男子高校生の日常 レビュー
 日常系漫画というものがあります。
 現実でありそうな、しかし、我々の汚れきった心では到底なしえない、労りに満ちた素敵空間を生きるキャラクター達の、何気ない日常を切り取って見せるという類の漫画群です。
 この種の漫画の特徴として、主要キャラの多くが萌えキャラである、というのが挙げられますが、恐らくは、「到達出来そうで決して出来ない世界」であることを、更に強調する効果を見込んでのことなのでしょう。現実に存在するせちがらい要素が排された素敵空間を生きるべきは、穢れを知らぬ無垢なる乙女達なのです。

 しかし! 今! その定石に真っ向から立ち向かう勇者が現れた!

 それこそが、本日ご紹介させて頂く、

男子高校生の日常 1 (ガンガンコミックスONLINE)

山内 泰延 / スクウェア・エニックス


 「男子高校生の日常」です。ちなみに、こちらのページで1話と2話は試し読みできます。



 嫌な予感しかしない

 さて、最初にご説明した通り、日常系漫画というのは、日常を切り取ることを謳いながらも、その実、実社会では決して有り得ないユートピアを描くことを目的としたコンテンツであり、登場人物の多くを美少女が占めるのも、その理想性を高めるためです。

 ところがどっこい、本作は看板に偽り無しというべきか、タイトル通りに男子高校生を主要登場人物に据えてしまった。これが何を意味するか……説明するまでもないでしょう。いいかお前ら、男子高校生なんて生き物は、生産性ゼロのとりとめもないバカな考えと、下ネタしか頭の中に存在しない生き物なんだぞ! そいつらが日常系漫画の看板なんぞ背負った日には何が起こるか、俺は……考えたくもないね。



 結果

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 ご覧の有様だよ!



 真逆のベクトルへフルスロットル

 えー、本作は確かに「到達出来そうで決して出来ない世界」を描いています。うむ! その点では確かに日常系漫画だと言えるぜ! 但し、この表現にはちと語弊があるな……これは、「到達出来そうで決して出来ない世界」じゃあ断じてねえ! 「到達出来るけど決して到達しない世界」だぜ!

 そんなわけで本作は、「穢れを知らない登場人物が織りなす素敵な日常生活」という、本来、このジャンルに属する漫画が踏襲するべきプロットから全く逆の方向へ全力疾走し、「脳味噌のリミッターをぶっち切った男子高校生が織りなす最低な日常生活」を完璧に描き抜いた、ひでえなんてもんじゃねえ漫画です。何故こんなことになってしまったんだ!



 これもひとつの理想

 しかしながら、本作を読み終えた後、あなたはきっと気がつくのです。「確かに最低だけど……これもひとつの理想郷なんじゃないか?」と。

 思えば……我々は日常生活の中において、どれだけ自分を抑え込んでいるのでしょうか? 本当はもっとバカやって、下ネタとか披露したりして、自由奔放に生きていたいんじゃないのでしょうか?

 そういった、我々が決して踏み込めない領域へ、この漫画の登場人物は容易く踏み込み、それを日常として生きていきます。確かに華は無いでしょう! 華が無いにも程があるでしょう!
 しかし、彼らが生きる日常もまた確かに我々が心へ抱くべきアヴァロンであり、彼らのバカやったりする姿は、滅菌消毒されたかのような穢れなき世界を生きる美少女達の姿同様、我々に明日を生きる活力を与えてくれるのです。

 そんなこんなで、あらゆる意味で最低だけど、でも元気を与えてくれる漫画です。ちょっと疲れた時に是非!

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by ejison2005 | 2010-05-02 05:39 | 漫画 | Comments(2)
Commented by 河童 at 2010-05-02 08:38 x
僕もこれは読みました。
ただ、感想としてはちょっと微妙というところで…
なんだろう、リアルを追求しすぎたせいか作者さんの力不足なのか、キャラが薄いと感じたんですね。現実の高校生なんてそんあにキャラが立ってないといわれればそれまでなんですが。
あ、4話はおもしろかったです
Commented by ejison2005 at 2010-05-05 05:47
>>河童さん
急ごう、風が止む前に……。