剣をつぐもの レビュー

ソード・ワールド2.0 剣をつぐもの1 (富士見ファンタジア文庫)

北沢 慶 / 富士見書房


ソード・ワールド2.0 剣をつぐもの2 (富士見ファンタジア文庫)

北沢 慶 / 富士見書房


ソード・ワールド2.0 剣をつぐもの3 (富士見ファンタジア文庫)

北沢 慶 / 富士見書房


ソード・ワールド2.0 剣をつぐもの4 (富士見ファンタジア文庫)

北沢 慶 / 富士見書房




 完結したことだし、折角だからレビューを。

 まあ、最初にひと言でこの作品を表すのなら「ごく普通のヒロイック・ファンタジー」といったところでしょうか。残念ながら、良くも悪くも平凡なファンタジー小説。今時のラノベ読者層を引きつけるであろう、キャッチーな要素は何一つとして存在しない。「ドラゴンボールを三つくらいまで集めたと思ったら、残りはラスボスが集めていてくれたぜ!」という、どうにも打ち切りライクな展開からも、人気が出なかったのであろうことは想像に難くない。

 しかしながら、これは作者である北沢先生の責任ではない、ということは書いておきたい。大体、原作であり、日本一有名なTRPGシステムであるところのソード・ワールドは、僕たちが「ごく普通のヒロイック・ファンタジー」を演じるために調整されたシステムなのだから、その世界観を基に小説書いたって、そりゃ平凡な小説にしかなりませんよ。ええ。
 いやまあ、中には魔法戦士リウイなんていう例外もあるんだけどね。あれとこの作品とでは、抱えている事情が異なる。それは土台の上に積み重ねている作品と、土台を作り上げるために生み出された作品との違い。

 良く訓練された冒険の書読者である諸君ならば当然ご存じだと思われるが、この作品はソード・ワールド2.0最初のノベライズである。その宿命として、新しい世界、新しい設定群を紹介するような内容であることが望まれているのだ。ロードス島戦記から連綿と受け継がれてきた歴史の集大成(や、クリスタアの方が時系列は後だけど)として書かれているリウイとは、全く立場が異なっているのは、説明するまでもない。

 と、なれば、北沢先生の仕事は膨大だ。
・既存のアレクラスト大陸とは異なる新しい世界観について描写せねばならない
・旧版に比べ非常に重要な存在となっている魔剣について描写せねばならない
・タビット、ルーンフォーク、ナイトメアなどの、新しい種族も過不足なく活躍させねばならない。だがリルドラケンとドワーフ(女)、てめーらは駄目だ
・敵役にはもちろん、世界共通の強大な敵として設定した蛮族を起用し、彼らの価値観などについて描写せねばならない
 パッと箇条書きにしただけでも、これだけの要素(制限とも言う)をぶち込んだ上で、ひとつの作品として仕上げねばならないのだ。他人の黒歴史ノートを基に一作立ち上げるようなもんである。

 そんなチェスや将棋で言うところのチェックメイトにハマッた中、北沢先生は本当に頑張った。「ごく普通のヒロイック・ファンタジー」と最初に言ったが、それは逆説的に捉えれば、きっちりと王道的な展開へ仕上げているということ。それゆえのありきたりさもあるが、白いご飯はいつ食べても一定の満足感を得られるものである。
 その上で、箇条書きにした各要素をきっちりと昇華して見せ、のみならず、(ちょっとネタバレになるけど)ラストでは、今後ソードワールド2.0のサプリメントとして展開していくのであろう、非常に魅力的な新しい冒険の舞台を用意していくれているのだ。これを偉業と言わずして、何を偉業と呼ぼうか!
 そう、言うなれば、

 このライトノベルはえらい!

 のである。

 単純な小説として仕上げるのではなく、様々な要素を複合せねばならない条件下の中、見事に己の仕事を全うした北沢先生。そんな彼の力作を、皆さんも是非、お楽しみください。































 少しでも売り上げが上がれば、サプリメントとかリプレイの展開も増えていくだろうし。
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by ejison2005 | 2010-03-25 16:57 | ノベル | Comments(2)
Commented by ELN at 2010-03-30 00:41 x
ヒロイック的だと思ったのはマージナル・ライダー3巻の方だったおいら。
Commented by ejison2005 at 2010-03-30 17:19
>>ELNさん
ナハト派の僕にとって、3巻は最高のご褒美です。