、作品全体としての目的が見えない。ボスキャラっぽい人がこれから何かやるぞー! というところまでしか進んでない。
 この第1巻に収録されているのは第7話までなんだけど、月刊誌で7か月かけてそこまでしか進展していないのだから、そのスロースターターっぷりは推して知るべし! です。

 さて、ここで皆さん、疑問に思ったかもしれませんが、通常、僕はそういった類の作品はけなす傾向にあります。にも関わらず、何故、今回この作品をレビューしようと思ったのかというと、そんな欠点を吹き飛ばすくらい優れた点が存在するからなのです。


 世界観一本釣り

この[世界]には、上・中・下、がある。
富めるものの住む[街]。
貧しいものの住む[畑]。
その下に、深く、暗い[森]――。


 これはIKKI公式サイトからの引用で、この字面だけだと何かおファンタジーな世界を舞台にした物語みたいになってしまいますが、

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 要するに、キッチリ仕分けされた階級社会を舞台にした作品です。

 で、このうち第1巻で登場するのは畑と森なんだけど、街並みの描写が素晴らしい!

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 無秩序に人が集まり生活する都市特有の、わいざつな活気が高い画力でもって、しかし淡々と描かれています。

 九龍城と聞いたらそれだけでドキドキしちゃう人は多いと思うんだけど、こういったスラム街っていうのは独特のロマンがありますよね。ファンタジーRPGなどにおいて、拠点のひとつに用意されることが多いのもうなずけるというもので、いつ命を落とすか分からない硬派な空気、ただそこで過ごすだけで事件が巻き起こる非日常感、社会的最下層に位置しながらもバイタリティに溢れた住民達、雑多に積み重ねられたはずが不思議な調和を生み出している建物群などなど、およそ男の子の求める全てがそこに合わさっています。

 それを独自のセンスで構築し、描いているというだけで、ここまで面白い読み物になるのかと衝撃を受けることは受け合いです!


 ある種の世相反映も

 さて、ここからはややうがった見解となりますが、最初に説明した通り、本作の世界観は居住地区毎に統制された階級社会となっています。
 キャラの名前に日本語が使われているからかもしれませんが、何というか、これ、かなり人ごとではないんですよね。
 現実の日本だって、もちろんここまで酷くはないけど、かなりの階級社会となりつつあります。特に僕ら若年層はそれをひしひしと感じていて、その理由を今さら論ずる必要もないでしょう。
 別に作者もそれを意図して描いてるわけじゃないだろうけど、こういった世相のもとで、ヒエラルキーの差を如実に描いた作品が出てきているのを考えると、なかなか深読みしたくなるものがありますね。


 まとめ

 そんなわけで「よるくも」は、物語としては遅々とした歩みながらも、魅力的な世界を体験でき、何なら社会風刺だって感じ取ることのできる意欲作です。

 スカッとしたいわけではない、かといって陰惨に過ぎる作品が読みたいわけでもない、退廃的なエネルギーを感じ取りたい方にオススメ!

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by ejison2005 | 2011-03-23 04:10 | 漫画 | Comments(2)
Commented by ポルカ at 2011-03-24 10:40 x
メインストリートの背景は大友克洋を彷彿とさせますね。
うん、なんかこの記事だけではこの程度の感想しか出てきません。
階級社会にもピンと来ませんし。
多分、無意識に目を逸らしてるんでしょうね。考えるのが怖いから……。
Commented by ejison2005 at 2011-03-27 02:34
>>ポルカさん
まあ、本文内で述べたとおり、話の進みは遅いですから。あんまり語ること現時点ではない。