ゴールデンタイム レビュー

ゴールデンタイム〈1〉春にしてブラックアウト (電撃文庫)

竹宮 ゆゆこ / アスキーメディアワークス


 とらドラ!でおなじみ、竹宮ゆゆこ先生の新作に挑戦してみました。アニメは見てたけど、この人の作品読むのは初めてだよん。


 で、最初に結論から述べてしまうと、正直にいって、この第1巻の範囲においては、あんまり面白くないなーというのが感想です。
 これは僕が幼い頃から努力友情勝利の洗礼を受けてきた生粋のジャンプっ子だから(※)、超能力とかバトルとかが含まれない純然たるラブコメに対し拒否反応を示してしまうというのもあると思うんだけど、しかし、それ以外にもつまらないと感じた要因はいくつかあるので、そこら辺を重点的に書いていこうと思います。


 まず、文章的な問題。これが大きい。
 一人称やら三人称やらが純情ブレパレード状態だからなのか、はたまた、他の要因があってなのかは知らないけど、とにかく、ひたすら読みづらい文章が続いて頭痛が痛かったです。
 活字媒体における文章ってのは、漫画における絵柄みたいなもんなわけで、そこが自分に合わなかったら、やっぱり良い印象抱けないよね、ていう感じ。


 そして、もうひとつ大きいのが、要素を絞り切れていない点。
 最初に「超能力とかバトルとかが含まれない純然たるラブコメ」と書いといてなんなのですが、実はこの作品、物語開始と同時に詳細不明の事故によって主人公の霊魂と肉体が分離してしまっているんですよね。で、肉体は記憶喪失の別人格となって行動し、記憶をがっちり保有している霊魂の方はそれにくっ付いて回っていると(肉体の方は霊魂を認識できない)。
 しかしながら、そんな特殊な設定を用意しておきつつも、やっていることは「超能力とかバトルとかが含まれない純然たるラブコメ」に過ぎないわけです。正確にいえば、最後の方でようやくそのギミックを活かしたイベントが起こりますが、それすらも、通常の記憶喪失で問題なく展開できる範疇のもの。
 少なくとも、この第1巻においては肉体(記憶無し)と霊魂(記憶有り)との分離なんていう、微妙に状況説明しづらい設定を活用できてるとは言い難いわけです。
 既にシリーズ化が決定している作品の第1巻なんだから要素全てを使う必要はない、という見方もあるのでしょうが、僕はむしろ、シリーズものの第1巻であるからこそ、全ての要素を活用して作品全体の方向性を見せて欲しいと思ってしまうのです。例えるなら、現状この作品は「第1話でバスケと出会わずに喧嘩ばかり行うスラムダンク」みたいな状態なのですから。


 そして第三の問題点として、第1巻における最大のスペクタクルシーンは新興宗教の洗脳合宿から主人公とヒロインが逃亡を図るシーンなのですが、そんなのが最大の見せ場でいいのか、という点。
 確かに、大学一年生が直面する危機としては生々しいものがありますし、そういう意味では非常にリアルなのですが、だからといって、別に読んでいる人間の夢が掻き立てられたりはしません。
 これはラノベに限ったことではありませんが、主人公が陥る危機的状況というのは、「確かにピンチではあるけど、受け手が『自分もそういった状況に陥ってみたい』と願うような状況」であることが望ましいと、僕は思います。例えば、日本一発行部数の多い漫画を読んだ小さなお友達が、「僕も大きくなったら海賊になるー!」って言うような、ね。
 有名イラストレーターによる華やかな表紙を用意し、題名をゴールデンタイムと銘打って、最大の見せ場がこれでは、ちょっと詐欺的な気分を味わってしまうのです。

 ついでに述べておくと、このイベントによって進展しているのは「ヒロインが主人公の秘密を知る」くらいのもの(それもあっさりバレてあっさり流されて終わる)で、多角的恋愛関係の処理にも、主人公の置かれた特殊な状態の是正にも、これといって貢献していないのが気になります。
 これでは、本流から分岐したサイドイベントに過ぎないわけで、もうちょっと他の重要な事柄も同時に巻きこめなかったのかと、思えてなりません。
 

 そんなわけで、総括してしまうと、文章は読みづらく、用意した要素は第1巻内で使いきれておらず、作品として盛り上がりを期待したい部分では微妙に盛り上がりきれない作品、というのが僕の受けた印象でした。
 ちょっとオススメは出来かねます。


 ※但し小学生時代はボンボン派だった。

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by ejison2005 | 2010-09-17 21:28 | ノベル