小悪魔ストライカーズ! レビュー

パラサイトブラッド・ノベル 小悪魔ストライカーズ!(1) (富士見ドラゴン・ブック)

片山 泰宏 / 富士見書房


 読んだ! 読んだともさ!
 というわけで、折角だからレビューを。


 さて、以前に剣をつぐものレビューでも書いたことですが、TRPG原作のラノベというものは、基本的に平凡な小説となっていく宿命にあります。何故なら、多くのTRPGは「ごく普通のヒロイック・ファンタジー」や「ごく普通の現代異能バトル」を演じるために調整されたシステムだからです。
 そりゃ、やろうと思えば「高レベルの冒険者が命をかけて覗きを敢行する話」とかも作れるでしょうが、TRPGのノベル化というものは、原作となったシステムを小説という形で紹介したり、それを通じて新しい客層に興味を持ってもらったりするために行うものなので、やる意味はまったくないわけです。どうあがいても、何かひとつの方向へとんがった作品は作れない。そういった定めにある。
 そんなわけで、TRPG原作のラノベに求める面白さというものは必然、王道ド直球的な、ベッタベタな面白さということになるわけであり、突飛なアイデアとかでカバーできない分、それはむしろ、普通に一からラノベを書くより遥かに難しい仕事と化すわけで、作者の力量が試される分野であるといえるかも知れません。
 では、グループSNEの新鋭たる片山先生はその難事業を見事にやりおおせたのかといえば……これはちょっと、微妙といわざるを得ないかもしれません。

 まず第一に、そして最大の問題点ですが、キャラクターが弱い。
 それはヒロインがツンデレに服を着せたようなキャラであるとか、ツッコミとして(悪魔憑きとはいえ)主人公のドテッ腹をぶッ刺すのは恐怖を感じるとか、ラスボスが厨二病の権化みたいだとか、中ボスの名前がださ恥ずかしいとか、そういう問題ではなく、どのキャラクターに対しても、主人公の関わりが薄いというところに起因している気がします。
 初対面でそのまま最終決戦に至るラスボスとか、同じチームに所属するモブキャラといった様相を呈しているサブヒロインズとか、酷い目に遭ったのにその後音沙汰なしな幼馴染みに関してはいわずもがなですが、では何故、それなりの紙幅を費やして主人公とのイベントを行っているメインヒロインにまでそう思ってしまうのかというと、単に関わっているページ数と時間が多いというだけで、主人公の彼女に対するスタンスが変化を見せていないんですよね。
 恋を抱くのでも、同じ組織に所属する悪魔憑きとしてライバル心を燃やすのでも、別になんでも構わなくはあるのですが、ともかく、物語の最初と最後においては、彼女との人間関係を変化させて欲しかった。
 およそ物語ってのは主人公の置かれた(恋愛とか金銭とかライバルとの戦いとかの)状況が変化していく様を語っていくものなわけで、彼女とのイベントに少なくない紙数を割くのであれば、彼女との関係性の変化を語らねば片手落ちとなってしまうのです。
 とある事情により彼女サイドからの好感度は物語スタート時からマックス状態なわけで、「見くびられていた主人公がそれを覆す」という展開にもなってないし、この心情変化の無さは全体的な構成で見ても、キャラクターを推していかねばならないライトノベル全体の市場状況から見ても、下策であったといえるでしょう。

 第二に、物語全体から鑑みて、あまりにも起伏が少ない。どんでん返しが存在しない。
 悪役は悪役として普通に悪事を企み、主人公達は正義の味方としてそれを一生懸命に阻止しようとするだけでは、ちょっとサプライズが少なすぎる。
 結果としてどれだけの行数を費やそうとも、「特殊な力に目覚めた主人公が悪人をやっつけたぞ!」という一文で済んでしまうお話にしかなっていないわけで、これは王道を貫いているというよりも、驚きのある展開を盛り込めていないと、そう評するべきでしょう。

 では、逆にこの作品はどんなことに成功しているのかといえば、それは主人公の初心者悪魔憑きとしての描写、でしょうか。
 本作はかなり終盤まで、主人公が悪魔寄生体を入れてるだけのほぼ常人として進んでいくわけですが(それも盛り上がりの無さに拍車をかけてる気がする)、それだけのことはあり、悪魔憑きとなったばかりの人間がどういう風に日常生活を送っていくのか、それまでの人間時代とはどんなところが違うのかを、かなり詳細に書いています。
 小説としての面白さというよりも、実際のプレイングにおける参考例としての面白さといった側面が強いですが、これは確かにTRPG原作ラノベとして意味と意義のあることですし、本作に商業価値を与えているといえるでしょう。


 そんなわけで、TRPG原作ラノベの性質上、パンチ力に欠ける点は致し方ないとしても、それを補うだけのテクニックも、まだ感じられない作品です。
 まだ続巻は刊行していく予定のようですし、難点として感じた部分でも、とりわけキャラクターの面は強化していって欲しいところでしょうか。僕達みたいなTRPG好きな層だけではなく、それ以外の層に関しても強烈な吸引力を発揮するような、そんな作品になっていってくれるといいナ!

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by ejison2005 | 2010-09-04 01:48 | ノベル