ばらかもん レビュー
 都会の喧騒から遠く離れた地で、豊かな自然に囲まれた暮らしを送る……田舎での生活というものは、とかく浪漫をくすぐられるものです。
 今日はそんな、田舎でのスローライフを題材とした漫画、

ばらかもん 1 (ガンガンコミックスONLINE)

ヨシノ サツキ / スクウェア・エニックス


 「ばらかもん」のレビューをお送りしましょう。
 ちなみに、こちらのページで1話は試し読みできます。


 あらすじ

 金も地位も才能も持ったイケメン主人公が、父に命じられた離島暮らしを通じ、己の心に足りない何かへ気づいていくお話。

 と、まあ、要するに、壁にぶち当たっている最中の主人公が、己の心を解放してくれる存在との出会いを通じて精神的に前進し、暗礁を乗り越えていくという、王道的なストーリーです。既存の作品で言うならば、のだめカンタービレとかと同じタイプの漫画。
 とはいえ、ありがちだと言いたいわけではなく、むしろ、第1話の、ヒロインと共に(挑戦する前から登れないと決めつけていた)防波堤へと登り、

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 素晴らしい夕日を見つめるシーンなど、主人公が精神的に成長し、一段大きくなる様を視覚的にも物語的にも分かりやすく表現する手腕などから分かる通り、類型的なお話を、しかし、高いレベルでまとめ上げた作品です。


 リアリティ満載なスローライフ

 とはいえ、いくら高いレベルでまとめ上げているといっても、それだけでは漫画としての個性が乏しくなってしまうわけですが、この作品は、「ド田舎」という物語の舞台について、極めて現実性の高い、緻密な描写を行うことによって、独自性を獲得するに至っています。

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 例えば、競争相手の不在により低下するサービス、

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 例えば、島民みな家族とでも言わんばかりの超絶アットホームさ、

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 例えば、海に行くのに水着ではなく体操服を選ぶ現実性の高さ……、

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 ちくしょおおおおおおおおおおっ!

 冗談はさて置き、単行本のオマケなどによると、作者のシノサツキ先生がリアルにこういう環境で育ったらしく、素晴らしく重厚で現実味の溢れた「日本最西端でのスローライフ」描写が楽しめます。
 が、よそ者への廃絶など、実際にありそうでも読者の気分を確実に悪くするような部分は描かないでいてくれてるため、我々が田舎暮らしという言葉に対して抱いている幻想は、決して傷つけないでいてくれているのもナイス。
 つまり、極めてリアルでありながら、しかし、現実では決してあり得ない、理想郷としての田舎暮らしを描き抜くことに成功しているわけです。

 近年では、「彼氏不在の美少女達が織りなす日常コメディ」などのような、現実に通じる面を残しながらも、実際には存在しないユートピアを描いた作品がいくつもヒットしていますが、この漫画もある意味、そういった時代の流れに乗った作品であるのかもしれませんね。


 まとめ

 総括すると、他者との触れ合いを経ての成長劇という王道ストーリーに、極めて緻密な田舎の描写、そして、最近の流行であるユートピア性をも兼ね備えた、非常にレベルの高い漫画です。
 お茶請けに漬け物を用意してから読め!

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by ejison2005 | 2010-05-13 05:39 | 漫画